ぬくもりと明るい未来
右から左へスワイプして、通知をひとつずつ減らしていく。機械的な連絡を消し、心のこもった連絡だけを残す。大切にしているからこそ適当な返事はしたくないし、だからなんだかいつも迷う。
外出自粛がはじまり4週間が経った。宣言が出されてから、彼とスーパーの店員さん以外とは直接話していない。
わたしやわたしの周りにいる人たちは、ステイホームを徹底しているようだから、それでも日に日に増えていく感染者数がほんとうは嘘なんじゃないかと思ってしまう。
この間電話した韓国と中国の友だちは、いちおうちょっとずつ感染者数が減って落ち着いてきていると言っていた。
なにが足りないのかを考えているとキリがないけれど、ここにはなにかが足りていない。客観的に見る力なのか、他人を思いやる心なのか、はたまた強制力なのか。
現状を憂いても仕方がないから、状況を受け入れるしかない。自分には何ができるだろう、と考えても、結局は家にいることしかできないのだけど。
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毎週のように、週末は友だちと画面越しにはなす。心が離れているつもりはないけれど、ぬくもりは感じられない。
笑いあって心は満たされるけれど、触れる距離にいるかどうかにここまで左右されるとは思ってもいなかった。
「落ち着いたらごはんを食べにいこうね」
「落ち着いたら旅行へ行こうね」
明るい未来を想像して、すこしでも憂鬱な気持ちから目を逸らす。現実を考えて行動することは大切だけど、現実を直視しつづけていたら心が壊れてしまう。
今日は彼と「終息したらしたいことリスト」を作った。映画館で映画を観たい。美術館へ行きたい。温泉旅行をしたい。普通にできていたことができなくなったいま、ちょっとしたストレス解消法がどれだけしあわせなことだったかをしみじみと感じる。
いまは家にいながらできることを試していくしかない。読書をして自分の引き出しに言葉を入れていく。落ち着く音楽を聴いて心をほぐす。こんなときは、ちょっとくらいだらけた時間を過ごしたっていいよね。読みたい本がたくさんだ。