「標準レンズ」としての35mmF2.8
「標準レンズ」に括弧をつけたのは、私個人としての、という意味である。以下若干の説明を。
わたしが初めて一眼レフカメラとレンズを買ったのは1984年、新宿西口の某有名店だった。
日芸写真科に在学中の友人に最初に買う機材は何がいいか相談したら勧めてくれたカメラ+レンズをそのまま購入した。
Nikon FG-20 +Ai Nikkor 35mmF2.8Sだった。
当時のNikonはF3がフラッグシップでFM2も人気だった。それぐらいのことは、カメラ及び写真に興味のないわたしでも知っていた。
なぜ上の機材にしたか、プロカメラマン候補のお勧めのポイントは、1)小型軽量で機能は充分、バッテリーがなくなっても1/90sでシャッターが使える。2)35mmは人の視覚とほぼ等しい、などだった。
その年の上海遊学をひかえて記録のためのカメラが必要という購入動機だったからそれでいいと思った。価格はあわせて8万くらいだったと記憶する。
それを使い続けて2006年のデジイチ・Pentax K100Dの購入まで至る。22年間一台のカメラ、一本のレンズですませたわけだ。
おわかりだろう、カメラ写真がとくに好きではなかったわたしに35mmF2.8というレンズが写真の「標準」として焼き付いてしまったのだ。
しかしこのレンズはそのままFG-20とともに長い冬眠に入り、D610が導入されてやっとまた陽光を知ることになる。
(その間にもう1本の35mmF2.8が加わることになったのだが、それについてはまた後日に。)
D610とはほぼ3年間だけのつきあいだった。いま思えば非常に優れたカメラだった。わたしの初めてのフルフレームのデジイチだった。いつも始まりはNikonなのだった。
2014年夏、ナポリの友人がたずねてくれたので妻と三人でBruggeを旅した。その時にD610と一緒にもっていったのがAi Nikkor 35mmF2.8S。今回掲載している写真はすべてその時撮影したものだ。
コントラストといいシャープネスといい充分満足のゆく出来だと撮影者は自画自賛する。
D610を手放した理由は他に欲しいカメラがあったからだ。そして何故かレンズもそのまま再び冬眠に入ってしまった。
たぶんNikon機と一緒でないと働かないということなのか。そういえばその後わたしはZ6もゲットしているのだから、そろそろ冬眠から覚めてもいいころなのだ、わたしの「標準レンズ」よ。