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【解説】アンジェリーナのインタビュー記録「常在」について【アークナイツ】

前置き

以下はアンジェリーナのインタビュー記録「常在」に対する筆者の見解を書き記したものである。

全てについて触れるとキリが無いため、重要なポイントと理解が難しいポイントに絞って解説を行っていきたい。

解説と銘打ってはいるが、筆者個人の解釈が含まれる部分も多く、あくまで考察の一環として受け取っていただければと思う。

また、どうしても宇宙物理学についての用語の説明をする必要があったため簡単な解説を付しているが、筆者は宇宙物理学の専門家でもなんでもない素人なのでその点をご留意いただきたく思う。もし間違いがあればご指摘いただきたい。

ちなみに、このインタビュー記録の時系列はブラックホール協定締結後~「門」の起動実験前である。これを覚えておくと幾分か読みやすくなるかもしれない。

ブラックホール協定については以前の記事で扱っているのでよければこちらもどうぞ。



PART1

サーミにおけるプロジェクトのトランスポーターとして活動していたアンジェリーナは、ある時「到来」と「救難」の啓示を受け、要救助者を探していた。そして探索隊に出会ったアンジェリーナはアーツを行使し、探索隊を襲っていた崩壊体を跡形も無く消滅させた。

彼女がアーツを発動した瞬間、エネルギーの変化も、物質の移動も、時間の経過もなくなった。
「敵」はすべて、跡形もなく消え去ったのだ。

当然ながらただの重力のアーツで崩壊体を消滅させるなど不可能であり、この時アンジェリーナが行使した力はかなり異様なものである。

そしてこの記述から見るに、アンジェリーナのアーツの本質は「特異点の生成」なのではないだろうか。特異点とは宇宙の法則が破綻する領域のことで、非常~~~に噛み砕いて言うのであれば、ブラックホールもその1つであると言える。

道中のストーリーではアンジェリーナが何もない空間から物資を取り出していた。物質の転送といえばやはりワームホールの存在が想起されるが、このワームホールはブラックホール/ホワイトホールの発生に伴って現れるとされている(この点についてはまた後程触れることとする)。このことからもやはり、彼女はブラックホールに類する特異点の生成を行っていると見るのが妥当だろう。

特異点の生成の副産物として重力のアーツが使えるのか、重力のアーツの極致として特異点の生成ができるようになったのかはわからないが、いずれにせよ個人の使用するアーツとしてはあまりに異質な力だと言えるだろう。

ターゲット6-67Cやサンプル1-14Aが何を意味するかはわからないが、「遠見の巨構」エリアから回収されたということらしいので十中八九「門」の修復に関する理論を立証するための検体だろうと思われる。  

ちなみに、クルーニー・カミンスキー効果は完全な造語なのであまり気にしなくても良い。

ライン生命エネルギー課主任、フェルディナンドのフルネームはフェルディナンド・クルーニーだったので、クルーニー・カミンスキー効果は彼が提唱した理論である可能性が高い。(共著のカミンスキーが誰なのかは今のところ不明)



PART2

PART2では巨獣サーミと雪祭司たちの旅立ちが描かれている。

サーミの旅立ちは思わぬ遭遇「変化」においてちらっと触れられていた出来事で、ブラックホール条約締結後の時系列である。

この場面では、アンジェリーナと恐らくサンタラと思われる雪祭司が会話しており、その内容からサーミと雪祭司たちは「サーミの故郷たる場所」へと帰ろうとしていることが伺える。

「この差出人は、サーミフィヨドの手助けが必要であることを認めながらも、私たちが故郷へ帰ることを心から喜んでくれているのね。」

それが具体的にどこなのかは言及されていないが、以下の発言を鑑みるに、「テラではないどこか」が彼らの故郷なのは間違いないだろう。

「君たちはどこへ向かうの?」
「私たちは、祖霊の父の供をせんとする身。歩むべき道は父に選んでいただくわ。」
「それじゃ…..また、会えるかな?」
「ええ、のちろん。テラもまた、祖霊の父の故郷だもの。」

巨獣の中には別の場所からテラにやってきたものが居ることは以前から示唆されていたが、今回それが明確になったことは巨獣という存在の正体を知る上で大きな手掛かりとなるだろう。


PART3

ここから先の内容についてはホワイトホールワームホール、さらにはアルクビエレ・ドライブの概念について理解している必要がある。

ホワイトホールは一般相対性理論(アインシュタイン方程式)において時間の対称性が成り立つという仮定の元現れる解であり、誤解を恐れずに表現するのであれば逆のブラックホールといったところだろうか。

