【日記小説】橋の上の天使たち
2023.1.27
不動産の物件撮影のバイトを始めて2ヶ月程経つ。
今までの職場と同じように誰と喋ることもなくモクモクと仕事をしている。モクモクといっても全くすることがない日も多く、提出済みの写真を何度も編集して時間を潰しているのだが、暇だと悟られたくなくあたかも仕事があるようなフリをしている。
やはり無口な人間に対する風当たりは強く、帰りに挨拶をしても他の人が帰るときと比べて挨拶を返してくれる人は少ない。今日は特に少なく、5人ほど事務所に人がいたにも関わらず、1人しか挨拶を返してくれなかった。かといって性格の悪い人ばかりが在籍しているというわけでもなく、ただ自分が悪いのだ。
それでも人間誰でも自分だけぞんざいに扱われるとへこむのはへこむ。いつものようになか卯でご飯を食べて帰る。お昼休憩を入れない代わりに30分早く帰ることができ、時給は同じだけ発生する。
早く帰れるとは言え、14:30だからお腹はかなり空いており、駅近くのなか卯で親子丼とはいからうどんのランチセットを食べてから帰る。いつもの隅の落ち着く席は空いておらず、4人テーブルに座って感傷に浸りながら食べる。途中涙がこみ上げてきそうなのを悟り、涙が目に溢れる以前に抑えこむ。誰に見られているわけでもないが、涙を流すことに罪を感じる。
阪急電車に乗り、終点河原町で降り、エディオンに繋がる階段から地上に出る。
河原町にはあちこちに雪がまだ残っている。
中古カメラ屋さんへ寄って帰ろうかと思うも、烏丸の方まで歩くと思うと気力がなく、そのまま帰ることにする。
四条大橋の欄干に沿って雪の道ができており、小学生2人組がその雪の道にわざわざ乗り、滑って遊んでいる。見るからに滑って転けそうでこちらまでヒヤヒヤするが、その無邪気さになぜだか感動を覚える。
無邪気さのみが人間の美徳ではないかと思うほどに。