#43 ただ名前を愛すのだ!
このnoteではそんな感じをまるで出していないのだが、わたしは人力舎という事務所で「凪」という名のコンビを組んで活動している。
そしてこの度、今月16日のライブを以て、コンビを解散することに相成った。
養成所から数えると2年半ほど、とても楽しく、さまざまな経験をすることができた。
ずっと続けてきた人間関係をひとつ終わらせるというのは、それなりに大きなことである。
簡潔にまとめるのは難しいので、詳しいことは割愛させていただきたい。
とにもかくにも、我々の活動をすこしでも知ってくださった方、観てくださった方には心から感謝を伝えたい。
ありがとうございました。
わたし個人の今後の活動については全く未定で、現時点で言えることは何もない。
ただ少なくとも、芸人になる前からやっているこのnoteは、これからも変わることなく続けていこうと考えている。
なんにせよまずは、コンビとして最後のライブを精一杯、つとめたいと思う。
そんなわけで、いつもどおり本題に入っていきたい。
前回の記事で、こうして名前についての記事ばかり書き、名前好きを名乗っているわたしはどれだけ初見の名前を正しく読むことができるのか?についての検証を行った。
子役の事務所であるジョビィキッズのタレント一覧を利用して、振り仮名の見えない状態でひとつひとつの名前を見て、正しい読みを推測する。
ジョビィキッズのサイトは、性別や年齢を区切って検索できる仕様になっているので、年齢を"0〜6歳"に絞り、男女をわけて検証した。
前回はその男子名について書いたので、今回は女子名についての検証結果を、記していきたいと思う。
ひらがなやカタカナ表記の名前を除いて、女子名は189件。
タレントさんなので芸名の可能性もあるが、子役の方は本名で活動する場合が多いので、ほぼ全員本名で間違いないだろうと予測している。
なお、一発で読みを当てられなかった場合でも、正解するまで答え続けるという方式をとっている。
下記の表について、いちばん右の欄には、正解するまでにわたしが予想した読みを載せている。
また、一発で答えられたものには○、迷ったものには△、正解に辿り着けなかったものには×のマークをつけた。
読みの候補がふたつ思い浮かんだものなどは、一発正解ではないが○としている。
そして189件の内訳は、○157件、△31件、×1件という結果になった。
ではさっそく表とともに、いくつかピックアップしながら紹介していきたい。
▼柚月(ゆな)
最初に躓いたこちらの名前は、「柚月(ゆづき)」という名前の人気が高く、一般に多く見られるために、その固定観念から抜け出すのにやや苦労してしまった。
「月」はラテン語で「ルナ」。その⑩外国語読みから②後ろ残しぶった切りして「月(な)」になったのだろう、と考えられる。
▼十咲(とわ)
今回も出題を手伝ってもらった父親に、一発で読めることを驚かれた名前のひとつだ。
「咲」には「咲う(わらう)」という意味及び読み方があり、女優・武井咲(えみ)のような名前もここからきている。
「とわ」という響きの人気(主に男子名だが)が念頭にある上で、この漢字の組み合わせを見れば、パッと読みを推測することができた。
▼心結(ここな)
「結」を「な」と読ませるのはよくわからないのだが、「心結(ここな)」という名前は決して少なくない数、見受けられる。
今回も「みゆ」で外したあとのふたつめの回答で出すくらいには、もはや一般化しているような気がする。
▼白紗(さらさ)
「白」という漢字に「さら」という読みはない。
それでもなんとなく推測できたのは、「真っ白(まっしろ)」と「真っ新(まっさら)」という言葉の類似が理由かと思われる。
「白」って「まっさら」っぽいのだ。だから正しくなくとも、「白=さら」は個人的にはあまり違和感なく、結びついてしまう。
▼洸花(ほのか)
前回と合わせてはじめての、且つ唯一の×がここで出てしまった。
何故この読みが出なかったのか、答えを知ったあとでは全くわからず、自分は馬鹿じゃないのかと思った。
だって、「洸か(ほのか)」は普通の訓読みなのだ。確かに知名度は低いだろうが、わたしは当たり前に知っているはずの読み方なのだ。
それなのに、名乗り読みやぶった切りなどに終始してしまい、正しい訓読みに立ち返ることができなかった。
言い訳のしようもなく、非常に情けない、恥ずかしい結果だ。
