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『残心残暑』 blow

『残心残暑』を語るnote
第8回は『blow』です。日々ROCKがもうすぐ始まるという少しの焦りを抱えながらnoteを書いています。なんでこんなにROCK前に書き終えたいかというと、新しい思い出の色がついてしまう前の新鮮さを残したいから。またROCKを過ごしたら多分、きっと変わってしまう想いもあるから。

前回の『いつ逢えたら』についての記事はこちら↓


もし読んでくれる方がいたのなら、
・楽曲考察初心者🔰
・音楽知識ほぼなし
・感情と勢い論
・個人見解
っていうことをまず念頭に置いてぜひ読み進めてください。

『残心残暑』

「確信的じゃないけどじわじわ効くボディブロー」って何かのインタビューでaikoが話していたけど、確かに最初はそんなことないくせに終わる頃にふと気づくと「あれ、痛い…」みたいな感覚になる。最後の「大好きだった」の歌い方が溢れんばかりのあたしの感情すぎて無理だし、ラストの「離れ離れになるのだから」のフレーズで完全K.O。静かにぶっ倒れる私。終了のゴングが鳴る。
『鮮やかな街』から一本の糸のような繋がりで聴く『いつ逢えたら』からの『blow』。最初はアップテンポの曲くるか??ってなるんだけど、ピアノのアウトロからあの静かに湿度のあるイントロが始まる流れが癖になってくる。

『blow』

今回の初聴きメモはこちら。

そうなんだよね〜。歌詞に「犬」とか「声が聞きたい」とかaikoらしいワードが散りばめられていて、どこか昔のaikoのサウンドのようにも聴こえる。そう感じるのはやっぱり島やんが編曲を担当しているってこともあるのかもしれない。すごく程よい湿度で、好き。
どこか聴き覚えのあるメロディだったりすることもあるのかも。


愛おしい目線を通した犬

このイントロのドラムが入るあの瞬間とっても好き。あたしがふと気づいて想いを歌い出す感ある。

できれば夢の中でももっと仲良くしたいよ
だけど向き合った後悪戯にそっぽ向く犬

「夢」っていうワードについて『残心残暑』シリーズのいつかのnoteでちょっと書いていると思うけれど、今回も「夢」が歌詞に出てきた。
あたしが犬になったり、あなたを犬に例えたりするaiko。
『犬になる』の間奏の部分にはこんなセリフが挟まっている

「犬が好きかわいくなりたいから
撫でられたいから
愛しいからもっと見て欲しいから」

このblowではあなたを愛おしく想うからこそあなたが犬って表現になったのかな。え、だとしたらそのポイントが結構効いてくる。あたしめっちゃあなたを好きじゃん。なのに別れるみたいな。えぐい。
そんな思いから夢の中にもあなたが出てきて(この時はおそらく犬の姿のあなた?それか例えているだけかわからないけど)、あたしはあなたの目をしっかり見ようとするけどあなたはちょっとイタズラにハニカミながらそっぽを向いてしまう。なんかここは切ないんだか幸せなんだかだよね。


煙と想い出を吸い込む

あなたの煙草を
盗んで吸ったら嫌な癖だけ体に蘇る
千切れた約束は息と共に消えた

なんかここなーんにも関係ないんだけど『セシルの週末』思い出した。煙草ってワードからなのかもしれないけど、ちょっと背伸びしたあたしっぽいところも。
私は煙草を吸わないから解像度鬼低いとは思いつつ、煙草を普通に吸った時、あなたの煙草を吸っていた時のことをふわっと煙と一緒に思い出してその煙が体を満たすようにあの頃の嫌な癖が綺麗に蘇って、煙に満たされて苦しいのか思い出に苦しくなってるのか分からず、眉にギュッと力を入れてその苦しさを逃すように煙を息と一緒に吐き出す。みたいな情景思い浮かんだ。
「千切れた約束」って…このワードだけで苦しすぎる。”破れた”約束とかよりも”千切れた”の方が痛いよね。なんかね。一心同体って感じがするよねその約束。叶わなかった約束、悲しいというより痛かった。


