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不変の価値 第3のリベロ Vol.4

10代の頃まで、自腹で食べられるお店のなかで一番美味しいと思っていたのは、モスバーガーだった。紙で完全に包まれていないバーガーはパティの温度もバンズの柔らかさも保たれ、厚みのあるフライドポテトはホクホク。ファストフード店も数あれど、作り置きしない品質は他と一線を画し、たまの利用は当時にしてみれば贅沢だった。

近年は、好みの歌もめっきり乏しくなった。自室にテレビが無く、夜な夜なラジオに聴き入った時代のようにヒットチャートに馴染めなくなったが、この春はいつになく複数の曲に惹かれた。「桜が降る夜は」、あいみょんの新曲は今回もいい。そこはかとなく、Aメロは宇多田ヒカルの「Automatic」、サビはいきものがかりの「うるわしきひと」を思わせるが、途中リズムが変調しながら切ないイメージは損なわれず、春の変わりやすい天候まで表現しているかのようだ。同時期、そのあいみょんが憧れの存在と公言するスピッツの「紫の夜を越えて」が公開された。静かで美しいイントロは短く、草野マサムネの澄んだ声が耳に飛び込んできた瞬間、初めて聴くのに懐かしいと感じた。メジャーデビュー30周年という歳月を重ねてなお、声を張り上げずに高音で歌い上げる魅力は色褪せない。

「親戚の法事か!」「これいま、夢見てるんですか?」陣内智則やケンドーコバヤシが、番組の醍醐味を的確に表していた。開始30年記念の生放送、中継先で先っちょマンなどの歴代キャラに扮した間寛平の意味不明、丸々と太ったジミー大西の支離滅裂は、雛壇のクロちゃんを霞ませるほど。全国区の売れっ子芸人が一堂に会して昼間の関西ローカルを賑やかす様は、さながら世界のトッププレイヤーが生まれ故郷に帰り、裸足でストリートサッカーに興じているようだった。店主明石家さんまが届ける笑いの定食屋・「明石家電視台」を数年ぶりに視聴したおかげで、面白いかどうかはさておき、とにかく心が和んだ。意味とか内容とか、ふだん私たちが求めがちなことが、大した問題ではないとさえ思えた。

久々のモス店内。ミートソースと玉ねぎの重曹、厚切りトマト、昔からの定番メニューが気になりつつ、中途半端なヘルシー志向が頭をもたげ、野菜と穀物を主原料にしたグリーンバーガーを注文した。歳相応に腹のみならず舌も肥えたはずが、いま食べてもやっぱり美味しい。四十路も目前に迫ると、少年の頃から変わらない価値に、どこか希望に近いものを見い出すようになると実感している。


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