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支援学級の友達と図書室に通った3年間
「いろはちゃん何してるの?」
「え。勉強。」
「勉強楽しいの?」
「楽しいよ〜」
「何が楽しいの?」
「えー、最近は化学反応式とか考えてると楽しいよ〜。」
「面白くないから!ねえ図書室行く?」
「えー、まあいいよ。行くか。」
毎日図書室に誘ってくる彼女は支援学級に通う友達だ。
念のため補足しておくと、この学級は軽度の発達障害の生徒のためのもので、普通学級の学習内容とは異なる。授業の内容を聞いてみると、中1の時小2の内容だった。
この日はSDGsコーナーのマララの伝記が目についた。
「あ、マララだ。一回読んでみたいな。」
「読めば?」
「でも今日は絵本読むんでしょ?」
「別に読まなくてもいいよ。」
「いや私はいつでも勝手に読んでるから。絵本いっぱいあるよー、どれがいい?」
「別にどれでもいいよ。」
少しふてくされていた。彼女がふてくされるタイミングは、いつも分からない。
面白そうだった雪の結晶の絵本を選び、並んで座った。この学校の図書室は、広くはないけど落ち着いていて誰もおらず、私たちの最高の場所だった。
私は一文一文、少しでも面白く読み上げる。彼女はどの一文にも笑ってくれた。
この頃はあまり意識していなかったけど、これほど恵まれた、幸せな時間は無かったと思う。
何の気を使うこともなく、ただ楽しいからそこにいる、貴重な時間だった。
彼女は周りからいじめられることも多く、よく怒りながら、「今日男子がさあ」、とこぼしていることもあった。
彼女の笑顔は、授業中や男子と関わるような時にはみられない。普段は無愛想で、変な奴だと思われるのも無理はないかもしれない。
私は彼女と似てるから、気持ちがよく分かる。嫌いな人の前で笑いたくないのだ。
しかし、私の前では笑ってくれた。
私も彼女が好きだ。
彼女の日々がどんなに辛かったとしても、見方で、安心できる存在でありたい。