▼彩雅(あやが)
▼楓雅(ふうが)
このふたりは名字を見ても、おそらく姉妹なのだろうと考えられるが、特に「楓雅(ふうが)」は男子名のイメージが強い。
しかし性別の分かりにくい名前というのは確かに存在し、パッと見の印象のみで判断するというのはナンセンスだ。
わたしは過去に「寿樹(ひさき)ちゃん」や「愛理(あいり)くん」なども目にしたことがある。
正しい読みに辿り着くには、先入観をなるたけ取っ払うことが重要だと思う。
▼穂結(すい)
こちらも父親に驚かれた名前だが、先ほど「洸か(ほのか)」の訓読みを思い出せなかったときとは逆に、これは「穂(すい)」という音読みにすぐ気がついた。
「すい」という響きが女子名に人気という認識もあって、まず「結」を㉘置き字と考えたところ、それが正解だった。
パズルのピースがはまった感じがして、気持ちよかった。
▼月南(るみな)
⑩外国語読みを用いてはいるが、決して難しい読み方ではない。
しかし「月」と「南」から考えられる読みを組み合わせて正解に辿り着くのに、なかなか時間がかかってしまった。
表にも、その思考の跡がよく残っている。
▼陽(よう)
これも勝手な感覚のせいで、正解が遠のいてしまった名前だ。
シンプルに読めばそりゃあ「よう」なのだが、女子名で「よう」というのはあまり多くないため、そこを避けて回答してしまった。
そのあたりの判断はとても難しいが、基本の読み方から突飛な発想まで、すべての可能性を均等に考えることが必要だ。
▼偲萊(さら)
表のすぐ上が「紗良(さら)」という名前で、同じ読みでこうも表記が異なるかと驚かされる。
どちらも認知度の高くない漢字だと思われるが、「偲(さい)」と「萊(らい)」というそれぞれの音読みを①ぶった切りしただけの、シンプルな読み方だ。
知ってさえいれば、答えに辿り着くことも困難ではない。
※なお、サイトでは「偲莱」という表記だったが、「莱」は名前に使えないので、正しくは旧字で人名用漢字の「萊」だろうと推測した。
▼来映(こは)
それほど無理な読み方をしているわけではないのだが、「こは」という響きの珍しさも相まって、正答するのに時間を要してしまった。
「映」を①ぶった切りして「は」と読むのは、「羽」や「葉」に次ぐ止め字として、ときどき見かける読ませ方だ。
▼水音(みのん)
何故か「音(のん)」という読み方が思いつかず、悩んでしまった名前だ。
「音」を「のん」と読ませるのは⑤熟字訓・連声ぶった切りで、もう説明の必要がないくらい、現代の名付けにおいては広く使われているものだ。
それなのに、このときはなかなか出てこなかった。名前好きを名乗るなら、もうすこしちゃんとしていただきたい。
▼瑞紗(みすず)
「紗」は最初はどうしても「さ」の読みが先行してしまうが、「すず」という名乗り読みがあることを忘れてはいけない。
今回も「さ」で考えられる読み方がすべて外れたあとで「すず」に思い至り、そこからは一瞬だった。
▼彩桜(しおん)
この名前は、出題してくれた父親が「なんでそう読むのか全くわからない」と言ったので、それがヒントにもなった。
紆余曲折を経て「桜(おん)」という㉔ン置換に辿り着いたのをきっかけに一応正解できたものの、「彩=し」の理由は全く不明だ。
しかしこういった、本来の読みなどに捉われない名前に出会えるのが、日本の名付けという文化の面白さである。
▼絵心(えみり)
正答はしたが、「絵=え」、「心=み」だとして、「り」の出どころがわからない。
一応、「心」には「ごり」という名乗りがあると辞書には載っているので、それを用いた「み」との⑧二度読みとも考えられる。
ただ、近年の名付けにおいて「心」という漢字はワイルドカード化しており、本来の読みに関係なく、さまざまな読みが当てられている。
こちらの名前も、その例のひとつと考えるべきだと思う。
▼向葵(ひまり)
もはや普通と化していて素通りしそうになるのだが、こちらは「向日葵(ひまわり)」の⑤熟字訓・連声ぶった切りである。
「向」と「葵」をひとつひとつ考えると、「ひまり」にはまるで結びつかないが、「向葵」という括りで見れば、それはもう──わたしの感覚では9割方、「ひまり」なのだ。
▼詠望(えの)
「望」の読み方を考えるときに、ここでは名乗り読みの「み」が先に出てきてしまったが、「望(のぞみ)」の①ぶった切りである「の」も、非常によく使われる読ませ方だ。