そしてこのホワイトホールとブラックホールを結んだ時空こそがワームホールであり、これもアインシュタイン方程式の存在しうる解の1つである。いくつかの仮定を元にすると、ワームホールの使用によって時間・空間を超越した移動が可能になると考えられている。

アルクビエレ・ドライブは簡単に言えば光速を越えた速度で移動するための理論であり、空間曲率の操作によってこれを実現しようとするアイデアだ。(小説「三体」を読んだ方であれば"曲率推進"という言葉の方が馴染みが深いかもしれない)

通常、宇宙の内側では物体の速度は光速を越えることができないとされている。しかし、宇宙の膨張と収縮だけはこの例外であり、光速を越えることができるとされている。アルクビエレ・ドライブはこの原則の元、空間曲率の操作によってワープ・バブルと呼ばれる歪んだ空間を生成し、人為的に宇宙の膨張と収縮を発生させることで超光速の移動を実現しようというアイデアだ。

このワープバブルにおいて、核となるエンジンはバブルの内側に配置しなければならないにも関わらず、バブルを維持するためにはその外側にエネルギーを発生させる必要がある。極端な時空間の歪みであるワープバブルを無視して外側にエネルギーを発生させることの難しさから、アルクビエレ・ドライブはその実現性に疑問が持たれている。

…とこの辺りのことを覚えておけば、おおよそは話を理解できるだろう。

今回はあくまで素人による簡単な解説に過ぎないので、これらの概念についてより詳しく知りたいドクターは各自で調べていただくことをおすすめする。

問題となるのが先史文明のエンジニアと思われる二人が話し合っているシーンだ。ここからは順を追って見ていくこととする。

「ああ、かつてないほどにね。惑星の自転と公転周期を正確に調整できれば、俺たちが作ったあの二つの門がほかのズレた場所に繋がることもなくなるだろう。」

四号恒星がなんなのか、ということは全く分からないが、ここで重要なのは「門」が意図した挙動を行うためには惑星の自転、公転周期が関係してくるという情報だ。

この「二つの門」がどれのことを指しているかは微妙だが、ともかく本来の「門」の稼働に必要な情報が明かされたことになる。

「あ、でもさ、確かあの実験装置って、外部からの指示がないと動かないんだよな?反転対称性の効果が実用化された成果にしては、曲率演算にしか使えないっていうのはちょっと融通が利かなくないか?」

文脈的に、この「実験装置」とは「門」のことだろう。

反転対称性の効果、というのが具体的にどのようなものかは不明だが、ここでの「対称性」とは恐らく時間/空間反転対称性のことだろう。そして「曲率」は空間曲率のことを指していると思われる。

これは推測になるが、反転対称性というキーワードから鑑みるに、「門」はブラックホールとホワイトホールを二点間に同時生成することでワームホールを開通させているのではないだろうか。

「エンジンを設計した時は、実際に機体内部から外部に影響を与えることは出来ないからって、航路ゲートを作る必要があったんだけど——」

そしてここにおける「エンジン」は先述のアルクビエレ・ドライブを指している可能性が非常に高い。「実際に機体内部から外部へ影響を与えることができない」という文言がアルクビエレ・ドライブにおけるワープ・バブルの性質と一致しているからだ。

ワープエンジンや高エネルギーコアにまつわるものなど、メモリユニットに保存されていた宇宙船のメンテナンス用データは、この大地における過去の栄光の一角をテラの天才たちに垣間見せるには十分なものだ。

インタビュー記録-「使命」

さらに、ケルシーのインタビュー記録では「門」の地下施設にて「ワープエンジン」が登場している。アルクビエレ・ドライブの元ネタ、というか別名がワープ・ドライブなので、この2つは同一のものである可能性が非常に高い。

「門」が先述の「エンジン」の実験施設だったことを考えれば、「エンジン」と「ワープエンジン」は間違いなく同じ言葉であり、この文脈における「エンジン」はアルクビエレ・ドライブを意味していることはほぼ確実だろう。(空間曲率の話をわざわざ持ち出しているのも根拠になりうるかもしれない。)

また先程、「門」はブラックホールを生成しているのではないかと述べたが、そう考えると「門」がアルクビエレ・ドライブの為の実験施設であるという話にも納得がいく。

アルクビエレ・ドライブにおけるワープ・バブルの生成のためには空間曲率を操作することが必要になるが、ブラックホールは極大の質量によって大きく空間曲率を捻じ曲げるためその役割を果たすことができる。

