切れた糸を結びなおせるのは自分だけ
東京はこわいところだと思ってた。
人は冷たいし、平気で押してくる。みんな人を避けるスキルがすごすぎるし、我先にと電車に乗る。
京都から東京へとインターンに来ていた頃、スーツケースを持って電車に乗っただけで思い切り舌打ちをされて、心が折れたこともある。
怖くて泣きそうだった。でも「もう大人だから」と踏ん張った。
わたしが知っている人間とは、種類がちがうんだと思った。
愛する地元はほどよく都会でほどよく田舎。みどりは多くて時間はゆっくり過ぎていくけれど、不便じゃない。主要なエリアには、電車1本で出れる。
人はあったかいし、距離感もちょうどいい。そんなところでぬくぬく育ってきたもんだから、冷たい人間への耐性がまったくといいほどなかったのだ。
1年半住んで思ったのは、半分当たって、半分間違っているということ。
東京にも、あったかい人がたくさんいることを知れた。
ただ、満員電車の乗車率は今でもおかしいと感じるし、住んでいて息苦しくなることもある。
常に前へ前へと進まなきゃいけない雰囲気とか、高みを目指さないといけない考え方とか。それに対して「逃げたい」と思うことを許さない空気感とか、ぜんぶぜんぶ。
たまには立ち止まっていいじゃん、と思う。弱音吐いたっていいじゃんって。ずっと気を張っていたら、いつか糸が切れちゃうよ。
だってわたしは、去年の夏に糸が一度切れてしまったことがあるから。
ストレスに耐えかねて心が悲鳴をあげて、それでもがんばろうとしていたら、電車に乗れなくなった。
「わたしはなぜ、こんなにがんばれないんだ」と、自分を責めた。周りも、がんばれないわたしに冷たい目を向けていた。目が「どうしてできないの?」と訴えていた。だから、わたしはその場所から逃げた。
逃げたことに対して後悔をしたことは一度もないし、元凶となっていた場所から逃げて少し休んだら、すっかり元気になった。電車にも乗れるようになった。でも、いまだにある駅の電車の発車音を聞くと、心がキューっと痛くなって、吐きそうになる。
こんな経験をしたわたしから言えることは、「だめだと思ったら逃げていい」ってこと。いい意味で、わたしがいなくても会社は回るし、世の中は進んでいく。そして、いちばん大切なのは、名誉でも誰かの助けになることでもなく、自分自身だということ。
麺子は、苦しくなったことある?