旅の原点は「乗り物好き」。世界を旅した海外玄人が心を奪われた台湾の魅力とは?【旅人インタビュー】
今回インタビューさせていただいたのは、台湾好き歴約20年というYass(以下、ヤス)さん。
年3~4回は必ず台湾旅行し、これまで台湾に訪れた回数は数えきれないほどという「筋金入りの台湾マニア」です。
そんなヤスさんが14歳で初めて海外旅行した先は、南米ブラジル。それを機に海外旅行に魅了され、過去には旅行代理店に勤務し、海外添乗の仕事もされていました。
今よりもずっと航空券が高く、海外旅行の敷居が高かった頃から世界各国を旅していたヤスさんが魅了された「台湾」という国。
旅の原体験や台湾への想いについてお話を伺う中で、海外旅行玄人の心も掴んで離さない、台湾の魅力が見えてきました。
旅を演出する「乗り物」が好き
ーヤスさんが旅好きになった原点やきっかけはありますか?
私は子どもの頃から、乗り物が大好きなんです。
車、バス、電車、飛行機、船など、どんな乗り物でも。
何かに乗って出かけるというワクワク感がたまらなく好きだったんです。旅好きにさせてくれたのは、それがきっかけだと思います。
旅の始まりも終わりも、全部乗り物なんですよね。
乗り物は旅に欠かせないものであり、旅を演出するもの。乗り物に乗って、じゃあどこへ行こうかって考えるのが旅だと思っています。
ー乗り物が好きな男の子って多いと思うんですが、そこから旅好きにつながるというのはおもしろいですね
子どもの頃って1人では出かけられないけど「家族や親戚に連れられてどこかへ行く」というだけで、毎回すごくワクワクしていました。
私たちの世代は家族旅行なんて年に1回、夏休みに熱海の温泉に行ければ充分でした。あとは出かけるといえば、東京の実家から福島の親戚を訪ねるくらい。
それでも、電車や車に乗って、自分の知らない世界を見れるのがすごく楽しかったんです。
海外旅行の原点は14歳で訪れたブラジル
ー子ども頃から旅好きだったヤスさんが、海外旅行を好きになったきっかけはなんでしょう?
初めての海外旅行は14歳で南米のブラジルだったんですが、それがきっかけだと思います。
せっかくだから一番遠いところに行ってみたくて、親戚と一緒にツアーで行きました。
当時(約30年前)は今のようにインターネットがなかったので海外旅行といえば、個人ではなく旅行会社のツアーを予約するのが主流でしたね。
当時はブラジルまで直行便で25時間かかったんですが、そんなに長い時間乗り物に乗るという経験は初めて。
25時間って未知の世界だから、いくら乗り物が好きでも、もう二度と乗りたくないと思うのか。あるいはもっと乗ってまたどこかへ行きたいと思うのか。自分はどう感じるんだろうというのも含めて、ワクワクしていましたね。
ー14歳で初めての海外旅行がブラジルってすごいですね!ブラジル旅行はどうでしたか?
断片的な記憶ではあるのですが、楽しかったです。
見たことのない景色を見て、食べたことのないものを食べて……その年齢ではなかなか経験できないことをたくさんさせてもらいました。
ちょうど中学校で英語を習い始めていたので、覚えたての英語を現地で使ってみたりして。とにかく、とても刺激的で楽しかった記憶があります。
ー刺激的な海外旅行デビューでしたが、その後はどのような旅をしましたか?
高校1年の時に、バイトでお金を貯めて親戚のお兄さんと1週間タイに行きました。
まだLCCがなかったので、タイの航空券は往復15万円くらいだったかな。当時は台湾も往復10万円は超えていたと思います。
海外旅行が気軽にできなかったので、高校生のお小遣いでも楽しめる青春18切符(※日本全国のJR線の普通列車に1日乗り放題の切符)の旅をよくしていましたね。
京都に行ったり、九州一周したり、北海道に行ったり。学校の長期休みは日本を巡っていました。
今考えると、そのときに旅のスキルが養われたのかもしれません。電車の時間を調べてスケジュールを立てたり、目的地までのルート上に何があるのかリサーチして、やりたいことや食べたいものを見つけたり。旅の計画を立てるスキルっていうのかな。
世界を旅する中で出会った台湾
ー社会人になってからはどのような旅をされていましたか?
14歳以来の南米にもう一度行きました。ドイツなどヨーロッパも旅行しましたね。
20代半ばには、当時勤めていた会社の社員旅行として初めて台湾に行きました。
実は、その時のことはあまり覚えていないんです。
社員旅行だから一日中お酒を飲んでいて。
でも「ごはんがおいしかった」という記憶は残っていました。
その記憶をたどって、またおいしいものが食べたくて、社員旅行から数年後にまた台湾へ行きました。
ーその2回目の台湾旅行で台湾にハマったのでしょうか?
ハマったというか「また行ってもいいかな」という感じですね。というのも、当時はまだ航空券が高かったんです。
航空券が往復で10~15万円、ホテルを含めて約20万円。お小遣いなどを持っていくとトータル30万円弱になるので、とても頻繁には行けない。年に1回行けたらいいくらいかな。
ただ、ちょうど10年前くらいにLCCが就航し始めて、海外旅行のハードルが一気に下がったんです。航空券も安くなって、今のように頻繁に海外旅行できるようになった。
そのおかげで、台湾に訪れる回数も増えていきました。
ーヤスさんは過去に旅行代理店で添乗の仕事もされていたと伺いましたが、旅に関わりたいという思いからだったのでしょうか?