そうするとこの一連のシーンはブラックホール技術とその実用化としての「門」、ワープエンジンの進捗状況に関する会話であると捉えることができよう。


さて、次は最も謎な一文について見ていこう。

「つまり、いつかその効果を、人の意志と選択だけで実現できるようになったら――」

これは言い換えると「(少なくとも現在は)人の意志と選択では効果を実現できない」ということだ。この一文だけで断言することは不可能だが、効果=反転対称性効果だと仮定するなら、これは「"なんらかの外部要因"によって反転対称性効果に関する実験の結果が左右される」のだと解釈できる。

そして、私は以前「門」の接続が成功するかどうかは観測者による観測の有無が影響していると考察したが、「門」が反転対称性効果の実用化による成果である以上、ここにおける"なんらかの外部要因"とは"観測者の存在"だと考えられる。

先述の解説の通り時間対称性の成立こそがホワイトホール、ワームホールの存在要件だったため、対称性の成立の可否が「門」の起動実験の結果を左右してしまうことは当然と言えば当然である。

とはいえ、ここでの考察の根拠はたった一行の文章であり、いくらこれまでの背景があるとはいえ、これが正しいかどうかはかなり怪しいところだ。先程までのホワイトホールやアルクビエレ・ドライブに関する推測はそれなりに確度が高そうだと自負しているが、正直ここについては半ばこじつけなのであまり信用しないで欲しい。


補足:アンジェリーナの能力について

PART1の項目にて、アンジェリーナのアーツの本質は「特異点の生成」ではないかと述べた。しかし、これは彼女の「アーツの本質」であり、能力の本質ではない可能性がある。

というのも、各PARTにはそれぞれ1回ずつ、能力の行使時に「あたし(自分)ならできる!」というセリフが登場している。

——あたしならできる!
彼女がアーツを発動した瞬間、エネルギーの変化も、物質の移動も、時間の経過もなくなった。

「自分ならできる」という考えが生まれた瞬間には、エネルギーの変化も、物質の移動も、時間の経過もなかった。

「あたしならできる。」少女は密かにそう思い、自ら解決を買って出た。

特に二番目の文章を見ると、アンジェリーナの能力の本質は限定的な現実改変にあるのではないだろうかと推測せざるを得ない。

ただし、重力のアーツに起因する特異点の生成の結果として現実改変が発生しているのか、あるいは現実改変の力によって自身に重力のアーツを付与している(「自分は重力のアーツが使える」という思い込みによって実際に使えるようになっている)のかはわからない。

アークナイツにおいて、というよりかはサーミローグライクにおいては重要なキーワードはテキストの中で繰り返し用いられる傾向にある。深読みしすぎかもしれないが、短いインタビュー記録の中でこれだけ繰り返されている以上、「あたしならできる」という文には何らかの意味があるような気がしてしまう。


啓示について

今回のインタビュー記録では、アンジェリーナが受け取った「到来」と「救難」以外にも、それぞれのPARTにサーミからの啓示の文章(暗号文)が隠されている。

それぞれの啓示の意味はその場面に対応したものになっているので特段深い意図は無いと思われるが、一応各暗号文の意味をここに記しておく。

『山河を越えてついに至らば、定数はもはや避けられぬ』
『角笛の甲高き音が天を震わせ、孤樹が集いて森となる』

「到来」
「救難」

『姿と声はもはや遠のけど、変数はいまだ明かされぬ』
『籠に満ちたる食料とかめに満ちたる水ありて、それより他に何を求めん』

「出立」
「満足」
なぜか持っていませんでした)

『地の篝火が白昼の光を借り、厳冬の夜を照らさん』
『魂は夢を漂いて、風雪の中に其を一瞥す』

「光芒」
「憧れ」




あとがたり

今回のインタビュー記録はサーミローグ最後の更新ということもあり、それに相応しい内容となっていた。

とはいえ、特にPART3などはやや難解にすぎると感じざるを得ない。直接的に言及せず、仄めかす程度にしているからこそ謎がより魅力的になる、という側面もあるため一概には言えないが、普通にサーミローグを読み進めているだけだと何を言っているのかほとんど理解できないのではないか…と思ってしまう。(かくいう私もそんなに分かっていないのだが)

とはいえ、これである程度タロIIにおける"アンジェリーナ"の物語への導線は確保されたと言える。あとは来年に控えるエンドフィールドを座して待つのみだ。


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