アニメダイナミックコード見どころ紹介・序文
はじめに
アニメ『DYNAMIC CHORD』(以下、ダイナミックコード)は、着目すべき見どころを知った上で誰かと一緒に見ると、たいへん面白いアニメです。
しかし、ニコニコでの一挙放送もここ数年行われていない昨今、コメントに見どころを学ぶ機会も少なくなってしまいました。これでは新規視聴者に魅力が広がりようもありません。既存の情報に頼らず、完全な自力で見どころを見つけていくことも可能ではあるのでしょうが、そのために何周もアニメを観るのに前向きな人種は、おそらくとっくにダイナミックコードは視聴済みです。
これから初見の人、あるいは一度見たけど意味がわからなかった人に向けて、ダイナミックコードの見どころを紹介することにしました。今回の記事+全話をそれぞれ個別で紹介した12本、合計13本立ての予定です。ぜひ、輝き続ける一握りのアニメ・ダイナミックコードを見るときのお供にしてください。ちなみに参照しているのは各所で配信されている放送当時の映像なので、円盤に収録されている修正バージョンとは差異がある可能性があります。ご了承ください。
今回は、序文として、ダイナミックコード全編を通じての特徴、登場キャラクター、そして物語のざっくりとしたあらすじをご紹介いたします。
アニメ『ダイナミックコード』全体の見どころ
・たまに出る妙な作画
・ところどころツッコミどころのある脚本
・その脚本が伝わってこない説明不足さ
・やたら多い不可解なシーンと演出
・ヒマさ
・そして輝き続けるキャラたちと楽曲の魅力
なにかと「ダイナミックコードといえば作画崩壊」という認識が広まっているような気がしますが、本編を見ればそれどころではないということがきっとわかると思います。ダイナミックコードの見どころはそれどころではありません。むしろ、これからの紹介記事では作画について触れることは少なめです。それどころではないからです。
私がダイナミックコードのダイナミックさに重要だと思っているのは、とにもかくにも意味が伝わってきづらいという部分です(作品としてそれは致命的なのでは?)。演出やセリフや間の取り方が、もうとにかくわかりづらい! そして状況説明が全体的に極めて控えめ! あまりにもストイック!
しかし、あくまで「難しい」だけで、情報は直接的/間接的に作品内で示されています。さらにそこに原作の予備知識を組み合わせることで、伝えようとしていること・表現しようとしていることを読み解くことができます。ミステリのような楽しみができるということですね。
そして、内容を理解してから改めて視聴すれば、初見のときと完全に違った目線で話を追うことができるようにます。その楽しさをぜひ一緒に味わいましょう!
とはいえ「情報を自力で集めたうえで何回も繰り返し見て真実を解き明かせ」というのも忙しい現代人には横暴な願いなので、これからの紹介記事でわたしが話の筋を解説していこうと思います。これを読んで理解の一助にしてください。ただし、あくまでわたしが読解した内容なので、作品の真意を間違えている部分や不足があるかもしれません。ご了承ください。
また、「全体の見どころ」として挙げてしまいましたが、演出のダイナミックさは回を追うにつれ易しくなってきます。初見殺しなのは1~3話までなので、そのあたりでヤバすぎて自信を失っても、7話あたりから挑戦しなおしてみましょう。このあたりなら登場人物の把握が進んでいることもあり、初見でも物語の内容を理解できるので、シンプルに脚本と絵ヅラの見どころを楽しめます。10話以降はもはやそれさえ置いておいて、話の展開を、登場キャラたちの行く末をハラハラしながら見守ることになるでしょう! そういった演出の難易度の推移も、ぜひ着目してください。
というか序盤が本当に難しくて視聴者を振り落としまくっているのが惜しいところだと思います。これからの紹介記事で、そこをある程度でもフォローできたら嬉しいです。
それと、上で挙げた「ヒマさ」については、スクショや名場面集切り抜きなどでは絶対に味わえない本編特有のダイナミックポイントなので、ぜひ本編を見ましょう。
ダイナミックコード登場人物紹介
まずそもそもダイナミックコードでは、登場人物の名前を含めた固有名詞の説明がアニメ内で一切無いので、事前知識としてキャラクターの顔と名前と所属を頭に入れておかないと、あらゆるセリフやシーンの意味がまったくわかりません。というわけでここで紹介するので覚えてください!
音楽レーベル・芸能事務所であるDYNAMIC CHORDに所属する4つのバンド、「[rêve parfait](レバフェ)」、「KYOHSO(キョーソー)」、「Liar-S(ライアーズ)」、「apple-polisher(アッポリ)」のメンバーたちと関係者が、このアニメの登場人物(および原作ゲームのキャラクター)です。
バンドメンバーは4組それぞれ4人ずつ。全12話を3話ごとに区切り、各バンドに焦点を当てて描く構成になっていますが、レオンを中心としたレバフェのメンバーは主役格として全編通して出演しています。4人と八雲とで仲良く会話するシーンが多いので、彼らのことはすぐに認識できると思います。
登場キャラが多く、そこにバンド名やレーベル名の固有名詞が加わるので一気に覚えるのは大変に思われるかもしれません。さらに、本名以外に各々バンドでの芸名があったり、関係性由来の特別な呼び方も出てきます。
全部覚えるのは諦めて大丈夫です!(このアニメを見るにあたっての話)
各バンドの名前と主人公のレオンくんを最低限知っていれば問題ないでしょう。その他のキャラの名前に至っては、既存の視聴者も全く覚えられないので、好き勝手にアダ名をつけられてしまいました。
名前はさておき、どの4人が同じグループなのか、というのは覚えておくと、内容の理解が早いと思います。幸い、キャラクターたちの外見はとても華やかかつ特徴的なので、判別に困ることはないですね。これは素直に良いところ!(原作ゲームのキャラデザが優れてるんだなあ)
さらに上記のキャラクターに加え、アニメではオリジナルキャラの「道明寺辰哉」が登場します。彼はさすがにオリジナルキャラなので、自分から名前や立場を言及してくれます。作中イチ律儀な男と言えるでしょう。彼の活躍は本編で確認しよう!
