見出し画像

アムステルダム国立美術館 - 修復中の今こそ見たいレンブラント《夜警》

オランダの美の殿堂、アムステルダム国立美術館を訪問しました。約5時間滞在しましたが、広大で見終わらず。

短時間で巡る方は、美術館の顔ともいえる2ndフロア「名誉の間」からの鑑賞をおすすめします。

修復中も無二の輝きを放つ《夜警》

まずは門外不出の至宝、《夜警》レンブラント・ファン・レイン 1642

The Night Watch Militia Company of District II under the Command of Captain Frans Banninck Cocq, Rembrandt van Rijn, 1642 - Rijksmuseum, Amsterdam

ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》、ベラスケスの《ラス・メニーナス》と共に、世界三大名画のひとつとも謳われます。

私は展示における額縁の力を信じています。
しかし今回ばかりは、修復のために額から自由になった絵の中の人々が、一層力強くこちらに歩き出しそうでした。

古いニスが除去されたためか、実物は公式写真よりだいぶ明るく見えます。実は夜ではなく日中を描いた絵というのも納得。

神々しさを湛えた絵の中心部は誘蛾灯のような引力がありました。

ゆっくり鑑賞していると、劇的なポーズと明暗が織りなす躍動感に加えて、マスケット銃や市民隊の旗などが導く線の美しい構図も見えてきます。

当時レンブラントの人気を不動のものとした「動きのある」集団肖像画。しかし《夜警》ではダイナミックにやりすぎてしまった模様。

注文主として同様に画料を支払ったにも関わらず、絵の後方で「その他大勢」の扱いを受けた人々からは大不評を買い、その後レンブラントへの注文は激減したそうです。

また、この絵の制作と同時期に最愛の妻サスキアを失くした悲しみから、彼女を模した市民隊のマスコットを堂々と目立つ位置に描いています。スポットライトまで当てて。注文者はさらにお怒りでしょう。

左下の女性は市民隊のシンボル的マスコット。実在しない人物だが亡き妻にそっくり。

レンブラントのこういう素直さや、複雑な女性関係、破産、次々と亡くなってしまう子どもたちも絡んだ波乱万丈の人生は、神がかった画才に人間味を加えて多くの人を惹きつけるのかもしれません。

レンブラントの自画像

Self-portrait, Rembrandt van Rijn, c. 1628

22歳。初々しく控えめです。もっと鬱々とした絵かと想像していたのですが、実物は暗さよりも、ぼうっとした表情の可愛らしさに目が行きました。

Self-portrait as the Apostle Paul, Rembrandt van Rijn, 1661

55歳。破産し、老成した穏やかなお顔。
上記2点の中間のイケイケ?時代の自画像を見るには他の美術館を巡る必要がありそうです。

終わりに

敬愛する世界的ピアニストのアンドラーシュ・シフ氏が、1問1答で「好きな芸術作品は?」「夜警」と理由も語らず答える動画があります。数年前にこの動画と出会い、《夜警》への思いが強まりました。

世に名画は数あれど、選び抜いた音しか出さないシフ氏があえて選ぶ1作品なら、必ず見たい。その夢が叶いました。

(英語動画)16秒あたりからの一瞬。

ありがとうございました♪

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?