部屋が散らかる話(そして部屋との別離)
私は部屋がすぐ散らかるたちだ。
そもそも日頃から片付けをしない。月に1度あるかないかの大掃除において、そこいらじゅうに散らばったモノをナントカしまい、ゴミを捨て、ようやく掃除機をかけるといったありさまだ。だいたいヘッダーの画像みたいな状態になっている。
こんなことじゃあいけないなあ、と思いつつ、エントロピーが気付けば増大してゆく日々だ。もはや散らかしていることに気がついていないといっていい。
知人の家に行って驚いた。
これ家??
だって家ってのは……家ってのはもっと雑然として……まず何故机の上に何もないのか!? もっとそこいらじゅうにカバンとか本とか積み重なってて脱いだ上着とか掛けてないのか!? なんだこのくつろぎスペースは!!
何故、生活スペースがあんなにも整頓されているのだろう。私が滅茶苦茶なズボラという原因もあるが……そもそも「家に対する認識」が違うのではないのか? 私が思っている家というものに、どこか重大な間違いがあるのではないか?
そんなことを考え詰めて、一つの仮定を得た。
私は家と自分の区別がついていないのではないか。
あなたは利き手にコップを持っている。そのとき、字を書く用事が出た。そういうときはどうするだろうか?
空いている手に持ち替えるのではないだろうか。
あなたは紙ゴミを持っているが、ゴミ箱が周りに見つからない。どうしたものか?
ひとまずポケットにしまっておくかもしれない。
……これと同じことを、私は居住スペースでやりまくっているのだ!
コップを手に持っている。それを机に置いておく。これは私にとって左手に持ち替えることと同じことである。
ゴミを一旦、机の空いているところに置いておく。これは私にとってポケットに入れておくことと同じことである。
そうして! 家中の空きスペースという空きスペースが! 物の置き場になり! 床はカバンと空きダンボールで埋まり! カラのペットボトルで机がいっぱいという今の状況!!
私は家という他人を自分と同一視し、それに甘えすぎていたのではないだろうか!?
「ようやく気づいてくれたね……」
い…………家くん!
「オレは今までおまえと共に生きてきた。もはやおまえと一体だった。
だが、もう限界なんだ。
オレがおまえの荷物を持つことを、当たり前だと思ってもらっちゃ困るんだ。オレとおまえは別の存在。わかってほしい」
家くん……そう、そうだよね。家くんは、私じゃないんだよね。私、好き勝手しすぎたよね……。脱いだ上着を無言で押し付けちゃ、ダメだったんだよね。カントリーマアムの空き袋を机に置きっぱなしにするなんて、良くなかったよね。家くんは、ずっと耐えてたんだね。
ごめんね、家くん……!
「オレは永遠にはいっしょにいてやれない。いつか別れの時が来る。
その時、あんまりオレに近くなりすぎてると、おまえが苦しいだろう。
一人で……立てよ。立てるようになれ。
オレはそれを、応援するぜ…………」
家くん? そんな……家くん……?
家く―――――ん!!!!!!
◇おわり◇