▼俐娃(りあ)
こちらは極々シンプルな、音読みの組み合わせで構成された名前である。
しかしながらそれぞれの漢字があまり一般的でないので、パッと見の珍しさとともに、読みにくさを感じてしまうかもしれない。
ちなみに、「俐」はかしこい、「娃」はうつくしいという意味を持つ。
▼樹奈(なな)
思いつくまでに時間がかかって悩んでしまったが、「樹(な)」は辞書に記載のある名乗り読みである。
競泳女子の青木玲緒樹(れおな)選手の名前にも使われているが、一般的とは言えないだろう。
▼耀央(るな)
これはすごい名前だ。漢字とその読み方を見比べても、すぐにはどこがどう結びついているのかわからない。
「央」には「なか」という名乗り読みがあり、「な」はそこからの①ぶった切りだと考えられる。ただ、「央(な)」という読ませ方はときどき見かけるので、個人的には珍しさはない。
今回、読みを推測するなかでも、「央(な)」に思い至ったことが、正解に辿り着く大きなきっかけになった。
そして「耀」には「てる」という名乗り読みがある。それを②後ろ残しぶった切りして、「る」と読ませたのではないか。
このように、説明は決して難しくない。しかし初見の印象としては、かなり難易度の高い名前だといえるだろう。
▼子桜(みお)
この名前は正解したものの、ほとんど偶然みたいな感じだった。
わたしは知らなかったのだが、調べたところ「子(み)」は訓読みであった。
自分の知識を試す場で、新しい知識を得ることができた。
▼莉禾(れいか)
「莉(れい)」は一部の辞書に、音読みとして記載がある。
今回は「り」という読み方から離れるのに時間がかかってしまったが、「れい」に気づくことができれば決して難しいものではなかった。
▼唯愛(ゆいあ)
単純な読みの組み合わせではあるが、「ゆいあ」という響きがやや珍しいために、自分のなかでより聞き馴染みのあるものから回答していったために、やや遠回りになってしまった。
これは個人の感覚というより、今まで見てきた名前からの経験則なのだが、そんな範疇ばかりで考えていては、なかなか辿り着けないこともあるだろう。
さて、こんなところで、以上となる。
男子名で検証したときは×はひとつもなかったのだが、今回は1となってしまい、やや悔いの残る結果となった。
知識を持っていても、それを必要なところで頭の引き出しから取り出すことができなければ、意味がない。
今回も正しい読みに辿り着くまでに時間を要した名前はいくつもあったが、なんとなく男子名よりも女子名のほうが、悩んだ回数が多かったように感じる。
名前・名付けというものはほんとうに幅が広く奥が深く、多様な個性によって構築された文化なのだなと改めて思う。
とにかく現代の名前を正しく読むためには、名付けや漢字に対する知識を持った上で、さまざまな視点に立って考えることが大事だと感じた。
こうして2回の記事にわたって検証をしてきたが、答えられたものも悩んだものも引っくるめて、わたしが名前オタクであることの立証はできたと思う。
それでも自分としては、もっとすぐ答えたかったなとか、なんで思いつかなかったんだろうとか、そういった気持ちのほうが強く、今後もより一層、名前に対する知識と愛を増やしていきたいと感じた。
そしてこの検証、すごく楽しかったので、是非ともまたやりたい。
ちょうどいい名前のデータになりそうなサイトも新たに見つけたので、機会があればまた行おうと思う。
その際には今回の経験を活かし、更に回答の正確性を高めていけたらいい。
とはいえ、どんなに知識が増えても、さまざまな名前を知っても、それでもなお想像が及ばない、自分の枠を超えた名前に出会うことができるのが、現代の日本における名前や名付けという文化の面白さであり、魅力だ。
今後も名前の収集・研究を続けていくのはもちろんだが、そのなかでこれからもたくさんの新しい名前と出会えたら、嬉しい。
前回も書いたように、わたしが一生かけても集めきれないような、広くて深い名前の世界が、ずっと自由に続いていくことを願っている。
そんなわけで、今回はここまで。
次に更新する頃には、「凪」というコンビの肩書きはなくなっていると思うが、まあそんなことは関係なく、noteは続けていくつもりだ。
わたしはこの先もだらだら好きなことを書いて自己満足するし、それを一度でも読んでくださる方がいるなら、ありがたい限りである。
それでは、また次回。