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祭りのあと Footballがライフワーク Vol.25

新年、101回目の高校選手権は、岡山学芸館高校が制した。岡山県勢として初優勝。最大の山場は、ボルシアMG入りする福田師王やセレッソ大阪入りする大迫塁を擁した神村学園との準決勝だったかもしれない。先制後に一時逆転され、再び逆転したのち、三度同点に。スコアは3-3、PK戦での決着。思い起こしたのは、昨年末の激闘だ。

いくつものメディアや数多のコメンテーターによってもう十全に語り尽くされたとは思うが、PK戦の果てにアルゼンチンが頂点に立ったカタールワールドカップの決勝は、珠玉の熱戦となった。リオネル・メッシは悲願を叶え、すでに燦然と輝いているキャリアに華を添えた。心疾患のため現役を終えた親友、セルヒオ・アグエロに肩車されて黄金のトロフィーを掲げた姿は、映画さながら。母国では「冷たいハートの持ち主」とも揶揄された苦い過去を払拭したメッシと、その仲間たちによる美しい大団円だった。

コスタリカに敗れ、ドイツを撃破した"魔法"も解けたかに思えた日本代表がスペイン戦で蘇生するなど、先を読んではたびたび覆された今大会。最後の最後まで、「決勝戦はえてして退屈」などと決めつけないように教えられた。メッシのみならず、期待通りに活躍したのがもう一人の主役。抜擢が当たり、2ゴールに関与したアンヘル・ディ・マリアが途中で涙を流すなど、常ならざるゲームのなかで唯一、"通常運転"をやってのけたのがキリアン・エムバペだった。決勝でハットトリックの偉業は、1966年のジェフ・ハースト以来。真の名勝負は、敗者にも光を当てる。いや、フランスの連覇はならずとも、この男だけは勝者だった。

世界中のファンがワールドカップの決勝に満たされたときを去り際に選んだのか、この年末年始は訃報が相次いだ。ともに病と闘いながら最近まで現場を担っていたのが、直接フリーキックだけでハットトリックを決めたこともある名レフティのシニシャ・ミハイロビッチと、サンプドリアにもユベントスにも黄金期をもたらしたジャンルカ・ヴィアリ。そして、偉大な王様が生涯を閉じた。メッシがやっとの思いで手にしたワールドカップ覇者に輝くこと、3回。王国といえばブラジル、エースナンバーといえば10番。フットボールにおける世界の共通認識、その起源になったのがペレだ。私宅には、もう発行されて23年になる「THE GREAT 100」というマガジンが残っている。当時の歴代名選手100名のランキングで、3位ディエゴ・マラドーナ、2位ヨハン・クライフを抑えた1位がペレだったが、とうとう3人とも天に召された。

カタールの決勝戦を彷彿とさせた選手権準決勝、PKを決められなかった神村学園のエースは、Jリーグを経ずに加入するドイツの古豪で大成できるだろうか。岡山の歓喜はファジアーノにも波及し、今季こそJ1昇格を果たせるだろうか。そして、エムバペはこれからも伝説を刻み続け、やがてペレの領域まで昇っていくのだろうか。「サッカーはワールドカップしか観ない」という人びとにとって、それは4年に一度の特番ドラマのような存在かもしれないが、気付いてほしい。フットボールとは、日常と隣り合う連続ドラマなのだ。

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