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絵になる街 第3のリベロ Vol.48

青空のもと、憧れの街を散策した。今月の半ば、代休をもらった木曜日だった。西宮の市内には、「七園」と称される街がある。関西では「住みたい街」の代表格・西宮北口の周辺にある甲風園、阪神タイガースの本拠地・甲子園もその一つで、阪急の夙川駅から甲陽線に乗り換えれば二駅とも「七園」の一角なのだが、その日の行き先は手前の方だった。

「ココ」では、揚がりたてのエビカツなど3種類のサンドウィッチを頬張った。窓際の座席は陽だまりのような暖かさで、一段と美味しくなる。直進すれば、「タオカコーヒー」に行き着く。クリスマスカラーのドリップのお供には、すぐそばの「ラ・フィーユ」でダックワースやパウンドケーキを選んだ。

樋之池公園を横切れば別の通りが見えてきて、「ラ・バゲット・ド・パリ・ヨシカワ」へ引き込まれた。格調の高い雰囲気もそのはず、店主はパンの世界大会で受賞歴を持つのだとか。対岸には「いちかわ」があり、さっき求めたばかりのお菓子を買い足す。スイーツやパンの激戦区とは聞いていたが、実際に歩けば密集率の高さに驚かされる。

鮮やかな銀杏並木を通り過ぎると、右手にまた別の通りが伸びている。越木岩筋にもいろんなお店が軒を連ね、「ペリゴール」でトマトソースパスタを注文。かけそば一杯で済ませることも多い仕事の昼休みとはうってかわり、食欲が尽きない。あの日に歩いた範囲だけでも、1冊のガイドブックが出来上がるのではないか。

遠くに目をやれば甲山が紅葉に色づいて、マンションやスーパーさえも眩しく見える。何気ない風景が絵になる街では、川べりでキャンバスに筆を走らせる人も溶け込んでいた。本が読めなくなり、ドラマも映画も録り溜めたまま。日常を楽しむ余裕が失われた苦い1年の終わりに、訪れることができてよかった。苦楽園、何よりその名が素晴らしい。

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