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輝美
ショートショート:恋愛
《あらすじ》
七月七日、七夕の日。
主人公・美来(みらい)は交際期間二年になる彼氏、一輝(いつき)の誕生日を祝う為、料理やプレゼントを用意し彼を出迎えることに。
誕生日という一つの節目を迎える一輝は美来から自分に向けられるたくさんの愛に涙してしまう───。
恋人の大切な日を精一杯祝いたい美来、その愛情を実感し嬉しさで涙を流す一輝。
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《本編》
七月七日、日曜日。
世間ではこの日を【七夕】と言うだろう。
織姫と彦星が年に一度、愛を交わせる素敵な日。
しかし私にとっては一年に一度しかない大切な日。
それは────
『ただいま〜』
ガチャっと玄関が開く音そして大好きな人の声が聞こえ、私は一目散に駆け寄る。
「一輝くんおかえりー!」
『美来会いたかったで〜!』
靴を脱いで抱きしめてくれる。
「一輝くんお誕生日おめでとう!」
そう、付き合って二年になる彼氏、一輝くんのお誕生日。
大好きな彼の手を引き、リビングへと向かう。
『わー!なにこれ凄いな!?』
テーブルに目を向けキラキラさせている一輝くんの目の前にはこの日の為に準備してきた渾身の飾り付けとテーブルの上には腕によりをかけた料理が並んでいる。
『この料理、全部美来が作ってくれたん?』
「うん!一輝くんの好きなやついっぱい作ったんだー!」
『めっちゃ美味しそうなんやけど!』
「へへっ、自信作なんだ〜!食べよ食べよ!」
『せやな!せっかく美来が作ってくれたんやし食べよか!』
『これ全部美味しいな!流石僕の自慢の彼女やわ』
「ほんと!?ありがと!」
(上手くできるか不安だったけど喜んでもらえたみたいで良かった…)
今日は誕生日なのもあって少し豪華なものを作っていた。
一輝くんが好きなお肉を使ったミートローフにローストビーフ。
副菜には海老とブロッコリーを使ったカクテルサラダ。
彩も必要だろうと思い、小さいカップに入れたトマトとモッツァレラチーズのカプレーゼ。
デザートには苺をふんだんに使ったサイダーゼリー。
ご飯も食べ、一輝くんにプレゼントを渡す時がやってきた。
「一輝くん!」
『ん?どした〜?』
「これ、プレゼント!」
はいっ、と隣に座っている彼にプレゼントが入った紺色に金のリボンが巻かれた袋を渡す。
『えっ、僕にくれるん!?ありがとう!』
なんやろーと目を子供のようにキラキラさせながら袋を開ける。
『これって……』
袋の中を見て涙目になる一輝くん。
「頑張って作ったんだ」
私が渡したプレゼントの中はお互いのイニシャルが付いた手作りのアンクレット。
『めっちゃ嬉しい……。ほんまありがとう、美来に出逢えて良かった。』
プレゼントが入っている袋片手に私を抱きしめる一輝くん。
「あ、あのね一輝くん。実はプレゼントもう一つあって…」
『え!?まだ用意してくれてんの!』
「うん!ちょっと待ってて」
押入れから小さな箱を取り出す。
「はいこれ!」
『今度はなんやろ〜』
少し赤くなって腫れている目を擦りながら綺麗にラッピングされた《Happy Birthday》というメッセージカード付きの白い箱を開ける。
『これお花?めっちゃ綺麗……。なんて言うお花なん?』
二つ目のプレゼントは誕生花の造花で作ったバレッタだ。
「クチナシっていうお花だよ」
『聞いたことあるやつや〜!でもなんでこの花なん?』
「今はまだ内緒〜!ヒントは花言葉」
『なんやろか…。後で調べてみるな!』
どんな言葉なんやろか〜とアンクレットとバレッタを両手に持ち、嬉しそうに鼻歌を歌いながら思い出の写真立てが置いてある棚に飾る彼の姿が微笑ましく感じる。
『なぁ、美来。』
「ん?どうしたの?」
『僕と出逢ってくれてありがとう、僕を好きになってくれてありがとう、僕の彼女になってくれてありがとう。』
愛してんで
そう言って私の頭を撫でながらキスをする。
「私も愛してるよ」
七月七日の日曜日。
私は今日、世界で一番大好きな人の傍にいられてとても幸せ者だ。
今もこれから先もこの人を愛し続けると誓った。