Baby Peenats大学 恋愛学部 aiko専攻

運命がどうあろうとも何度も声が聞きたい
あなたもあたしも違うでも今すぐ声が聞きたい

ここの「あなたもあたしも違う」がaiko表現だよね…aikoにずっと昔からそう教わって生きてきた私たち既に単位取れてるよね。

この「声が聞きたい」が繰り返されるのもいいよね。2回繰り返すフレーズって言うのはポイントですからね(aikoの歌詞読解テストに出ます)
運命がどうであれ何度も声が聞きたい
あなたとあたしは違うけれど今すぐ声が聞きたい
というか、「聞きたい」なんだってちょっと思った、、「聴きたい」ってaikoなら表現しそうなのに。これ意図的なのかな。きっと何か意味を持たせてるんだとは思うけど。「聴く」の方が耳を傾けて理解しようとするって意味合いが強そう。

あたしの中には常にあなたがずっといて、現実であなたと話していなくても逢っていなくても、いつもあたしの心の支えになっている。だから、あなたがどう思っていようと、あなたと一緒になれない今だとしても、あたしの中にあなたが息づいている。


“会いたい”とは

眠れないまま朝が来る
夜明けの色を少し見上げて
あなたに会いたいと想った
何時に出ようか早めにしようか

aikoって「あなたに出逢う」とか「逢いたい」って表現するけど、この『blow』ではあえて”会う”って表現してるんだよね…あらためてカラオケで歌いながら歌詞見て「あれ、逢うじゃないんだ…?」って最初は誤植か?って疑ったんだけど歌詞カードをよく見直してみて意図したものだと気づいた。

会う一般的に広く使われる
逢う「思いがけず出逢う」「大切な人に逢う」
         
など愛おしい気持ちや運命を感じるとき
         
に使われる

なんとなく調べなくても相手を愛おしむ気持ちを感じていたけど、やっぱりこう言う違いがあるってことaikoは意識して書いているんだなってことが改めてわかった。あぁ、じゃあ一個前の「聞きたい」もやっぱり意図的なのかも…

ということはさ、ということはだよ、、、
このフレーズの「あなたに会いたいと想った」って、もうあたしの中にはあなたを愛おしむ気持ちはほぼなくなっているってことじゃん。でも会いたいって想うってことは、お別れを切り出そうとしているって言う背景がはっきりと見えてくる。なんというか、ブローが効いてきたな…普通に痛いわ。だから、あたしは眠れない夜を越した朝にいるんだね…
この時あたしはどんな心だったんだろう。胸の中の波は落ち着いていたのかな?でもあなたを好きって気持ちはまだあるように思えてたんだけどな…
愛おしむ気持ちがなくなったというより愛おしまないように自分を抑え込んでるってイメージ。だからより痛い。みぞおちに来る。

「何時にしようか早めにしようか」っていうフレーズ、恥ずかしながら最初は結構単純に「あぁ、あなたと早く逢いたいってことなんだな〜かわよ〜」って思ってたんだけど、”会いたい”の解釈でこんなにガラッと変わってしまうものなんだな…と驚いた。


いつの時代も変わらないスタンス

結構ずっしりとくるボディブローを頂いてからの2番をちょっと背中を曲げながら迎える

好きが始まる瞬間の心の物語は永遠だけど寂しい
なんとなく理由もわかってる

ここのフレーズが超絶好きなんだよね…「好きが始まる瞬間の物語」って、ホントそうだよね(なにが)
だしいつも永遠や絶対はないって言うaikoが「永遠だけど寂しい」って歌ってることが重くのしかかってくる。
好きになった瞬間はこの気持ちは永遠!って思っちゃうよね。わかる…。そしてそんな気持ちを持ちながらも「でもいつかは…」って心のどこかでは思ってしまうから「寂しい」って言葉が普通に続いてしまう…。
さらに、その「寂しい」って思ってしまう理由も「なんとなく」って言ってるけどかなり十分わかってるはず。ちょっと「なんとなく」なんて言って気持ちを誤魔化してるだけなように思える。
aikoは、この”幸せだけどだからこその不安”の表現がとっっても輝いている。


