見出し画像

張り替え依頼できた修理が必要な椅子。主な症状5選!!

いきなりですが、「椅子を思い浮かべてみてください」と言われたらどんな椅子が浮かんできますか?

木や金属のフレームにクッション部分が取り付けられたものをイメージされる方が多いのではないでしょうか。

例えばこんなイメージ

これらの椅子、まずどこからダメ(傷んでくる)になってくるかわかりますか?

そうです、ほぼ確実にクッション部分が傷んできます。

どんな椅子でもクッション部分はフレームよりも早く劣化が進むんです。

「フレームはなんともないんだけど、座るところがビリビリで・・・」
「クッションがヘタって座布団敷いて座ってるんだよね・・・」
「まだ座れるんだけど、表面がひび割れて粉が落ちてきて掃除が大変・・・」

という悩みを持って問い合わせをしてくる方がたくさんいます。

これを読んでくれている方も、どこかでそんな状態の椅子を見かけたことがあるんじゃないでしょうか。

今回は僕の工房に持ち込まれた椅子の中から、実際の劣化具合を撮った写真を見ながら紹介したいと思います。

どんな劣化が起こるのか、劣化の原因はなんなのか、修理はできるのかも合わせて書いていこうかと思いますので、身近にある椅子と照らし合わせてご覧いただけたらと思います。

症状①:ひび割れからの裂け

合皮で張られていた座面の全体にひび割れと裂け目が。
本革で張られていた座面がひび割れて穴が空いています。

まずは、張り替え依頼で一番多い状態でもある「表面のひび割れ」です。

合皮や本革で張られている椅子によく出る症状です。

原因

合皮の場合は、生地の表面に使用されているポリウレタンと水分が加水分解という化学反応を起こすことで生じる症状です。

加水分解によって表面がベタベタしてきたり、硬くなってきたりしてひび割れが始まります。

他にも陽がよく当たる場所に置いてあると紫外線に晒されて劣化が早まることがあります。
(人間の日焼けと一緒ですが、人間みたいに元に戻ることはありませんよね。)

本革の場合は、乾燥して油分が失われていくことで伸縮性が落ち表面に小さな亀裂が入ります。

合皮の場合と同様に紫外線での劣化もあります。

対策

空気中の水分や人間の汗にも反応してしまうので、現状では劣化の発生を止めることは出来ないと言われています。
(そこは諦めるしかないのね・・・。)

ただ出来るだけ劣化の進行を遅らせることはできます。

濡れた布で拭いたりしたら、最後に乾拭きで水分を取ってあげる。

汚れが蓄積しないようにこまめに掃除をするなどをすることで何もしないよりは劣化を緩やかにすることができます。

本革の場合は、合皮と違いオイルやクリームが浸透する素材なので革に油分を含ませるなどの手入れをしてあげると劣化のスピードを抑えることができます。

人間の肌と同じで乾燥したらクリームを塗って潤いを保つといった感じです。

症状②:表面の剥離

表面の樹脂部分だけがめくれています。

原因

こちらの症状もひび割れの時と同じ原因なんですが、僕個人の感覚で言うと比較的質の低い合皮で起こる現象のような気がしています。
(*あくまで個人の感想ですが。)

表面の樹脂部分とベースの下地生地がしっかり接着されていなかったり、そもそも生地が薄い(表面の樹脂部分が薄い)と言う印象があります。

この状態になった椅子の問い合わせを受けて、使用年数を聞くと2〜3年と比較的早い段階でこのような症状になっていることが多い気がします。

使用頻度や環境にもよるので一概には言えませんが、これまで手に取ってきた感覚ではそう感じます。

対策

上記のひび割れの対策とほぼ同じです。

症状③:布地の裂け

生地が裂けて中身が見えてしまっています。

原因

布地の場合は、座るときや座りながら動く時の擦れで生地が薄くなり破れてくることが原因となります。

厳密に言うと生地は糸が織り重なってできているので、糸が切れて織り目が荒くなりさらに周辺の糸に負荷がかかり穴が広がっていくと考えています。

こちらも化学繊維が使用されていることが多いので、水分や熱、紫外線の影響を受けて糸が硬くなったり耐久性が落ちたりして生地が薄く裂ける要因となります。

椅子の前側によく見られる状態なので、確かに座面の前部分は一番負荷がかかりそうな場所ですよね。

対策

あまり現実的ではないかもしれませんし、せっかくお気に入りの椅子を買ったのにとなるかもしれませんが、座面の上に何かを敷いて座ると言う対策があります。

物理的に生地に触れないようにすることで座面の生地への負荷を減らし陽の光も当たりにくくなるので劣化の速さは緩やかになります。

現に張り替えをした後、その上にカバーをかけて使っているという方もいました。

せっかく選んだ生地で張り替えしたのにな・・・と思いながらも、長く良い状態で使うための工夫だなと思ったことがあります。

症状④:クッション材のヘタリ

クッションが潰れて戻らない状態になってしまっています。
ウレタンの劣化が進んで粉状に崩れてきてしまっています。

原因

クッション材として用いられる素材はウレタンフォームと言うスポンジのようなものです。

このウレタンは液体状の樹脂を発泡させて固めることでクッションなどで整形加工できるように作られます。

なので中身は空気の穴がたくさん存在していて、これがクッションの役割を果たしています。

長く使っているとこの空気の穴が潰れていき元に戻る力が弱くなっていくのでクッションがへたっていくといった劣化に繋がります。

元の状態に戻らなくなるといったイメージでしょうか。

また、写真のようにボロボロと崩れて粉状に劣化することもあります。

これも度々出てくる加水分解による症状でもあります。

経験上、比較的布で張られている椅子に多く見られる症状かなと思います。空気や人間の汗が通りやすい布は劣化が早いのも少し納得がいく気もしますね。

対策

クッション材に関しては対策という対策はあまりないので、あまり気にしすぎず使っていただくのが一番かと思います。

ただソファなどの座る場所が広い場合は、座る場所を1箇所に集中させずに分散させることで全体のヘタリは緩やかになるかと思います。

でも実際はお気に入りの場所に座りたくなりますよね。
(ソファの端っことか隅っことか。)

番外編:裏張りが崩れる

裏張りの生地が崩れてほぼなくなってしまっています。

これも地味に多い問い合わせ内容です。

椅子の裏ってあまり見る機会がないかと思いますが、黒やグレーの生地で座面の裏面が覆われているものが多いんじゃないでしょうか。

これは生地を留めた部分を隠してキレイにする目的で張られています。

この生地が質の低い不織布の場合に起こる症状が、ボロボロと崩れ落ちてくるといったものなんです。

原因

化学繊維を接着剤で固めてシート状にしていることから、こちらも空気中の水分と反応して加水分解が進むことが原因かと思われます。

対策

こちらも残念ですが対策という対策はないのが現状です。

まとめ

今回はこれまでご依頼を受けた椅子の写真を元に、どんな劣化があるのかを紹介させていただきました。

紹介した写真の椅子やソファはしっかり張り替えをしてお客さんの元に戻っています。

原因と対策をそれぞれ解説させていただきましたが、修理の方法はどれも張り替えという選択肢になってしまうかと思います。

ひび割れ程度でしたら、表面の塗装というリペア方法もあります。
(こちらもなかなかニッチな世界だと思います。)

最終的には紹介したような状態になることを事前に知って、今できる対策をとって少しでも大切な家具が良い状態でキープできるようになると嬉しいです。

また追加の情報があったり、訂正する内容があれば紹介していきたいと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。


いいなと思ったら応援しよう!