27歳の時に転職して旅行代理店に勤務し、海外添乗の仕事もしていました。
旅を、好きなことを仕事にしたいという思いがあったのですが、実際にやってみたら思っていたのとはちょっと違って。
旅行代理店で扱うのはあくまでもお客さんの旅で、添乗したとしても自分の旅ではないんですよね。
結局、4年くらいで辞めて違う職業に就きました。
でも旅行代理店の仕事は楽しかったし、色々な経験もできたのでやってよかったと思っています。
日本にはない「ゆるい空気」を求めて
ー海外旅行のハードルが高かった時代から様々な国に旅行していたヤスさんですが、そのなかでも台湾が好きになった理由はなんでしょうか?
まず、物理的に台湾は行きやすかったんです。
当時からどの航空会社も台湾路線を持っていたので。
さらに、行きやすい国の中でも、台湾は一番楽しい思い出がありました。それが理由ですかね。
ー台湾の魅力はどんなところだと思いますか?
食べ物がおいしい、人が優しいなどたくさんありますが、一番は日本にはない「ゆるさ」ですね。
日本ってお堅い部分があるじゃないですか。そんな緊張感から解放されたいというか、ストレスを発散させたくなるというか。台湾のゆるい空気を吸いたくなるんです。
台湾以外でも海外なら「ゆるさ」は味わえるけれど、台湾は日本と距離や文化が近くて、同じ時代(日本統治時代)を過ごした時期もある。
だけど、日本にはない「ゆるい空気感」。
日本と近いようで少し違う、みたいな感じが好きですね。
ー台湾の「ゆるさ」で印象的に残っているエピソードはありますか?
以前、台湾でバスに乗ったときに運転手さんが乗客を乗せたまま急にバスを停めて、自分のお弁当を買いに行ったんですよね。
そんなことは日本だったらまずありえないし、許されない。だけど台湾ではそれが当たり前のように許されるというか、もはや日常になっていて誰も気にしていない。
そんな光景を見た時に、私は台湾のゆるさがたまらなく好きになっちゃったんです。
ーヤスさんは台湾の南部(台南や高雄)に対して特に思い入れが強いイメージがあるのですが、南部の魅力は何でしょうか?
都会も田舎も両方あって、なおかつ懐かしさを感じるところです。
例えば台北にも台湾らしさはあるけれど、近代化が進んで東京のような雰囲気になっていますよね。
だけど南部には、自分が台湾に行き始めた頃の「当時の台湾」がまだ残っている。
私も含め、古くから台湾を見てきている人は、そんな「当時の台湾」を求めて南へ行くんだと思います。
その時代の台湾に身を置きたいという、思いがあるんじゃないかな。
ー「たまには台湾以外の国にも行ってみようかな」と思うことはありますか?
以前は、台湾と他の国を絡めた旅行もしていた頃もありました。台湾経由の香港とか、台湾経由のクアラルンプールとか。
だけど、最近は仕事でなかなか休みが取れなくて。二か国の旅をするには、ある程度まとまった連休が必要ですからね。
台湾を経由せずに他の国だけの旅にすると、貴重な1回分の台湾旅行がなくなってしまう。
もはや台湾は私にとって特別な国というか、ふるさとに近いような状態なんだと思います。
頻繁に行き続けているからこそ、どんどん愛着が湧くというのもあるかもしれないですね。
長い休みが取れなくても工夫次第で旅は楽しめる
ーいつもディープな台湾旅行を楽しまれていますが、そのなかでも「0泊3日弾丸台湾一周の旅」は衝撃的でした。
私は仕事の都合で、なかなか長い休みが取れないんです。
だけど「長い休みが取れないからできない」じゃなくて、工夫すれば何かしらのことはできるだろうと思って、挑戦したのが0泊3日弾丸台湾一周の旅でした。
休みは1日だけで前後は出勤。まず、仕事が終わったらそのまま成田に直行して深夜便で台湾へ入国、そこから旅を始めるわけです。
台湾の滞在時間は24時間しかなかったけれど、その分とても充実して思い出に残る旅でした。
ーInstagramで旅の様子を発信されていますが、弾丸旅はフォロワーの方からも反響が大きかったのではないでしょうか?
反響はありましたね。「私も短い休みしか取れないけれど、弾丸で台湾に行ってみます」みたいなメッセージをいただいたのは、とても嬉しかったです。
休みが取れないから旅行を諦めるっていうのは、とても切ないことだと思っていて。
旅先であまりゆっくりできないとか、何かを犠牲にしなくちゃいけない部分はあるけれど、どうしても旅がしたいと思えば短い休みでも工夫次第で楽しめるんです。
ヤスさんのInstagram
編集後記
14歳の初海外で一番遠い場所に行きたいとブラジルを選んだエピソードをはじめ、お話を伺う中でヤスさんは「筋金入りの台湾好き」である前に「筋金入りの旅好き」であると感じました。
インタビュー中、旅や乗り物についてとても楽しそうにお話してくださいましたが、台湾の話題になるとより一層生き生きとされる表情が印象に残っています。
「短い休みでも工夫次第で旅を楽しむことができる」。
この言葉は、実際に弾丸で思い切り旅を満喫されているヤスさんだからこそ説得力があり、旅に出たいと思っている人の背中を押してくれるでしょう。
今後も、ヤスさんのディープで愛に溢れた台湾旅行から目が離せません。