ああ!言い間違い(スプーナリズム)
昔オヤジが色鉛筆のことをエロ・インピツと呼んでいたのを思い出す。もしかしたらどこかの地方特有の訛りだったのかもしれない。小学生の頃は「なんか、オヤジなまってんな」と思うだけだったが、中学生になった頃からはちょっと大人の耳になってきたせいか、聞く度に、色々と妄想が浮かぶようになったのだった。「それ何にどう使う道具だよ」的な感じで。
ま、その話はまた別の機会にするとして、こういう文字が入れ替わって話してしまうようなことを言語学的に「音韻交替」と言うのだそうだ。
子供の頃はそういう言葉が結構あった。「とうもろこし」を「とうころもし」という友達がいたり、「エレベーター」を「エベレーター」、「エベレスト」を「エレベスト」なんて言うのも結構聞いた記憶がある。小さな子供が、ポップコーンをコップポーンと言ったり、パトカーをタコパーなんで言い間違えるのは可愛いものだ。しかし、間違って覚えたまま大人になっている人もたまに見かける。
「まいど、おさがわせしております(⇒ 正しくは、おさわがせ)」や、「いいふいんきですね(⇒ ふんいき)」など、本人も特にもう気が付かずにそう言っていそうな人もいる。というかもうあまりにも言い慣れていて自然なので、聞いている方も気を付けないと、もはや違和感を感じなかったりする。
もう、定番ネタになっている音韻交替もあり、鉄筋コンクリートならぬ、鉄コン筋クリートなんて映画や、「あつは、なついねー!」で始まるベタ漫才なんかもあった。
この現象は日本語だけでなく、色々な国の言葉でも起きるものとのことで英語ではスプーナリズム(spoonerism)と呼ぶようだ。
英語でも ask(アスク)を aks(アクス)と言う人がたまにいる。"lighting a fire" を "fighting a liar"と言ってしまう言い間違いなどもスプーナリズムだ。
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昔、海外に住んでいた時、シェアメイトにタイ人の留学生の女の子がいた。その娘は kitchen(キッチン)のことをいつも chicken(チキン)と言い間違えていた。"in the kitchen" と言うところを "in the chicken" といつも言う訳だ。
大体文脈で言い間違えているのはわかるので、最初は「まあそんなことをいちいち指摘するのも無粋だよな」と思って気付かないフリをしていたのだが、段々仲良くなって遠慮がなくなってきたので一回それとなく「chickenって言ってるぞ」と言って見た。すると「実は、自分でもわかっていて、いつも直そうと思っているけど、どうしてもそう言ってしまう」と言うのだった。
もの凄く勉強のできる頭の良い娘だったので、そういう隙があるところが逆にご愛嬌だったのだが、その時は「タイの人は鶏を良く食べるからなのか、それとも何かタイ語に似た言葉があって間違えるのか?」などと思いながら、結局理由は聞かずじまいだった。
事情が判ってからはもうずっとスルーしていたのだが、ある日一緒にマーケットに買い出しに行ってきて、
"Where shall I put the chicken?"(このチキンどこにおこうか?)
と聞くと、
"In the chicken."(チキンに!)と返事が返って来た。
その時は、さすがに「ん?」と顔を見返して "In the chicken???"と聞き返してしまった。すると彼女は「ハッ」という様子で "Oh, I did it again!" (また、やっちゃった!)と言うと首をすくめてテヘヘ顔をしたのだった。
うーん、懐かしいなあ。
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