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ケース3. 計画的偶発性理論〜主体的にキャリアを描く組織文化〜

▶︎主体的にキャリアプランを描く組織文化をつくるには何が必要か?


理想のキャリアプランの描き方に頭を悩ませる壁には、誰もが遭遇するではないでしょうか?

経営の視点:
・事業の成長に必要な役割を柔軟に任せていきたい
・良い機会ほど渡せる枠は限られている

現場の視点:
・主体的に自分のキャリアをデザインしたい
・自分の努力を正当に評価してもらいたい

一定期間における活動の結果を表す評価は、未来のプランを考える材料となります。
評価は制度の在り方よりもフィードバックの在り方が重要とされており、受け手が不当な評価だと感じてしまうと、組織と個人の目指す方向性にズレが生じてしまいます。
しかし、裏返すと評価者の伝え方、被評価者の受け取り方次第で、同じ評価であっても考えられる未来のプランが変わるということにもなります。

そこで、今回は評価を前向きに受け止める考え方となる計画的偶発性理論という理論について考察します。

▶計画的偶発性理論

計画的偶発性理論(プランド・ハブンスタンス)とは、個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される。その偶然を計画的に設計し、自分のキャリアを良いものにしようとするキャリア論。
スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授らが提唱。

(wikipedia参照)


失敗や困難もポジティブに受け止め、主体的に行動を起こすことで、偶然をチャンスに変えることができるとするキャリア論です。

計画的偶発性理論を実践するための素養は下記が必要とされています。

①好奇心(Curiosity)
:新しいことに興味を持ち続ける
②持続性(Persistence)
:失敗してもあきらめずに努力する
③楽観性(Optimism)
:何事もポジティブに考える
④柔軟性(Flexibility)
:こだわりすぎずに柔軟な姿勢をとる
⑤冒険心(Risk Taking)
:結果がわからなくても挑戦する


武田信玄は下記のように主体的な姿勢によってさが生じるとの格言を残しています。

ーーーーー
実力の差は努力の差、
実績の差は責任感の差、
人格の差は苦労の差、
判断力の差は情報の差、
真剣だと知恵が出る、
中途半端だと愚痴が出る、
いい加減だと言い訳ばかり、
本気でするから大抵のことはできる、
本気でするから何でも面白い、
本気でしているから誰かが助けてくれる
ーーーーー


では、主体的に取り組むために、どのようなことを意識すると良いのでしょうか?

▶︎バイアスに対処して事実を捉える

組織と個人の目指す方向性を揃えるための評価では、未来に対する期待値をすり合わせることが重要となります。
すり合わせ次第で、win-win、win-lose、lose-loseになるのか異なりますが、人にはバイアスが生じることを認識して注意しなければ正しく事実を捉えることができません。
評価では下記のようなバイアスが生じます。

1.確証バイアス
:自分に都合のいい情報ばかりに目がいってしまう
2.ステレオタイプ
:人の属性や一部の特性をもとに先入観や固定観念で決めつけてしまう
3.ハロ-効果
:相手の一部の長所ですべてがよく見える
4.正常性バイアス
:周りが変化していたり、危機的な状況が迫っていても、「私は大丈夫」と、自分に都合のいいように思い込んでしまう
5.権威バイアス
:権威ある人の言うことは、間違いないと思い込む
6.アインシュテルング効果
:慣れ親しんだ考え方やものの見方に固執してしまい、他のものの見方に気がつかない
7.集団同調性バイアス
:周りと同じように行動してしまう
8.自己奉仕バイアス
:成功は自分の手柄であり、失敗の責任は自分にはないと思い込む
9.サンクコスト効果
:費やした時間や労力を考えてしまい、やめたほうがいいことでもやめられなくなる
10.バラ色の回顧
:過去を美化してしまい、今を否定してしまう
11.ダニングクルーガー効果
:等身大の自分を隠して過大評価してしまう
12.インポスター症候群
:能力があるにもかかわらず、自分を過小評価してしまう


バイアスは脳がストレスを回避しようと無意識に自身に都合のよい解釈をする自己防衛心によって生じます。
誰にでもバイアスは生じることを認識して、対処しなれれば実態に合わせた主体的なプランニングができないことを注意して、評価を伝える、受け取ることが重要といえるでしょう。

▶︎機会によって人は育つ

アメリカの人事コンサルティング会社ロミンガー社が提出した「7・2・1の法則」では、
7割は経験から学ぶことができ
2割は周囲の人から学ぶことができ、
1割は書籍などの座学から学ぶができる
として、人の成長においては経験が重要とされているのです。

組織行動学者のデイヴィッド・コルブは、「経験学習モデル」において、
①具体的経験→②内省的反省→③概念化・抽象化(教訓を得る)→④能動的実験(積極的な実践)→①からのサイクルに戻る‥を唱えており、経験から成長をしていくためには、主体的な意識が重要と主張しています。

例えば、リクルート創業者の江副 浩正氏は「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という言葉をリクルートの社訓としていました。

リクルートは新規事業、既存事業に抜擢された人たちが後に起業したり、他社で重役を担ったりし、優れた人を輩出する組織の代表例です。
役割によって育った人は、経験学習を通じてその後の活躍にも繋がることを示しています。

そのため、機会によって人は育つことを意識して、主体的に機会に取り組む文化が重要です。

▶︎主体的にキャリアを描く組織文化がwin-winの関係に

人の感情はネガティブな方に流れやすいもの。
さまざまな組織の事例においても、最初はマインドの高い人であっても、気付かずうちにネガティブな感情を持っている人たちに流されてしまい、組織が苦しい方向に流れてしまうとの話があります。

計画的偶発性理論は、不安や嫉妬、怒り、悲しみといったネガティブな感情に負けずに、前に進む意志を持つ人が報われていくとの指針となる考え方です。

最近ではChat GPTによって仕事の在り方が変わっていくとされているように、テクノロジーの変化によって未来が不確実な時代だからこそ、定まったレールの上で走るよりも、変化に対応できる人が市場価値が高くなっていきます。
思い通りにいかないことに頭を悩ませるよりも、今を生き切る方が明るい未来を歩めるのではないでしょうか。

世界15ヶ国語で刊行されている『ザ・ドリーム・マネジャー モチベーションがみるみる上がる「夢」のマネジメント』では、下記の一説があります。

ーーーーー
会社の将来と社員の潜在能力は密接につながっている。組織を動かす1人ひとりが理想の自分になろうと懸命に努力すれば、その組織は理想の状態に近づく。これは会社だろうと学校だろうと、役所や非営利団体やスポーツチームだろうと、どこででも通用する普遍的真理だ。
ーーーーー


目の前のコトに真摯に向き合い、未来を語り合い、お互いの目線を上げていくことで、組織全体の明るい雰囲気が生まれ、自然と目標がスケールアップしていく。
主体的にキャリアを描く組織文化でこそ、組織も個人も成長していくwin-winの関係を築けていけるのです。

※本noteでは、人の可能性を拓く組織づくりのための新しい気付きを届けることを目的に、組織論とケースを考察していきます。
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