作中でキャラの紹介が一切無い一切無いと言ってきましたが、正確に言うとOP映像に書いてあります。ガッツのある人はここで覚えられるかもしれませんね。本気で言ってるんですか?
あらすじ
上記しましたが、アニメダイナミックコードでは4つのバンドが登場し、彼らの苦悩や奮闘をそれぞれ3話区切りで描いています。さらに時期も春・夏・秋・冬と分かれています。
このことから、それぞれの話を「春編/キョーソー編」、「夏編/ライアーズ編」、「秋編/アッポリ編」、「冬編/レバフェ編」とこれからの紹介では呼ぶことにします。これはわたしが呼んでいるだけで、浸透している通称とかではありません。ご了承ください。
以下が各編のあらすじです。
〈春編〉
KYOHSOのボーカルであるヨリトの様子が変だ。なにか思い悩んでいるのか、バンドの練習も休むようになり、行方もわからない。すると、なんと彼がバンドを脱退すると煽るゴシップ記事が。憧れのヨリトのスキャンダルに揺れるレオン。ヨリトの苦悩の理由は、パパラッチ道明寺の知る真相は?
〈夏編〉
次のクリスマスに4組合同ライブと新曲発表を控えているが、作曲のレオンがスランプで苦しんでいるらしい。心配するメンバーたち。八雲マネージャーのはからいで、合宿兼慰安として山のリゾートへ旅行に行くことになった。そこでばったり会ったのは、バンドの方針でマネージャーと決裂し、行方をくらませていたライアーズのメンバーだった。ライアーズが譲れないバンド活動への思いは、マネージャー加賀にわかってもらえるのか。そのカギは……村祭り?
〈秋編〉
レバフェのレオン・亜貴とアッポリの成海は幼馴染で仲が良い……はずが、とある事件から亜貴と成海が言い争いに。他のメンバーのはからいで旅行先の京都で引き合わされ、なんやかんやで仲直り。ところでアッポリのメンバーは修行回を経て大切なものを見つけて演奏が飛躍的に良くなった。そんな彼らを見てレバフェも奮起する。
〈冬編〉
奮起したはいいがレバフェはどうにも空回り。他のバンドに比べて劣等感を覚え、合同ライブへの曲作りも進まない。そんな彼らをサポートしたいとマネージャーの八雲は励むが裏目に出まくってしまい、力不足を省みて業務をしばらく休むことにした。レバフェ一同は旅に出た彼を連れ戻しに行く。果たして八雲には会えるのか、そして合同ライブの新曲はできるのか、レバフェが見つけた自分たちの音楽とは?
共通するのは、各バンドメンバーたちの音楽に対する真剣な葛藤と苦悩、そして前進を描いた物語であるということです。思わず彼らを応援してしまいますね! 原作は恋愛ゲームなのですが、アニメでは恋愛要素を完全に排し、バンドマンとしての彼らの姿を追うドキュメンタリーとなっています。その結果どうにも挙動が男子小学生と化したメンツが何人かいるのですが、そうした部分は各話で見ていきましょう。
ところで、ストーリーを理解するために、アニメのコミカライズ版である『DYNAMIC CHORD(全2巻)』を参考にしたこともここに記しておきます。アニメでは省かれたキャラの紹介や、セリフの行間を埋める情報、さらにコミカライズ書き下ろしのシーンなどで超親切になった物語がテンポ良く楽しめるので、アニメが無理そうな方はこれを読もう! 絵も美麗! マジでちゃんと名作!
以上がダイナミックコードのアニメとしての特徴と、キャラ紹介、全体のあらすじでした。今回の紹介は以上です。
最後に、そんなツッコミどころ満載のアニメではありながら、それでも全体に感じられる慈愛が、わたしは好きです。
たしかに説明は足りないし演出は変化球だし予算はたぶんカツカツだしキャラたちの精神年齢が不安な脚本になっているのですが、それでも、投げやりにならずに作品は完成し、物語はクライマックスを経て、きちんと結ばれます。これがどれほど尊く立派なことであるか。また、少ないコストの中で最善を尽くしたと見受けられる部分や、演出への熱意が感じられる部分、原作へのリスペクトが表れている部分はたくさんあり、そういった面へ強く好感を持っています。全話見終わったあとに感じたキャラたちへの「愛着」は、製作陣の徳のもたらした奇跡であり、このアニメが奇妙に愛され続ける要因なのではないかと思います。そして、わたしが未だにこのアニメの話をせずにいられない難病に罹っている原因なのでしょう。