選手名鑑の役割 Footballがライフワーク Vol.21
ポストプレーで足首を利した柔らかいボールタッチを見せたかと思えば、並走するディフェンダーの股を抜くヒールショット。かくも多彩なテクニックを兼ね備えていたとは。ラ・リーガでは開幕4試合で5得点、チャンピオンズリーグでもハットトリックの滑り出し。安定した得点量産はそのままに、周囲との相乗効果か以前より技巧的になったような印象さえ与えているのが、バルセロナに新加入したロベルト・レバンドフスキだ。
ワールドカップの中断を挟む異例のシーズンは、まるでヨーロッパ各国リーグとJリーグのカレンダーが逆転したかのようだが、レバンドフスキのほかにも移籍した選手たちの活躍が目を引く。ドルトムントからマンチェスター・シティへステップアップしたアーリング・ハーランドは早々と二桁得点を叩き出し、そのシティから揃ってアーセナルへ新天地を求めたガブリエル・ジェズスとオレクサンドル・ジンチェンコは、前所属以上に攻撃的なタスクを与えられたことで輝きを放っている。カリドゥ・クリバリのみならず、ドリース・メルテンスにロレンツォ・インシーニェと攻守の軸を一挙に失ったクラブのダメージは甚大かと思いきや、セリエAで首位に立つナポリには恐れ入る。3季ぶりのチャンピオンズリーグでもマッチデイ1のリバプール戦に快勝、後方からピッチの幅をとりながら手数をかけずに組み立て、相手指揮官ユルゲン・クロップの代名詞たるゲーゲンプレスを攻略するとは、ローマ時代のゼロトップで名高いルチアーノ・スパレッティの策士ぶりを再認識した。
新シーズンのスタートからひと月あまり経ったというのに、今年は手元が寂しいままだ。移籍市場がクローズすれば条件反射的に欲しくなるのが選手名鑑で、Numberプラスも発行されてきたが、個人的には毎年、「ワールドサッカーダイジェスト」が編集する「ヨーロッパサッカートゥデイ」を買い求めている。見やすいうえに読み応えがあり、主要トップリーグの全クラブを網羅した選手個々の寸評など、フットボールの知識と愛情を総動員したようなスタッフの皆さんの仕事量には頭が下がる。ネットで検索しても発売日がわからず、チャンピオンズリーグ開幕前に出ないことは無いと決め込み途中下車して書店へ足を伸ばした火曜日の帰り道、折からの激しい通り雨に遭ったというのに、目当ては見つけられなかった。
まさか発行休止という名の廃刊か、出版不況の波もここまできたのか。悪い予感が頭をもたげたころ、ようやく週明けに発売との情報を知り、胸をなでおろした。私にとって、「ヨーロッパサッカートゥデイ」は単なる読みものではなく、日程を眺めては計画を立て、わずかな余白に試合内容やトピックを記録するためには不可欠の観戦アイテムなのだ。ペーパーレスが言われる時代にあっても、じっくりと繰り返し読み、自在に書き込む愉しみを保証してくれるのだから、紙媒体たる選手名鑑は手放せない。