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医者の頭の中をのぞく!皮膚科の薬シリーズ ①抗ヒスタミン薬


抗ヒスタミン薬は、その名の通りヒスタミンをブロックする薬です。
そもそもヒスタミンとは?
ヒスタミンはケミカルメディエイターと呼ばれる細胞どうしの情報伝達をになう物質のひとつで、アレルギー症状を引き起こします。

簡単にいうと、
「アレルギーが起こったことを体に知らせる物質」です!

アレルギー物質が体内に入ってくると、それに対応するIgE抗体が肥満細胞にくっつきます。そして肥満細胞が活性化してヒスタミンが放出されます。
またヒスタミンを多く含む魚などの食材を摂取して、同じような反応が起こることもあります。

ヒスタミンが放出されると

・血管透過性の亢進→じんましん
・血管拡張物質の放出→発赤、血圧低下
・気管支平滑筋の収縮→喘息発作、呼吸困難
・消化管の収縮→腹痛
などの反応が目に見える形で起こすことによって
「体に異常事態が起こっているよ〜!気をつけて〜!」
と知らせてくれるわけです。

抗ヒスタミン薬について
放出されたヒスタミンがさまざまな反応を起こすには、ヒスタミン受容体というものに結合しなくてはいけません。
鍵と鍵穴の関係で、バッチリはまれば反応が起こるという仕組みです。ヒスタミンが鍵。ヒスタミン受容体が鍵穴です。

細かい話をするとヒスタミンの受容体はH1-H4までありますが、実臨床で多く使用されるのはH1とH2の阻害薬です。
H1にヒスタミンがはまりこむと、先ほど説明したようなアレルギー反応が起こり、
H2にはまりこむと、胃酸の分泌が促進されます。H2阻害薬は主に胃潰瘍などの胃薬として使用されます。

一般に抗ヒスタミン薬といえば、アレルギー反応を抑制するH1阻害薬のことをさします。
ここではH1阻害薬について説明します。

抗ヒスタミン薬は古くからある薬ですが、眠気の副作用が強いタイプもあり改良が加えられてきていて、今では非常にたくさんの種類があります。
開発された順に第一世代、第二世代と分けられたりもします。

一般的には
第一世代は即効性が高いが、副作用として眠気が強く、口の渇きを起こしやすいと言われています。また前立腺肥大や緑内障を悪化させる可能性もあります。
第二世代はより持続性が高くなり、眠気などの副作用が軽減されたタイプになります。

第一世代は中枢神経(脳)への移行率が高く、眠気や鎮静作用が高くなります。一方、第二世代は脳内への移行率が改善されています。

よく使われる薬の一覧です。
先発名(一般名)
・第一世代の抗ヒスタミン薬
ポララミン(クロルフェニラミン)
アタラックスP(ヒドロキシジン)
ペリアクチン(シプロヘプタジン)
レスタミン(ジフェンヒドラミン)

第二世代の抗ヒスタミン薬
1日2回内服
タリオン(ベポタスチン)
アレグラ(フェキソフェナジン)
アレロック(オロパタジン)

1日1回内服
ビラノア(ビラスチン)
デザレックス(デスロラタジン)
ルパフィン(ルパタジン)
アレジオン(エピナスチン)
エバステル(エバスチン)
クラリチン(ロラタジン)
ジルテック(セチリジン)
ザイザル(レボセチリジン)

🧠医者の頭の中


・実際の使用について
基本的には第二世代をメインで使います。
ただし蕁麻疹などの急性症状を速やかに抑えたい場合には、即効性を期待して第一世代を使用することもよくあります。

眠気が出るかどうかは、人によって本当にさまざまです。第一世代の中でも鎮静や眠気の作用が強いものも全く眠くならない人もいますし、第二世代でも眠気の注意がないものでもウトウトしてしまうという方はいらっしゃいます。
ですから、万人ウケする第二世代を最初に使用して効果が乏しければ変更したり、もう1剤追加するか倍量にして経過をみます。

眠気の副作用については、添付文書で
車などの運転が制限されている薬もありますので以下にまとめます。
1.運転の制限が無いもの
アレグラ、クラリチン、ビラノア、デザレックス
※個人的には「ア、ク、ビ、デない」の語呂で覚えています。
2.運転に注意が必要なもの
タリオン、アレジオン、エバステル
3.自動車の運転は避けるもの
アレロック、ジルテック、ザイザル、ルパフィン

