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スペインのコミック小史
前回の記事で、スペインでは、コミックに4つの異なる名前があって、その背後には歴史的な要因があることをお話ししました。
そこで今回は、スペインにおけるコミックの起源から現在に至るまでの歴史をごく簡単に説明したいと思います。
起源と初期のイストリエタ
絵を並べて物語を語るものがコミックだとすれば、スペインにおけるその最初の例は、13世紀のいわゆる『聖母マリアのカンティガ集』にさかのぼると言われています。『聖母マリアのカンティガ集』はマリア様への頌歌ですが、写本の形で伝えられていて、マリア様の奇跡が挿絵入りで語られているのです。
それから何世紀も経った19世紀に、最初の「historieta (イストリエタ)」が誕生しました。それは定期刊行物に掲載された絵を連続させた短い物語でした。対象は大人の読者で、風刺的でユーモアに富み、強い社会批判を含んでいました。
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子供向けテベオの誕生
20世紀初頭、雑誌『TBO』(1917-1998)が誕生しました。スペインにおけるコミックの歴史は、この雑誌以前と以後で分けられます。。TBO誌は圧倒的な成功を収め、1935年には22万部を売り上げました。値段は10セント(2.49円)ととても安かったので、ごく一般的な娯楽となりました。
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この雑誌に掲載された物語は非常に人気があり、雑誌名のTBOが、「tebeo(テベオ)」という言葉として、そのままスペインのコミックを指すことになりました。TBO誌に掲載されたストーリーは、子供や若者向けのユーモアや冒険物語が中心でした。 それ以降、TBOに掲載されたコミックの大成功に多くの出版社が呼応し、子供向けの雑誌が数多く出版されるようになりました。これらの雑誌では、冒険もの、ユーモアもの、少女向けの恋愛ものなどのジャンルが人気を博しました。
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1939年~1975年にかけて、スペインはフランコ政権時代で、検閲が厳しかったのですが、この手の物語は検閲をうまくくぐり抜けることができたようです。一方、より大人向けで社会的に批判的な物語は厳しく検閲され、出版はより困難だったようです。
その結果、イストリエタの時代には大人向けの風刺が多かったスペインコミックはイメージが激変し、子ども向けと見なされるようになりました。
大人向けのコミックのブーム(1967年~1986年)
1975年、フランコが亡くなり、フランコ独裁政権が終わると、厳しい検閲もなくなり、それまでスペインでは出版されていなかったタイプの作品が出版されるようになりました。例えば外国のもの(アメリカのスーパーヒーロー・コミック、フランス・ベルギーのバンド・デシネ、日本のマンガ)から、作家性の強いコミック、エロティック・コミック、ポルノ・コミッなどがあげられます。
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スペインのコミックの衰退
フランコ政権が終焉し、スペインのコミック産業が急速に発展すると、雑誌が普及し、大量の作品が出版されることになり、コミック業界は飽和を迎えました。その一方で、1980年代はスペイン経済を不況が襲い、紙価が上昇します。当時の出版業界には計画性もなく、こうしたさまざまな要因が、一度は盛り上がったスペインコミックの衰退を招くことになります。
こうした内的要因に加え、外的な要因もありました。スペインが国際市場に開放されることで、新しい形態の娯楽がスペインに入ってきたのです。ゲームやアメコミ、日本のマンガの台頭が、スペイン国内のコミックの人気を衰退させることになりました。
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スペインのコミックの復活
それからしばらく経ち、20世紀末になると、De Ponent、Astiberri、Dibbuks、Diabolo Edicionesなど、グラフィック・ノベルの制作に重点を置いた、より優れた企画を持つ専門家によって運営される独立系出版社が出現し、スペイのコミックは復活を果たします。また、情報誌やブログ、ウェブコミックも台頭しました。
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海外のスペイン人作家
スペインのコミックは、20世紀末にルネッサンスを迎えましたが、だからと言って、前途は明るいと言い切ることはできません。
スペインのコミックが国際的に認知されつつあるにもかかわらず、スペインの漫画家の63%は貧困ライン以下で生活しており、社会的排除に近い状況にあります。33%の年間収入は1000ユーロ(160,610円)以下ですし、平均時給はなんと1,78ユーロ(285.5円)です。
このため、スペインの漫画家の多くは、スペインで仕事をしながら、海外でも仕事をしたり、あるいは海外だけで仕事をしています。ここで言う海外とは、主にアメリカとフランスです。
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以上、スペインにおけるコミックの歴史についてまとめてみました。
次回もお楽しみに!
またお会いしましょう!¡Hasta la próxima!