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アンプティサッカーの必見プレー 技術や駆け引き、削り合い

主に切断障害者がプレーする、アンプティサッカーをご存じですか?

5月18、19日に大阪市でアンプティサッカーの国内2大会のうちの一つ、第六回レオピン杯が開かれます。

2018年のこの大会と、同年11月にあった「日本アンプティサッカー選手権」で大会プログラムに寄稿する機会をいただきました。

アンプティサッカーについて興味を持つ人が少しでも増えますように、2018年11月の寄稿文を転載します。

私は福岡を中心に九州をカバーする新聞社の記者です。FC九州バイラオールの誕生をきっかけにアンプティサッカーの取材に関わり、競技の魅力にどっぷりとはまって九州以外のクラブについても興味を持つようになりました。細く長く取材を続けたご縁で、寄稿の機会をいただきました。

私にとってアンプティは、単なる取材対象を超えています。関係者とは違う立場で、競技の発展と普及を願っています。アンプティに片思いしており、友達以上、恋人未満というところでしょうか。

日本選手権にご来場いただき、このページまで目を通していただいている、そんな貴方は既にかなりのアンプティサッカー通だと存じます。少しマニアックな視点で、アンプティを楽しめるポイントを私なりにお伝えします。

①体験すると分かるプレーの難しさ

クラッチで体を支えながら片足でトラップして、正確にキックする。私のようなサッカー未経験者にはこれだけで至難の業です。クラッチで移動するだけでも体力を激しく消耗します。簡単そうに足の裏でトラップしてパスを出したり、大きな歩幅で猛スピードで走ったり、細かい足さばきでドリブルしたり。選手たちは超人に見えます。

アンプティを体験したサッカーの元日本代表や、長く活躍した元Jリーガーも「選手達はアスリートだ」と舌を巻いていました。クラッチ未体験の方はぜひ、大会やイベント、クラブ主催などの体験会にご参加下さい。

②片足かつクラッチを使うプレーの制約

フィールドプレーヤーは片足なので、ボールを置く位置によってはキックのコースが限定されます。守備の選手に読まれやすいので、アウトサイドやトーキックを巧みに使う選手もいます。

また、故意にクラッチをボールに当てるとハンドの反則となるため、横からのパスを受ける場合はクラッチの位置や体の向きを工夫して受けています。前からのパスやこぼれ球など、体の正面から流れてくるボールは、クラッチが邪魔になりにくいので絶好のシュートチャンスです。

③切断した側の足の長さがプレーに影響

切断した側(プレーに使えない側)の足が長いほど体重が重くなり、ポストプレーヤーなど体の強さを生かす選手が多い印象です。足が短く体が軽い選手にはスピードタイプ、ドリブラーが多い気がします。

足の長いある選手は「ジャンピングボレーの後で、足を着地でクッションにできる」と教えてくれました。「切断した側の足が長い方が強いシュートを打てる」という話も複数の選手から聞きました。理論的に正しければ、逆に足が短いのに強いシュートを打てる選手は優れている、という見方もできます。足が長いのにスピードが速い選手もすごいです。

④GKが切断した側をいかに守るか

GKの切断した腕の側をグラウンダーや高いコースに狙って決めるというゴールが数多く生まれました。弱点をいかにカバーするか。DFにコースを切ってもらったり、足を使って防いだり。あるGKは「うまい選手はポジジョニングで逆側を防ぐ」と語っています。GKのポジションやコーチングに注目を。

⑤GKの足元の技術

7人のプレーヤーのうち唯一両足が使えるため、バックパスを受ける機会が多いです。狭いペナルティエリアを出ずにいかにボールを受けるか。トップクラスのGKはいずれも足元の技術があり、相手選手からプレッシャーを受けても巧みに処理します。

フィード一発でチャンスになることもあり、GKは攻撃面でも重要なポジションです。グラウンダーか浮き球かなど、キックの質にも目を凝らしてください。

⑥ファウルをめぐる判定

アンプティは身体接触が当たり前のスポーツです。特に上級者同士だとけがの確率が低くなるため、接触プレーで選手が倒れてもレフェリーが流す場面が多い気がしています。ファウルをもらうプレーにたけた選手や、アピールする選手もいます。

日本選手権の決勝で、覚悟のうえで相手を後ろから止めてレッドカードが出たこともありました。けがをさせるような危険なファウルはもってのほかですが、真剣勝負である以上、故意のファウルや駆け引きも見どころです。

⑦プレーヤーたちの表情

体験すると分かるのですが、20分ハーフや25分ハーフをクラッチを使って片足でプレーする。尋常ではないきつさです。トップレベルの試合になると、健康的というよりも体を削る激しいスポーツという印象です。けがのため引退した選手もいます。

にもかかわらず、高齢の選手も含め、歯を食いしばって走り、体をぶつけあい、ボールへ体を投げ出します。もしお時間が許せば、閉会式前後の選手達のすがすがしい表情を見て下さい。
 
なにがそこまでさせるのか。勝利、優勝、代表入り…目標達成も大きな果実です。ただ、それ以上に競技や試合そのものが選手たちの魅力になっているのでは、と感じています。一部の声を紹介します。

「アンプティを始めて、切断した足を恥ずかしいと思わなくなった」

「義足を着けずに職場に行けるようになった」

「切断して1度は諦めた、真剣勝負の場にまた戻って来れるなんて」

観戦する皆様の存在や声援も、選手たちの大きな喜びです。会場で一番の声援を受けたのちに「足を無くしてよかった」とさえ語った選手もいました。選手にそこまで言わせてしまうアンプティの魅力を、貴方もぜひ口コミやSNSで発信してください。会場に足を運んだり、動画中継を見たりする人を1人でも増やしてください。

同志の皆さん、共にアンプティを盛り上げましょう。

私の過去のアンプティサッカー記事はウエブ上に公開しております。

https://smieno.blogspot.com/2018/11/blog-post_16.html


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