絵のメイキング① メメントはんぺん
絵のメイキングを私もしてみんとてすることにした。
と、思い立ってみたはいいものの、自分が絵を描く工程のどこをどう説明したらよいものか。改めて考えるとよくわからなかった。そもそも、何かを考えて絵を描いているわけではない。頭にあるものを写しているだけだ。おまえは今までにパンの食べ方について意識したことがあるか?
だが、そういう、自分では意識していない部分に、新しい発見とか、人生やシーライフの示唆があるような気もする。今夜はそんな驚くべきパン食の世界を皆さんにお届けしよう。
【メイキング第1回のテーマ:私の絵柄の根底にあるものについて】
自分が絵を描くとき、どういうことを脳でこねくり回しているか、一度真剣に向き合ってみた。
架空の人や物を描く。そのとき、題材そのもの以上に、「絵の骨材」みたいなものを心に浮かべているらしい。
深く……なんか……なんかもっとシンプルでホンワカして、原初の物体を芯にして描いている……ということに気がついたのだ。私の絵柄にとっての魂……そう…………
はんぺんだ!
はんぺんである! というわけで今回は我が心の灯台、はんぺんの描き方だ。お前ははんぺんの描き方について考えたことがあるか?
私の絵柄は基本的に輪郭線だけを描いて陰影をガン無視している。その世界を構築している基本物質は、白くてフワッとして四角くて曲がりくねる、このはんぺんだ。わかったか。
はんぺんをいかにはんぺんらしく描くか、ポイントは3つだ。
1. パースは整えてるっぽくしろ
はんぺんを構成している線のうち、この長いところの角度の話だ。
そもそも、はんぺんとはほとんど直方体である。直方体を平面に描こうとすると、平行四辺形ができる。正しくはパースがつくので平行四辺形じゃなくて消失点で交わる線で出来た四角形だ? うるさい、これは心のはんぺんの話だ。「整えてるっぽくしろ」と言ったのは私がパースをかっちりやる趣味じゃないからだ、以上だ。
平行四辺形を平行四辺形として描けることからはんぺんライフは始まるのだ。
向かい合った辺が平行になっている四角形。それが平行四辺形だ。そしてはんぺんだ。
狂うとこうなる。
うっ!?
この非んぺん(はんぺんにあらず)の何が問題かというと、向かい合う2辺のうち、奥の辺が長くなっていることだ。はんぺんは長方形(正方形かも)なので向かい合うへんの長さは同じだが、遠近法の基本法則として遠いものは小さく見える。すなわち奥にある辺のほうが短くないと不安になる……はんぺんとは……。
とはいえここまで遠近をつけたダイナミックはんぺんも、はんぺんの素朴さを殺しているのではなかろうか。なんだこれ。
うむ。
図形科学は大事だ。いや大事っていうか私が好きなだけだ。いいよね、図形科学。平行線とはそれだけで美しい。正方形はいつ見ても輝かしい。
アングルによっては平行四辺形でなくて台形になったりするが、そこは発展問題なので割愛する。
第1のポイントの要点は、長い線の部分は「角度」が目立つ。だから気をつけろということだ。
2. はんぺんの丸みを見ろ
ここのことだ。このカーブがいかにはんぺんをはんぺんたらしめているか、考えたことがあるか。はんぺんof輪郭線世界にとって、ここの丸みはすなわちはんぺんの厚みと質感とを表現する超重要ポイントなので、3角あるが全部気を抜くな。気を抜くとこうなる。
これはどう見ても豆腐だ……はんぺんではない。つついたら崩れるところが浮かぶだろう? 豆腐だからな……。
あるいはこうなる。
これは~~~スライスチーズかな? 熱したら溶けそうなスライスチーズである。どう見てもはんぺんではない。
えっ!? ええ……? わかんない何だろう……針金とかかな……などという不安に襲われるので、線はきちんと閉じよう。
これがはんぺんだ。
はんぺんの丸みが重要であることがわかっていただけただろう。
線が曲がっているところは、はんぺんの大事なところが見える小口であるので、気合を入れて困ることはない。
3. よく見えるアングルを
はんぺんを描くにあたって、どういう角度からはんぺんを絵にするか。
いろいろな表情をはんぺんは見せてくれる。それは真面目だったり、お茶目だったり、小悪魔だったり……無限と言えるかもしれない……(私の出せる案は上図が限界だったが)
その中でお前が選ぶべきアングルはなんだ!? それは「はんぺんの要素がよりわかりやすく見える図」だ!
はんぺんとはなんだ! ポイント1と2で述べた! 「四角いこと」と「丸みと厚みがあること」だ! このふたつをビシバシ感じられるようなアングルを選べ!
「描きたいものの描きたい要素がよく見えるアングル」の何が良いかというと、輪郭だけ描いたお手軽な絵でもはんぺんに見える!!
悪い例
これは横からはんぺんを見た図のつもりなのだが、これだと「はんぺんは四角い」という要素が一切見えないので、なにがなんやらわからない。ポークビッツかヌテラについてる棒にしか見えない。これではよくない……。
悪い例2
こちらは上から見たはんぺんのつもりだ。逆に、「はんぺんは厚みがある」の要素が全く伝わってこないので、ボトルに入ってるタイプのガムみたいな形と取られかねない。これもよくない。
そういう例を見てから、このはんぺんに戻ると、いかにはんぺん然としているかわかってもらえたのではないだろうか。
4. はんぺんを心に
はんぺんと非んぺんを何枚も描いてきたが、現実のはんぺんを見て描いたものではない。心のはんぺんである。
おれの心にははんぺんがある。はんぺんは意のままに動き、ねじれ、ちぎれ、形を変える。
コンピュータで3Dモデリングをしているさまを見たことがあるが、脳内ではんぺんに対して同じ図が繰り広げられているのだが、わかってもらえるだろうかこの感覚?
描け! 心にはんぺんを! そして動かせ心のはんぺんを! 手にはペンを!
あとは、この世はたいがい、硬めのはんぺんや柔らかいはんぺん、厚いはんぺん、薄いはんぺん、四角いはんぺん、丸いはんぺん、細長いはんぺん、欠けたはんぺん、生きたはんぺんでできているので、応用で描ける。あと液体と毛皮かな。え? 液体はんぺんに毛の生えたはんぺん? そんなものはない、正気に戻ってほしい。
ね、はんぺんでしょ?
(続きは未定です)
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