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パレスチナ刺繍
文:マリカ(元UNRWA音楽教師)
ヨルダンにあるパレスチナ難民キャンプの学校で働いていたとき、何人かの生徒さんが度々お家に招いてくれました。彼らは日本人である私に料理をふるまいながら、彼らの祖国、つまりパレスチナの文化についてよく話をしました。そんな中、あるお家で大変美しいパレスチナ刺繍のショールを見る機会がありました。
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「お母さんが縫った」のだというその刺繍は、黒の地に赤い糸で一針一針縫われており、見事な幾何学模様の中に、何かとても力強い意志のようなものを感じました。すっかり魅了され、その写真はしばらくの間、私のPCのデスクトップ画面を飾りました。
戦争は全てを破壊しますが、人々が営みを続ける限り、文化は生き続ける…パレスチナの文化が今も確かに生き続けているのだということを、この目で見てきました。日々の報道を前に無力感でいっぱいですが、「知ろうとすること」「知らせること」が今自分に唯一できることだと思っています。