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アルモンデ

 昨年書いていたエッセイを改めて。
 
「アルモンデ」ー 今話題なのだと教えられて、先日初めて知った言葉だ。

なんじゃそりゃ? と思ったが、これが料理関連のSNSで流行っている言葉だと聞けば大体想像がつく。イタリア料理のパスタの茹で加減をいう「アルデンテ」をもじって、「家にあるもんで作る料理」のことだそうで、まんま予想通りである。昨今の物価高を受け、「買い物せずとも家にあるもんで作る」意識の高まり、というのが背景らしい。ふーん、なるほど。

 いや、そもそも毎日の料理なんてあるもので作るのが当たり前じゃないの。と、つい毒づきたくなってしまう。しかし物事は名前がつくと大抵は格上げされ、周辺はやたら活性化する。案の定、食材メーカーやレシピサイトがこぞって「アルモンデグランプリ」を開催していた。いずれも目新しい料理があるわけではなさそうだったが、アルモンデゆえ、それがいいのかもしれない。

 言葉を柔軟に取り入れて、ひとアレンジ加えて新しいもののように昇華させるのは日本のお家芸だ。至極当たり前の行為も名前がつくことで、一つのカテゴリーとして生まれ変わる。節約料理じゃなくアルモンデ、と言う方がオシャレさも加味され、作る意欲も(食べる意欲も)湧くと言うものだ。作り手の手際の良さや器用さといったものも包括されるし、おそらく専門家的な人も出てくるだろう(もういるかもしれない)。モノは言いようで、新たな名前がつくことでハッピーな人が増えるならいい。 

 それにしてもイタリア語は強い。日本語にもじられやすく、かつそこには愛着の要素がしっかり入っている。昔、職場があった茅場町に「カヤバッチョ」というレストランがあった。店名を聞けばイタリアンと分かる。そして軽くウケる。本格感が感じられるかどうかはともかく、使い勝手のいい店でそこそこ人気もあった。
 また、イタリアにも料理にも全く関係ない住宅・不動産サイトに「オウチーノ」というのがある。これもイタリアン系の造語だ。カプチーノ、ペペロンチーノ、オウチーノ。違和感がない。
 恐るべし、イタリアンの力だ。元々あるものだろうが何だろうが、新しく面白いもののように表現して、どこか憎めない。イタリア系ネームが多い背景には、どうもイタリアンのお国柄も多分に含まれている気がしてならない。

 毒づいてないで、わたしも今日のアルモンデ料理を作るとするか。

カヤバッチョは今も健在

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