読書感想:冨山 和彦さんシリーズ


1.2025年日本経済再生戦略(冨山 和彦、成毛 眞)

日本の未来における特性と個人が意識した方が良いことの理解が深まる

<Point>
・2025年には団塊の世代が全員後期高齢者になる
・日本は過度な企業内共助型の社会になっているが、これからは100%自己責任の意識で個人として人生を構築するべき
・日本とドイツは中小企業の割合が同等だが、輸出総額が倍以上の差をつけられており、内需に依存している。一方で、日本人の所得は30年間伸びていない
・新陳代謝が進まず固定化した産業構造に身を置いても新しい力は身につかない。昭和に染まりたくない若者はユニコーンを目指すべし
・エッセンシャルワーカーは、不定形な現場仕事なために臨機応変さが求められる業務が多く、かつ人と接して信頼や感動を与えるものが多いため、むしろAIに取って代わられにくく、日本だけでなく世界中で人手不足になる
・日本は世界でも有数の反資本主義的な国であるが故に、世界中から卓越した若い才能が集まるには資本主義的にならなければならない
・イノベーションに飛び道具はない。関わる人たちの強い意志と、たゆまぬ努力がすべて
・日本はイタリアのように世界から評価される独特な食文化を活かしたグローバル人材を取り入ることも一つの方向性

2.結果を出すリーダーはみな非情である 30代から鍛える意思決定力(冨山和彦)

組織や人を守る強いリーダーシップを考えさせられます

<Point>
・正しいことであれば全員が賛同してくれるほど社会は単純ではない
・リーダーシップは役職がつく前から目線を上げて決断し実行することで磨いていく。若いときほど失敗のコストは小さく、失敗からの学習は高い
・明治維新に示されるように、重臣よりも身軽で動きやすい、かつ現場と経営の両方から1次情報がとれるミドルマネジメントこそ戦略や組織の変革を主導するキーであることは歴史が証明している
・リーダーに不可欠の条件は合理的思考力。冷徹な事実や人間性の現実を理解するリアリズムの徹底追求が合理的思考の前提条件
・どんな答えを選ぶにしても、清廉で美しいだけの結論はないため、決断作業は重く、ストレスがかかる
・組織は下の人ほど言い訳しやすく、人はガス抜きをしないと神経が参るが、責任転嫁し続けても自分が責任を持った時に乗り越える力はつかない
・人を理解しなければならない
・自己実現や社会的意義は経済的に食えることの先にある話だと忘れてはならない
・論理で片がつかない問題かどうかは、論理的に考え尽くさないとわからない
・人間の感情の動きは一定の法則性や経験則がある
・情理と合理が最終的にぶつかり合う局面では全ての人がすっきり納得できる論理的な解はないからこそ、誰よりも真剣にその問題を考え尽くす
・会社にすがりついていないと生きていけないと簡単に寝返ってしまう
・与党として考えて行動することから逃げてはいけない。「会社が変わらないなら辞める」は最初から逃げ腰なだけ
・あえてKYな言動ができる人は重宝した方が良い
・敗北を抱きしめ組織に与える被害を最小化するために身を呈して最終責任を引き受けられる人が有望
・上から見るより下から見たほうが人の器の本質は見える

3.リーダーの挫折力(冨山和彦)

ビジネスにおいて軽視できない権力を組織や人のために使いこなすリーダーの心構えに向き合える

<Point>
・挫折とは挑戦の裏返しであり、挫折を恐れないからこそ挑戦を繰り返すことができる
・ミドルマネジメントの仕事は管理から経営に変わっていく
・変化の激しい現代では仕事もプライベートも浮き沈みが不可避であるため強さが必要
・挫折経験を持たずに小さな成功ばかりを積み重ねた人は打たれ弱い
・失敗をするのが嫌ならば失敗を失敗で終わらせなければいい
・過去の失敗した自分は今の自分とは別人格だと考えて自己観察する
・組織の問題児を放置していると、その毒は組織全体に回りかねない
・自分の意見を通すには人とぶつかることを恐れてはいけないが、不用意に敵を作ると時間と労力の無駄であることに注意
・信頼できる関係とは何度も修羅場をくぐりながらも壊れなかった関係
・ビジネスの基本は自分の仕事の価値に対して、誰かが対価を払ってくれるかに尽きるため、若いうちはcan を大きくしていくことが重要
・理から生まれる力、情が生み出す力、時に逆方向に作用する二つを折り合わせて、できるだけ同じ方向に作用させる
・日常の温厚と修羅の鬼神、平時のバランス感覚と危機時の果断、二つの顔を使い分けねばならない
・歴史物を心理戦」として読む

4.シン・君主論(冨山 和彦)

マキャべリの君主論を土台とした不確実な時代の中で組織を牽引するリーダーシップが学び深い

<Point>
・マキャベリが変革した当時のフィレンツェは意思決定できない国だった
・戦略を変えることができても組織がついていく大変さを牽引しなければ意味をなさない
・愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ
・リーダー自身が己の能力と成果を厳しくモニタリングされる構図を作らなければ組織を変えることはできない
・リーダーは危機の時代に経験を通じて育つ
・人間心理への鋭い洞察力がなければ経営の舵取りはできない。経営の本質は自分以外の他者を通じて物事を成し遂げること
・君主自ら戦地ヘ赴き、肌感覚として戦い方を理解する。いざとなれば自らが現場の最前線で戦う気概を持つ
・リーダーが強くなければメンバーが戦況が悪くなると逃げ出すため、リーダー自身が無知を認めながら常に自己を鍛え続ける
・中途半端な情けは全員を不幸にする
・決断力と実行力はリーダーに不可欠な実力
・有事にこそ人間の本性が出る
・嫌われることを恐れる前に自分が依って立つ信念を明らかにすべき
・人の好意は気まぐれ
・判断基準に暖味なグレーゾーンがあってはいけない
・多様な人材を活かすには多様なものの見方ができる人間でなければいけない

5.これがガバナンス経営だ!(冨山 和彦、澤 陽男)

ダウンサイドリスクを回避する守りだけではなく、的確なリスクテイクを行い、アップサイドチャンスを持続的に収益化していくためのガバナンスの目的が学び深い

<Point>
・日本企業はグローバルと比較して技術力と現場力が強いが経営力が弱い
・ドイツや欧州は労働市場改革や年金改革などと並んでガバナンス改革によって経済力を高めている
・GRIFが株式市場へ流れ込んできたことによってガバナンスがさらに求められている
・長期的な視点で見れば稼ぐカのない企業は資金調達ができず、持続的な成長力も失っていく負の循環に陥る
・資本市場における最終的な資金拠出者はほとんどの場合が個人であることを忘れてはならない
・ムラの空気を打破するチーム構成にする
・独立社外取締役には、業界や会社に関する専門的な知識が必須ではなく、むしろ当該業界や企業内部の知見とは異なる知見、より大きな時空での経営や社会に関する知見を持っていることが大事

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