また上記の副作用以外にも肝機能や腎機能障害があると使いにくい薬剤などに気を付けつつ

効果の強さについては、諸説ありますが確定的なものはなく、人によっても効果が異なります。そのため経験的になんとなくこれは強い、弱いという感じで使われています。

私の中では経験的に強い順に並べて
1.アレロック、ポララミン
2.ビラノア、ザイザル、ジルテック、ルパフィン
3.タリオン、アレジオン、エバステル
4.アレグラ、デザレックス、クラリチン

STEP① 症状に対する効果が適切か判断
1-4を強さのイメージとして調節して使い分けています。重症度や緊急度が高ければ即効性の高い1を使用したり、慢性で過去に眠気が出たことがあれば4を選んだりします。効かない場合は効果の強いものに変更します。

STEP② 飲めそうか判断
薬は飲んでもらわないことにははじまりませんので、患者さんの生活スタイルに合わせて1日1回なのか2回なのかを選択します。
症状の出る時間、服薬の状況(飲み忘れが多い、外出時に飲みたいなと)に応じて検討します。薬の量を調整したい方には1日2回の薬を使用をします。

STEP③ 副作用の選択
最後に副作用が大丈夫そうか再確認します。
緑内障や前立腺肥大の既往の方には第一世代は使用しないようにします。
そして問題になりやすい眠気の副作用を考えます。眠気が出そうな薬であれば眠前の服用にしたりしますが、翌日の朝まで眠気が残る場合もあり患者さんと相談しながら適宜変更します。

私の中では、このような流れでどの薬を処方するかを決めています。

もっと具体的に使用する薬についてお話しします。
ファーストでの処方が多いのは効果も高く眠気の副作用のないビラノアです。起床時か眠前などの空腹時に内服する薬です。食後だと血中濃度が上がらず効果は半分になってしまいます。最近はOD錠(水なしで口の中で溶ける)も発売されてどこでも飲みやすいし、味もライム味でスッキリしていて美味しいです。
ただ、やはりネックになるのが空腹時に飲む必要があることです。普段他の薬も一緒に飲んでいる方にとっては、多くが食後の内服指定のためどうしても飲みにくくなってしまい飲み忘れも発生します。

他の薬の飲み方にあわせて朝夕食後にアレグラやタリオンを処方しています。
アレグラも食前内服の方が血中濃度が高くなるため食後内服よりよく効くと言われていますが、飲み方が複雑になってしまうため、あえて食後で処方しています。

他にもよく使うのが1日1回の眠前にザイザルです。
ジルテック(セチリジン)を進化させ副作用を軽減させたものがザイザル(レボセチリジン)です。ザイザルは眠気が出る方もいるので日中に内服するよりも眠前の方が安心です。中にはザイザルを飲み始めてから、眠剤を飲まなくても寝付きが良くなったという方もいます。ただし透析など重度の腎障害では禁忌になるため注意が必要です。なお腎障害にはアレジオンを使います。
ルパフィンは世間的にはアレロックと同じくらいよく効くと言われていますが、私としてはそれほどでもないという印象です。ただ抗PAF作用という鼻水や鼻詰まりを抑える効果があるので鼻症状もある際は使用します。
ルパフィンは代謝によってデスロラタジン(デザレックスの主成分)へと代謝されます。
またクラリチン(ロラタジン)も同様に代謝されるとデスロラタジンになります。いずれも代謝されてデスロラタジンとなるためデザレックス(デスロラタジン)の方が他の薬剤の影響が少なく効果が安定していると考えています。

小児への投与については、薬によって年齢制限があり投与間違いなどを防ぐためになるべく全年齢に使える薬を選ぶ方が安心です。
そこで6ヶ月から使用できるザイザル、アレグラが選ばれることが多いです。
頻度不明ですが、ザジテン(ケトチフェン)は副作用にけいれんの記載があるため熱性けいれんのお子さんは避けた方が無難でしょう。ただシロップは甘く飲ませさやすい剤型になっており効き目がよいこともあり頓用としては使い勝手がよいです。

年齢
ザイザル、アレグラ、ザジテンは6ヶ月から
アレロック、ジルテックは2歳から
アレジオン、クラリチンは3歳から
タリオンは7歳から
デザレックス、ルパフィンは12歳から
ビラノア、エバステルは15歳から

となっています。

妊娠中の方への投与は原則行わない方が無難です。しかし、症状がひどくどうしても必要な場合に使用します。
昔からある薬は安全に使用できることが経験的にわかっているので、ポララミン、レスタミン、クラリチンやアレグラがよく使われます。
もちろん100%なにもないとは言えませんので我慢できるなら基本は使わないことを推奨します。

私は抗ヒスタミン薬はこのような基準で選んでいます。ご参考になりますと幸いです。


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