生まれ変わっても

blow…(名詞)殴打、一撃、殴り合い、ダメージ、  
                 不意の攻撃
          (動詞)吹く、パンクする、激怒する、急い
      で立ち去る、台無しにする、花が咲
      く

ほう…どこかノスタルジックか湿度の高い落ち着いたソングかと思いきや、もしかしたらタイトル物騒かも。
aikoも「「ボディブロー」のblowです」って言ってたけど、なんか思ってたよりも攻撃力高かった。でもそのほかの意味も結構あって「台無しにする」とか結構しっくりきた(しっくりとは)

遠回しな言葉はblow 重く心がふらつく
あなたが犬になっても見つけられる
自信はあるのに

あなたに遠回しに言われた言葉がボディブローのように効いてずっと心に重く残る。ここは「不意の攻撃」って意味っぽい。

このあたしは多分まだあなたのこと好きだよね。ちゃんとかは分からないけど。だって
「あなたが犬になっても見つけられる自信はあるのに」ってすごいプロポーズじゃん??あなたが生まれ変わっても、あなたとあたしの来世でも見つける自信があるんだよ。
aikoが「犬」って言う歌詞を書くとすごく愛が伝わるよね。さっきも書いたけど。
この「あるのに」の後に歌詞では言わない言葉がが絶対あるって思ってるんだけど、まだ分からない。


スカートは気合いの表れ

名残惜しいなラストスカート
なんとなく準備をする
記憶にも残らない恋だったよと
笑って言いたい程に辛い

「ラストスカート」って単語、初めて聴いたのにとても意味がわかるの不思議。
『skirt』では「もう二度と履きません」と決別の意味だったスカート。aikoが何かのインタビューで「普段はジーンズとかパンツスタイルが多いいんですけど、スカートは気合を入れる時に履く」って話してた記憶があるんだけど、このラストスカートはそんな意味合いに思える。
絶対これを履いてこうって感じではないけど、なんとなく、あなたと会うって思うとスカートを手に取ってしまう。少しの気合が必要だから。これからあなたに会って言わなきゃいけないことはそのくらいあたしにとっては重い。
名残惜しいって思わないようにするには気合いが必要。

って、あたし全然あなたのこと大好きじゃん…好きなのに別れなきゃいけない二人って感じする…。ただ、あなたの方はあたしのことをそんなに想ってくれてなさそう。きたきたきたボディブロー。あたしがあなたをすごく好きって言うのはここのフレーズにも表れていて
「記憶にも残らない恋だったよと笑って言いたい程に辛い」って、そのぐらいできたらどんなに楽かって考えてることの裏返しだからね…
「記憶にも残らない恋」ってさ、結構無理あるよね…ほんとめっちゃ好きじゃん…しかも「笑って言いたい」って…苦しい…刺さって痛すぎる。
ここはいつも心臓がギュッてなってしまう。


あたしの覚悟のすべて

ここのメロディさ、どこかで聴いたことあるな〜って思って考えてたけど『夏恋のライフ』だよね。今回の「思い出す」のメロディラインが、夏恋のライフの「起こされて」と似てるんだ。
似てるし、しかもこの『blow』のあたし『夏恋のライフ』のあたしと似てるなあって個人的には思う。メロディもだけど歌詞も曲の雰囲気もうまくリンクしている。

匂いが混ざり思い出す
時が重なって離れないキスは
特別だった
大好きだった
離れ離れになるのだから

ここの攻撃力半端ないですよね。K.O間近です。
匂いが混ざって思い出す感覚めーーーーっちゃわかりすぎるから苦しいここ。秋の風が吹くと匂いと共に思い出すことめちゃくちゃある。

