【25年愛.婚外恋愛⑤】大人になった T
一度見切りをつけてから、T とは何年も会っていなかった。
その間、私に "支えになるよ" と言って近づいて来たG と、数年間付き合っていた。
Gは、優しかった。
でも、偽善者だと気づく出来事が何回かあり、最後には私がキレて、こちらから連絡を絶った。
本当の意味での "優しい人" ってなんだろう。
表向きが優しくても、本当に人の気持ちを考えて、寄り添える人じゃないと、それは偽りの優しさだ。
表向きは自己中心でも、本来の自分軸をしっかりと
持ってる人は、他者にもその人となりを認めて、互いに依存せずに、尊敬出来る関係になれるのかもしれない。
私が人生で1番の苦しみを、味わっていた時に、2か月ぶり位にTから、いつものように LINEが来た。
" 元気〜? 何してる〜?"
" 元気じゃない。泣いてる。。"
初めてそんな返事をしたから、T は、
" リコちゃん。どした?ビデオ通話...出来る?"
と、何年も会っていない、スッピンの私にそう言って来たが、その頃の私は、Tは、恋愛対象でもなかったので、ちょっと躊躇はしたが、承諾した。
そして15年ぶり??位にビデオ通話で、ご対面。
T は、変わっていなかった。
元々、イケメンでも何でも無い、丸顔の細目で、ちょっとふっくら的な顔だったから、年齢を重ねても
そのまんまだった。
Gの外見で私が気に入ってるのは、背が高い事。
私は163センチあるから、同世代の男性だと同じ位の人もザラで、Gなどはその典型だったし、ちょっとヒールを履くと私の方が高くなる。
20代の頃から、結婚するなら私より背の高い人。
そう思って結婚した夫は173センチで、外見はとにかくイケメンだった。ほんとにカッコ良かった。
外見に自信があるから、行動もハッキリしていて、
一本筋が通った人だった。
そこが良かった。
一緒にいて、私の視界に常にイケメンがいるのも、良かった。
でも、身体を壊してからは覇気が無くなり、仕事にも支障が出た頃には、経済的にも頼れなくなり、、、そうなると結婚相手としては、最悪だ。
後半は私が家族を支えたと言っていい。
イケメンは、もう関係ない。。
だからかわからないが、GもTも、外見はあまり拘らなかった。
それでもT は、176センチあり、並んで歩いてると、なんだか守られてるみたいな気持ちになるし、腕を組むのも丁度良い。
小柄な女性はいつもこんな風な感じなのだなあ。と
言う気分を味わう事が出来た。
さて、
ビデオ通話では Tも、私を見て
"リコちゃん、変わらないね、顔見るの久しぶりだね。どーしたの?"
私は次男が交通事故で亡くなった事を涙ながらに話した。
その時の T の 最初のひと言目は
" リコちゃん。強いね..."
だった。
この人もか。。皆んな私をそんなふうな目で見る。
いや、、、わかる人は、表向きカラ元気してるけど
大丈夫じゃないよね。。と、察してくれたりする。
当たり前だ。
大丈夫なワケない。
強くもない。
今にも崩れそうだ。
でも、生かされてる。
そして、その時は夫の具合も最悪だったから
夫の方が先に仕事を辞めていて
私の収入で生活していかなければならなかったから、鬱になるわけには行かなかった。
共倒れだけは避けたかった。
長男を困らせたく無かった。
あの頃は、とても辛かったけど、今思えばそれが私にとっては良かったのだろう。
だから、今思うと
"強くいなければならない" 私は、しっかりと
頑張っていたし、そのおかげで鬱病にもならず、
現在がある。
だから、あの時、"強いね"と言われてしまうと
Tにさえ、泣きごとも言えなくなり、頼れなくなり、甘えられなくなるのに、
どーして私に " 強いね" なんて言うのよ。
と、、、言ったような気がする。
強くあらねばならない。そう思ってる自分。
弱くなれない。
誰かに甘えられない。
確かにそう思っていた。
でも、あの時の会話は、T と何年も繋がって来て、
初めてお互いに、深いところでの会話をしたように思った。
楽しいだけじゃない。
本当に辛い事を本心から話したから、T もT なりの人生経験から来る思いを言葉にしてくれた。
あの時、2人とも50代だった。
それからは私が仕事を辞めて、夫が余命宣告され
半年在宅介護をし、最後の半年はホスピスで看取った。
その間...あまり覚えていないが、多分、いつものように思い出した頃、“今、飲んでるよー" なんてLINEが、来てたような気がする。
なんだか、私は、
" ひとりじゃない。私の事を常に気にかけてくれる人がいる" そう思えたから、孤独は感じなかった。
あの頃は、会社を退職し、ようやく静かに、次男の事を想える環境になって、いつも次男の事を考えていた。そして自分の心と向き合って、それを鎮める方法を模索してもいた。
夫がホスピスに入ってからは、ひとり鎌倉へ行ったり、映画を観に行ったり、大好きなカフェ巡りをしたり、、、たまに友達とランチをして、深い話しをしたり。。。
本当に静かな時間を味わっていた。
その反面、週に三回の面会は欠かさず、いつ何どき、病院から緊急連絡が来るのかと、覚悟もしていた。
しっかりしなきゃ。
私が最後まで夫を看取るし、その後の色々な事も私がするから。
と言う思いから、崩れる事は無かった。
そうして5月のある日に夫を看取り、色々な手続き等が一段落した7月の末の暑い夏の日。
私は故郷の母に会いに行く計画を立てて、そのついでにT の所へ行った。
16年ぶり位の再会だった。。。
次回は、夫を亡くしてシングルになった私の
心境の変化を書きたいと思います。