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REVOLVER ② / The Beatles

タイトルの写真はランアウト・グルーブ(デッドワックス)付近に刻まれた”Tomorrow never knows / Remix-11(マトリクス1)"の実際の画像です。
アルバム「REVOLVER(リボルバー)」の盤の初盤からの見分け方は簡単です。まず、レーベルがプレス時期によって、1966年内にも順番があります。B面「ドクター・ロバート」のレーベル印刷の違いが顕著なので、どの順番でプレスされたのかが判明しています。
レーベル変遷 Ⅰ ⇒ Ⅱ ⇒ Ⅲ ⇒ Ⅳ

Ⅰ.ブロック体で(DR.ROBERT)
Ⅱ.ブロック体で(DOCTOR ROBERT)
Ⅲ.ローマン体で(DR.ROBERT) 
Ⅳ.ローマン体で(DOCTOR ROBERT)

ビートルズ:リボルバー モノラル UKオリジナル 
リボルバーのMonoアルバムが3種類揃いました。side2のマト-1.-2.-3.です。

Ⅰ.PMC 7009 Mono
① XEX 605-2  / ②XEX 606-1 (Remix11) 写真ご参照
マザー、スタンパー  ①1- A ②2-RL の初期盤。
・B-4は「DR.Robert」表記。
・ジャケットは「Ernest.J.Day」製。
・Yellow & Black レーベル(通称 Y&B)
・リムのコピーは「THE GRAMOPHONE CO LTD~」で始まるタイプ。
・スピンドル・ホールの上に「SOLD IN U.K.~」というセントラル・リマー クが記載されている。

A面のマザ・スタンパが「1-A」。だが以前「ラバーソウル」の「1-G」盤でエライ目にあったので、再生するまではぬか喜びにならぬようにと。見た目は傷も多々あり、初見ではあまりきれいな盤面とは言い難い・・・。
が、杞憂でとても素晴らしい音でした。両面にチリパチノイズはあるが、全体的にローノイズで許容範囲。一番懸念した針飛びも皆無。両面とも音溝がきれいでした。ジェフ・エメリック渾身の音造りで、これが彼の作りたかった音だと理解できるくらいです。彼の言う「"リボルバー"はモノラルで聴け!」という気持ちがよくわかります。落ち着いて彼らの曲に没頭できる時間が持てました。これまで聴いたことがない至高の「リボルバー」でした。

以前から、「リボルバー」は楽器が詰まりすぎて録音マイクを近づけたり、ギターのディストーションやジョンのボーカルにフランジャーをかけたせいで、全体的に暗く重たく、グシャグシャな音の印象がありました。加えて古い音溝が荒れ気味で、一層音が割れて「シーセッド・シーセッド」なんて聴けたもんじゃなかった。

 ところが、この「1-A」盤は、楽器間の分離が良いのです。ラウド気味なのに、はっきりと楽器とボーカルが分かれて聴こえる。冒頭のジョージのカウントもその背後のチューニングや咳払いも鮮明だし、そこからのポールのベースがブンブン唸りだして存在感を主張しだす。間奏のギターソロも一層輝きを増す感じなのです。”エリナーリグビー"の弦楽や"オンリースリーピング"の逆回転のギターもしかり、"ラブユートゥ"のシタールやタンブーラの色気のある音。楽器そのものが唄っているようです。B面も音溝が荒れていないので、"グッディサンシャイン"の冒頭のピアノの打鍵からして違って聴こえるし、"イントゥマイライフ"のブラス隊も心地よい。全体的にギターの歪もオーバードライブっぽくて良い感じです。楽器の聞こえが良いと曲自体もイキイキと別物みたいに聴こえるのが不思議ですね。