ここの「特別だった 大好きだった」の気持ちの吐露、今までそんなに感情の揺れが歌に表れてなかったからこそ、ここで一気に映える。
初めて聴いた時「カァーーー!」ってなったよね…。全てがここに詰まってるしこの想いを抱えながら今まで静かに押さえ込んで歌ってたのね?辛かったね??って気持ちになる。
全てはここじゃん。「大好きだった」これじゃんあたしの気持ち。やっぱ好きだったよね…でもここ過去形なのが最高に切なくて抉られる。内側からブローきた。「特別、大好き」だったのに「特別だった、大好きだった」って過去形になるのが辛い。過去形になるっていうか、過去形にしなきゃいけなかったっていうか、それがあたしの覚悟っていうか…

最後の「離れ離れになるのだから」ってここでK.Oです。静かにリングに崩れ落ちます。
なんか、あたしとあなたの”離れ離れになること”を言い渡してる感がしんどいよね。
「なるのだから」って言い回しもすごくキューッとなってしまう。どこか他人行儀でもありつつ、あたしの気持ちを示すにはとてもニュアンスが生まれていると思う。
文末の「のだから」について調べていたところ面白い文献があったので引用しながら書いていきたい。

「のだから」は「のだ」といういわゆる説明のモダリティ形式に「から」が続くかたちであるが、「から」とはかなり異なる特徴を持つ。

方言文法研究会編(2007),前田

「説明のモダリティ形式」とは

モダリティとは「肯定と否定の間の意味領域」を指すことぱ。たとえば「そうである」「そうでない」という2つの断定の間にある、「そうに違いない」「そうだろう」「そうかもしれない」 などの表現を、広くモダリティ表現と呼ぶ。

名古屋芸術大学研究紀要第 33 巻(2012),早川

ほう…わかるような分からないような。(なんか卒論思い出してきた、、)
さらに2007年の方の文献では「最も重要である」特徴を

もっとも重要な特徴は、単に事実を描写するだけの文では用いられない点である。

方言文法研究会編(2007),前田

と述べている。ということは「のだから」には単なる事実の描写ではなく話し手の気持ち、意思、願望が表れているということになる。

さらに「のだから」にはさまざまな用法がある。
・確かな事実と当然の結果
「これだけ頑張ったのだから、勝てるはずだ」
・聞き手に対する行為や認識要求
「若いのだから、くよくよするな」
・倒置
「心配するよ、親なのだから」
・終助詞的用法
「彼と絶対結婚するのだから」

今回は最後の「終助詞的用法」の「のだから」なんじゃないかなと思う。

この場合、普通ではない特別な事態に対する、話し手の評価や強い決意を開き手に訴えたり、話し手自身が改めてそうした事態を認識した場合に用いる。

方言文法研究会編(2007),前田

今回はその中でも、「強い決意」なんだと思う。あたしの覚悟が”のだから”に表れたんだ…だからよりグッとくる。
これはあたしの覚悟の歌。そして決別の歌。あなたに会って話をつけた後、あたしめっちゃ泣くのかな。泣くよねひとりで。でも未練って感じにはならなそう。なんか私的にめっちゃ綺麗なんだよね、このあたしのあなたへの気持ちが。『skirt』とかも決別未練ソングだと思ってるけど、それよりもすごく洗練された想いっていうか、そんな気がしてる。勝手な想像だけどね。

おわり

『blow』初めに聴いた時よりも確実にこの曲で傷を負っています。まじでボディブローのように効きまくる。すごい切ないんだけど、でもすごく洗練されてる感じがして。「逢いたい」じゃなくて意図的に「会いたい」って表現してることに気づいてからグーーーっとそっちの方向に考察できたの個人的にとても気持ちよかった。

個人的に『blow』を歌う時必ず最後にはこの感情の吐露が待ってるんだぞってちょっと身を引き締めちゃう。

aikoらしいワードでつくられた『blow』は、湿度と懐かしさを感じる攻撃力鬼の化け物ソングでした(褒めてる)

読んでくださった方いましたらぜひあなたの『blow』について聴かせてください🤝🏻
ありがとうございました!
次回は『願い事日記』です

引用文献

前田直子(2007) 方言文法研究会編『全国方言文法辞典《原因・理由表現編》』科学研究費補助金研究成果報告書

早川知江(2012) 名古屋芸術大学研究紀要 第33巻 285 〜 301頁



読んでくれてありがとうございました💐💙

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