イーライリリー(Eli Lilly)2024年第3四半期の財務とパイプライン概要

はじめに

イーライリリー(Eli Lilly)は、心血管、腫瘍、免疫、神経科学分野で革新的な治療薬を提供するバイオ医薬品企業です。本記事では、2024年第3四半期の財務実績とパイプラインの進捗を解説し、今後の成長見通しについての洞察を提供します。今回の報告では、新製品および主要治療分野における売上高に焦点を当て、同社の成長をけん引する要素を明らかにします。

財務概要

2024年第3四半期、イーライリリーは堅調な成長を見せました。

  • 総収益:114億4,000万ドル(前年同期比+20%)

  • 純利益(GAAPベース):9億7,000万ドル(前年同期は-5,740万ドル)

  • 1株当たり利益 (EPS):調整後希薄化EPSは1.18ドル(前年同期は0.10ドル)

  • 2024年度ガイダンス:総収益は454億ドル~460億ドル、非GAAPベースのEPSは13.02ドル~13.52ドル

セグメント別売上

  1. 心血管(Cardiometabolic Health)

    • Mounjaro®:31億1,300万ドル(前年同期比+120%)、需要と供給の拡大により、U.S.での売上が急増。

    • Trulicity®:13億1,400万ドル(前年同期比-22%)、市場の競争激化が影響。

    • Zepbound™:12億5,780万ドル、新たな肥満治療薬として急速に市場に浸透 。

  2. 腫瘍(Oncology)

    • Verzenio®:13億6,900万ドル(+32%)、乳がん適応症での使用拡大により成長。

    • Cyramza®:2億3,600万ドル、増加する治療需要が収益を支えています。

    • Tyvyt®:1億5,020万ドル、中国市場における好調な需要が貢献 。

  3. 免疫(Immunology)

    • Taltz®(乾癬治療薬):8億7,960万ドル(+18%)、国際市場での販売増が収益を押し上げ。

    • Olumiant®(関節リウマチ治療薬):2億5,080万ドル(+8%)、COVID-19適応症終了の影響にもかかわらず、基礎疾患向けで成長 。

  4. 神経科学(Neuroscience)

    • Emgality®:2億290万ドル(+20%)、片頭痛治療薬としての需要が堅調に増加。

    • Zyprexa®:オランザピン製品ポートフォリオの権利売却による売上減少 。

パイプラインの進捗

  1. 肥満および糖尿病治療薬

    • Tirzepatide(Mounjaro®、Zepbound®):SURMOUNT-1試験にて、176週間で糖尿病進行リスクを94%低減する結果を得る 。

    • Ebglyss™:米国で中等度から重度のアトピー性皮膚炎に対してFDA承認を取得 。

  2. アルツハイマー病

    • Donanemab:新しい投与方法でアミロイドプラーク減少とARIA-Eの発症率14%を実現 。

    • Kisunla™:早期アルツハイマー症状患者向けに日本および英国で承認を取得 。

  3. 腫瘍治療薬

    • Imlunestrant(口腔SERD):乳がん患者を対象としたフェーズ3試験で有望な結果を得る 。

    • Lebrikizumab:アトピー性皮膚炎の長期拡張試験で、80%以上の持続的な疾患管理効果を確認 。

  4. 新規製品と事業展開

    • Morphic Therapeutic社買収:自己免疫治療の開発拡充 。

業績と展望

イーライリリーは、心血管、腫瘍、免疫分野での堅実な成長を背景に、2024年通年の収益ガイダンスを上方修正しています。特にMounjaro®およびZepbound®の急成長が収益を押し上げ、EPSのガイダンスを12.05ドル~12.55ドルに設定しています。また、研究開発費の13%増加は、早期および後期のパイプラインに対する継続的な投資を反映しています 。

結論と今後の展望

2024年第3四半期において、イーライリリーは新製品の力強い成長と持続的なパイプライン開発により、堅実な業績を示しました。糖尿病治療薬のTirzepatideやアルツハイマー治療薬Donanemabの進展が特に注目され、さらなる収益拡大が期待されています。同社は今後も新薬の開発を通じて、長期的な株主価値の向上を目指しています。

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