Ⅱ.PMC 7009 Mono
1.XEX 605 - 2 / XEX 606 - 1  ①1-GO ②3-GA "remix11"
俗にいう"トゥモローネヴァーノウズ"の別ミックス"Remix11"がミックスされているものの2枚目。ところが、これはノイズの激しい盤で針飛びが3ヶ所もあるヒドイ盤でした。またもや「針飛び」が、が、が、3ヶ所も。残念、無念です。まるで、針飛びの部分でテープカットされたみたいにいきなり曲が「飛ぶ」のです。これが、新しいミックスかとホンマに思いましたよ。
海外セラーは"モノラル針"なら「針飛びしないよ」ですって。
我が家のオールドタイプのステレオ針はやはり無理がある感じなのでしょうか?針圧を重くしてもアカンかったです。つまようじでほじくってもアカン。クリーニング液でクリーニングしてもアカン。虫メガネでみると溝が荒れているのがよくわかります。
もう針が折れる前に、先に心が折れましたわ。
音楽聴いてて、これが一番げんなりする瞬間ですね。

Ⅲ.PMC 7009  Mono
2.XEX 605 - 2 / XEX 606 - 2  ①1-PH ②2-RP "DR."
B面がマトリクス2。差し替え・回収盤以降のいわゆる「正規盤」として販売・流通しているもの。
「ドクターロバート」のレーベルが"DR"の方。マザーも初期でスタンパーが2桁なので割と初期ほうの盤になります。
モノラルらしく、音がひとかたまりでぶつかってきます。音質的にはステレオ盤とは違い、繊細な感じはしません。ポールのリッケンバッカーベースがゴリゴリと聴こえる。全体的に迫力のある音がします。ただ、残念なのは溝が汚れているのか、ノイズがとても多い。バチバチとまではいいませんが、結構気になる曲もあります。

Ⅳ.PMC 7009 
mother& stampers : XEX 605-2 / XEX 606-3  ①1-GP ② 1-HO
マトリクス-2 / -3 ながら、メタルマザが両面とも「1」のファーストプレス。16番目と75番目のスタンパ。

・Yellow & black "Parlophone" labels. "The Gramophone Co. Ltd..."、
・"Sold in UK..." あり。
・Side 2のlabel state は"DR. ROBERT"。ジャケットは"E.J. Day" 
・インナースリーブは、当時のカンパニーオリジナルの"White plain paper"  1966ver.の"patents applied for"表記あり。
・背表紙は、綺麗に上下が絞られたピンチドスパイン

 この盤は、ズシリとした重みがあります。出てくる音も素晴らしい。50年以上経つレコードなのに、溝がほとんど荒れていない。これまでの、Side-2のマト-1,-2は、結構溝が荒れていて、音質も結構ノイズがあったりして、音割れがひどい曲もあった。実際、上記のマト-2はスタンパも若いのに、音の歪みが激しいのでターンテーブルに乗せて聴くのが躊躇うほどです。
 昔、国旗盤を聴きましたが"She Said…"が、音の割れが酷くてディストーションをかけたみたいにひどい歪みの印象しかありませんでした。ところが今回の盤はside-1.-2ともにノイズ極小で非常にきれいな音でした。だが不思議なことに、1面よりも2面のほうが明らかに音圧が高いのです。Volumeツマミを同じ位置にしてA面ーB面を連続して聴くとよくわかるのですが、B面はいわゆる"ラウド"な音で、深く溝が切られているようです。ラウドな曲が、当たり前にラウドに聴こえて悪いはずがありません。楽器ごとの音が際立っているので、まるでステレオ盤のように聴こえる。特にエレキギターの響きがちゃんとディストーションがかかっているのと、ケン・タウンゼント畢生の力作"ADT - ケンのフランジャー"のエフェクト効果が抜群で、ジョンが気に入ったのもよくわかります。

 この盤のB面がマト-3ですが、定説では「マト-2と同じ時に切られたメタルマザ―である」というもの。つまり、Side-2のマト-2,-3は同時にラッカー盤が作成され、マザ、スタンパが切られ、同時にプレスに回された、ようです。この説はあながち出鱈目ではないと思われます。たしかに今回購入した盤をみると、"A面-マト2""B面-マト3"のカップリングですが、凸凹マザが1番であり、スタンパも両面2桁初期である。レーベルデザインも冒頭記述の変遷でいえば、Ⅰ.の両面ブロック体(DR.ROBERT) である。マト2-2の組み合わせでも、あたりまえのように3桁スタンパが存在するので、マト-3のマザ―1番はマト-2と同時期といえるのではないでしょうか?。

Ⅴ.PCS 7009 Stereo
1.YEX - 605 - 1 / YEX - 606 - 2 ①1-GP ②1-AD "1&2Box"
・シルバーレーベル:A面1box、B面2boxのハイブリッド盤。

