UNLOXCYT (cosibelimab-ipdl)が皮膚扁平上皮癌の新規治療薬としてFDAに承認された
2024年12月13日UNLOXCYT (cosibelimab-ipdl)が皮膚扁平上皮癌の新規治療薬としてFDAに承認されました。
皮膚扁平上皮癌について
皮膚扁平上皮癌(cutaneous squamous cell carcinoma; CSCC)は、表皮を構成するケラチノサイト由来の悪性腫瘍です。非メラノーマ性皮膚癌の中で2番目に多く、世界中で増加傾向です。日光・紫外線曝露によるDNA損傷の蓄積が主な原因と考えられています。CSCCが局所にとどまる場合は外科的切除や放射線療法が治療の中心ですが、転移例や手術適応とならない局所進行例では、治療選択肢が限られていました。
腫瘍細胞では、programmed cell death-ligand 1 (PD-L1)遺伝子の発現が上昇していることが多いことが分かっています。PD-L1は、免疫細胞表面に発現しているprogrammed cell death receptor-1(PD-1)やB7.1と結合することで免疫細胞の活性を抑制することで、腫瘍細胞が免疫監視機構から逃れ、浸潤・転移が促進される要因の一つとなります。
UNLOXCYTとは
UNLOXCYT(一般名:cosibelimab)は、Checkpoint Therapeutics社から販売されている抗PD-L1抗体です。転移性または局所進行性で、手術や放射線療法が適応とならない成人の皮膚扁平上皮癌が適応です。
免疫チェックポイント阻害薬として広く利用されているPD-1阻害薬は、T細胞上のPD-1に結合して、PD-1とPD-L1の相互作用を阻害することで免疫応答を回復させますが、UNLOXCYTはPD-L1に結合するため、より特異的に腫瘍細胞の免疫抑制を解除できる可能性があります。また、PD-L2との相互作用は阻害しないため、PD-1阻害薬で問題になっている免疫関連有害事象のリスクが低い可能性が指摘されています。
PD-L1を標的とする抗体薬は他にもTECENTRIQ (atezolizumab, Roche/中外)、IMFINZI (durvalumab, Astrazeneca)、BAVENCIO (avelumab, Merck)があります。
作用機序
UNLOXCYTは、腫瘍細胞に発現しているPD-L1に特異的に結合し、免疫細胞上のPD-1やB7.1との結合を阻害します。その結果、腫瘍細胞に対する免疫応答が回復し、腫瘍細胞の増殖抑制や破壊が期待できます。
また、UNLOXCYTは、Fc領域を有するヒトIgG1モノクローナル抗体であるため、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性および補体依存性細胞傷害(CDC)活性を介して腫瘍細胞を直接的に攻撃する効果も期待されています。この機序はTECENTRIQ、IMFINZI、BAVENCIO とは異なるUNLOXCYT独自の特徴になります。
臨床試験
UNLOXCYTの有効性および安全性は、転移性または手術適応とならない局所進行性皮膚扁平上皮癌患者を対象としたPhase 1の多施設共同、非盲検、単群試験(CK-301-101試験, NCT03212404)で評価されました。この試験では、800mgのUNLOXCYTを2週間ごとに静脈内投与され、主要評価項目である独立中央判定委員会(ICR)による奏効率(ORR)が評価されました。
UNLOXCYTを投与された患者(78例)におけるORRは47.4%(95%CI: 36.0-59.1%)でした。また、奏効持続期間(DOR)の中央値は未到達(効果が持続している患者が多かったため)で、6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月での奏効維持率はそれぞれ88.9%、73.0%、73.0%でした。
特記すべきことに、ORRはPD-L1が陽性のがん患者で45.9%、PD-L1陰性のがん患者で44.4%であり、UNLOXCYTが腫瘍におけるPD-L1の発現有無を問わず有効である可能性が示されました。
安全性・副作用
CK-301-101試験では、UNLOXCYT投与に関連する有害事象は、ほとんどが軽度から中等度であり、管理可能なものでした。主なTEAEとして、疲労、発疹、貧血などが報告されています。Grade 3以上のTEAEは10.3%であり、重篤な有害事象は3.8%でした。
免疫チェックポイント阻害薬で問題となる免疫関連有害事象(irAE)は23.1%の患者に認められました。Grade 3のirAEは2.6%に認められましたが、Grade 4または5のirAEは認められませんでした。UNLOXCYT投与中止に至ったTEAEは11.5%であり、うち治療関連のものは2例(2.6%)でした。これらの結果は、UNLOXCYTが既存のPD-1阻害薬と比較して、免疫関連有害事象のリスクが低い可能性を示唆しています。
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