Photo by aoyagi_masataka 「善意は善行を保証しない」事実に、おののいた学生時代 4 奈緒美 2024年12月30日 23:16 善意の光と影――:大学ではどんな生活を送っていたんですか?なおみ:国際協力に関心があったから、英語の勉強をしたり、お金を貯めて留学をしたりした。あと、授業の単位になるボランティア活動をしたり。 でも、ボランティアをやっている中で違和感が出て来ちゃって。それが結局、卒論のテーマになったんだ。――:ボランティアへの違和感というと?なおみ:まず「ボランティア活動が単位になる」ってことへの違和感だよね。 元々のボランティアの語源は、フランスの志願兵が命を懸けて行う行為から来てるらしいの。でも、私も含め大学生は、単位という対価を目的にしてボランティアをしている。「それって元々の活動と違うんじゃないか?」って感じはじめた。そうやって疑問を持つと他にも違和感が出て来た。例えば、ボランティアの参加者が、なんとなく「私たち、良いことをしてるよね?」という雰囲気で活動しているのをみた時、「本当にそうなのか?」って考えた。 それで、卒論を「ボランティアは本当に善なのか?」ってリサーチクエスチョンにして書いたの。――:卒論を書いてみる中で、その違和感はどう変わっていったの?なおみ:分かったのは、「善意で始めた行為でも、相手の自由と自立を奪う行為になりえる」ということだった。例えば、発展途上国に対する資金援助って、良いことに思える。でも、相手の国のためにならないこともある。相手を「発展途上だ」「不幸だ」とこちらが決めつけて、何も出来ない存在としてお金だけ出していると、本当に相手の国が自国で何もできなくなってしまう。最後は、その国の自立心が奪われてしまう結果になることがある。※「開発援助の社会学」著者:佐藤寛氏が「善意は善行を保証しない」ことを著書の中で論じています。サイトとしてはこちらが大変分かりやすいです。https://www.tokyo-setagaya-rc.jp/speecharchive/1916/――:なるほどなおみ:卒業後は、国際協力系のソーシャルセクターに就職するか、大学院に行くか、一般就職をするか、3つの選択肢を考えていたの。ソーシャルセクターに憧れはあった。でも、卒論を書いてみたら、その世界にいくのが怖くなっちゃって。善意を持って活動すること自体が、誰かの何かを奪ってしかうかもしれない。そもそも何も持ち合わせていない私がそこで役に立てるのかと。 この時、国際協力の世界から離れて、社会に出ようと思った。もっと複雑な、汚い所を含めた世の中に身を投じないといけない。今の私じゃダメだ。この世界にいてはいけない。漠然とだけど、猛烈にそう思った。 もちろん、国際協力のお仕事をしている方々を批判してるわけじゃない。でも、あの時の私は、そういう選択をした。――就職活動はどうだったんですか?なおみ:苦労したよ!!! 入った大学が、偏差値が低めの学校だった。就職活動で会う人は、いわゆる高学歴の方ばっかり目についた。学歴の時点で負けてるなって。色んなすごい経験をしている人にも圧倒されすぎて、連日どこに行っても落とされて。何度も何度も落とされて。そりゃ、自信もなくなるよ。シクシクしてた。あの時の私は、面接で自分を選んでもらえないことが、「お前は世の中に役に立つ能力がないんだ」って言われている気がして。「私は、この世の中でどうやって生きて行けばいいんだろう?」って、そこまで考えていた。でも、そんな時に友達や就職活動で出会った人たちが、すごく励ましてくれた。「君は自分の魅力が分かってんのか!」と。私よりも私のことを承認し続けてくれていた。――それは、元気が出そうですね。なおみ:だからやっと、改めて自分は何をしたいか?考えたの。ドキュメンタリー番組で見た、あの南アフリカの子のことを考えていた。それから、「日本の問題はどうするの?」と入試面接で尋ねられた。就職活動中に一度立ち止まって考えてみて、より身近なことに取り組んでいきたいと思ったんだ。南アフリカのことを考えるなら、もっと近い日本のことを。日本のことを考えるならば、地域のことを。地域のことを考えるなら、身の回りのことを。身の回りのことを考えるなら、目の前の人のことを。それで、就活も「私は誰の役に立ちたいんだろう?」って改めて考えて、色々な人に会うようにしてみた。そしたら、バックパッカーをしてたり、国際関係にも興味が強い商社の人に関心が出て来て。その中でも最前線で戦っている営業さんのために働きたいと思えた。それで、「商社の営業さんの元気のサプリメントになりたい」って就職活動を切り替えたら、一気に進み始めたんだよね。 ダウンロード copy いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #就職活動 #ボランティア #開発社会学 4