 1969年にEMIでレーベルの変更があり、Y&BからEMIマークが上に1つの"1box"になりました。1boxは1969年からの1年程度使用されたと言われています。さらに1970年からはEMIマークが上下2つのもの(2box)になります。通常、2boxは1970年以降マイナーチェンジしていきます。所有している片面ずつ1boxと2boxのいわゆるハイブリッド盤は、1971年のみにプレスされたものと特定されています。
 アップル・コーポレーションが設立されて「ホワイトアルバム」以降のレーベルはビートルズのレーベル「グリーンアップル」になりましたが、引き続きEMIがレコードの製造と販売を受け持っていました。ホワイトアルバム以前の作品については、引き続きEMIのレーベルで発行されています。ただし、それもレコード自体の衰退とEMIとビートルズとの権利や契約関係が複雑になってきたため、年代を経るごとにレーベルも色々なものが出るようになっていますね。

 レコードは、マザーが1番でスタンパー2桁ながら盤面は綺麗でノイズもほぼありません。音もキレイ過ぎて素晴らしい音質なのですが、少し落ち着いて聴こえます。モノラル盤の荒々しさとは違い、繊細で大人しく聴こえます。この時期は、モノラルとの過渡期で、盤自体あまり聴き込まれていないのかもしれません。ビートルズのステレオ盤は、家庭によってはモノラル針で聴かれた可能性が高く、その場合溝を荒れやすくするそうです。
またカッティングマシンも、チューブカットとトランジスタカットが2boxの頃は入れ替わりの時期なので、どちらかの差は分かりません。

【"Remix-11(マト1)"雑考察で、本当に明日は誰も知らないのか】
「Tomorrow never knows」の別ver.のいわゆる「remix11」は、1966年7月14日にGマーティンがカッティング時に差し替えを命じたものになります。コレがマトリクス1で「One day Press」としてレア化されて有名です。本来ならマトリクス1は市場に出るはずはないのですが、なぜかプレスまでされて、そこは爆売れのビートルズだから、「そのまま出してしまえ!」みたいな感じで流通したようです。

ところで実情では、ほぼ半日くらいしかプレスされなかったはずなのに、コレが結構な枚数がプレスされたようなのです。以前に個人的に各オークションやらブログ記事から拾い上げた”流通しているリボルバーRemix-11"のレコードの「マザー/スタンパー」を調べてみました(以下マト1)。
・マザーは1から4が多い。
・スタンパーはG(1)からMP(46)まで確認できた。(だいたい2桁が多い。)
勿論もっとサンプルはあるはずなので、あくまで一部分なのですが。マザを4番として、スタンパを50枚に、スタンパー1枚からのプレスがネット記事や解説本によると「500枚から2000枚」と幅広過ぎて、統計として有意なのか不明なのですが、半分の「1000枚」と仮定してみます。マト1のマザー×スタンパー×プレス枚数では?

4(マザー)×50(スタンパ)×1000(枚)=200,000 ∴ 20万枚?

どうですか??ほぼ半日でこの枚数?1日のプレス数というより初日リリース枚数に匹敵しますね。これだけで初日の店頭出荷が賄えそうです。
実際は、マト1がボツになったので、本当に20万枚もプレスされたのか怪しいです。20万枚もプレスして、それを廃棄するのは現実的ではありません。
マザー、スタンパーを調査したのは30枚くらいですが、G1桁からAD、OR、MH等々2桁スタンパーが分散しているので、"マト1”はそれなりにプレスされていたようです。EMIのヘイズ工場の一日あたりの生産能力がそれくらいかわかりませんが、当時のビートルズのレコードの売れ行きを考えてプレスの準備では、予め相当数のスタンパーが一度に用意されていたのかもしれません。ただし実際のプレスが当日に途中で打ち切られたので、実際のプレスは一つのスタンパでそれを1,000枚を下回るものになったと思われます。200個のマザ×スタンパが用意されても、プレスが平均50枚から100枚程度なら、"マト1”は、だいたい1万枚くらいのプレスだったのではないでしょうか?"マト2-3"の合計枚数が100万枚レベルのプレスだったので。