香水の世界の入り口に立つ
香りを楽しむモノを使い切れたためしがない。
シャンプーのような実用品ではなく、純粋に香りを楽しむことが目的となっているモノが。
だから買うのはやめようと決意し、年に1回くらい「やっぱり気になる」と購入しては使い切れずそのまま溜まっていき、やっぱり買うのはやめようと決意する。その繰り返しだった。
そんな私が「香水、面白そうかも?」と思ったのはあきやさんのこちらのnote。
使い切れないし、自分には関係ないのではという思いはぬぐい切れない。
けれども物は試し、試着は無料と思い、とりあえず何かの機会に香水を見に行ってみようと決めたのが始まりでした。
香水の旅の始まり
2022年、大晦日。
帰省先でうめはんに行ったついでに立ち寄ったルクアイーレで、ノーズショップを見つけました。
オープンな感じで、他にもお客さんが数人入っている。
ひっくり返した漏斗にサンプルが入っており、気軽に嗅ぎ比べができそう。
自分の中のハードルがちょっと下がった瞬間でした。
元々、香水よりも精油の自然な香りの方が好きだと思っていたけど、正直食わず嫌いでしかない。
香水のことはマジでわからない。
まずはどんな香りが好きなのかを知るため、好きだと思った香水に何が使われているのかを見ていくことにしました。
この日のノーズショップで、2,30種類は嗅いだと思います。
たくさん嗅いでもまだまだいける、みたいな無敵状態。
(経験が少なすぎて、鼻がおかしくなる感覚を分かっていなかっただけかもしれません)
中でも好きだと思ったのが以下の3種類です。
レジデンス ダーティスト
個性的で賑やか。芸術家が集結するというイメージも好き。
ナルコティックV
セクシーな香り。香りのノートは公開されていないけど、分かる人からすればチュベローズだな、という感じらしい。
チュベローズという花があることをこの時初めて知った。
1969
トップノートの香りが特に好きだったこの日のNo1。ムエット(試香紙)をいただいて帰りました。
思えば他にもムエットを貰って来ればよかったのだけど、慣れてなかったから1種類しか声をかけられなかったのが悔やまれるところ。
しばらく置いておくと香りが変化して、ビターな感じに。
変化した後の香りも好きだけど、自分ではなく恋人やパートナーがつけていてほしい香り(特定の人や好きなタイプを表すわけではなく、あくまで概念として)だと直感的に思ったので、私の香りではないという結論になりました。
いろいろ嗅いでみて、その日はマンダリン、ベルガモット、ピーチあたりが使われている香りが好みなのかも、と結論づけました。
香り全体の傾向としてはフルーティ・フローラル系、ちょっとスパイシーな香りが入っている方が好きかもしれない。
苦手な香りの系統もなんとなく理解しました。
別の日にはベルガモットの香水を嗅ぎ比べてみました。
爽やかだけど爽やかなだけでないのが、ベルガモットの好きなところ。
一方で、ベルガモットが前面に出ているものは大好きとまではならないぞ?と気づきました。
ディオール展に行った日には、ディオールの店舗に寄っていくつかの香りを試しました。
ミス ディオールのビジュアルイメージが好きだったので、ぜひつけてみたかったのです。
ディオールの香水のムエットをバッグに入れて回るディオール展は最高でした。
香りの変化も含めて一番好きだったのは、他と比べてローズが強いローズ&ローズ。
フローラルの中でもローズが好きなのかもと思い始めます。
好きな系統の香水をかぎ比べる
最初はノーズショップの扱うニッチフレグランスに魅力を感じていましたが、ディオールの香水を試してみたことで、ファッションブランドの香水や、ニッチではない香水のブランドもどんなものがあるか知りたいと思うようになりました。
何か所か回った中で、記録が残っているものを中心に載せていきます。
ディプティック
初めの一本を真剣に選び抜くなら、香りはもちろんのこと、パッケージや説明文、コンセプトも大事にしたい。
ネットで調べたブランドの中で興味を持ったのがディプティックでした。
店舗ではローズなどのフローラル系の香りとリクエストして、いくつか出していただきました。
オーローズ
吹きかけてすぐにライチがふわっと香るのが好きです。
私らしい、かも。と直感的に思った香水でもあります。
ドソン
この日のNo.1。
オーローズよりもなりたいのイメージに近いと思いました。
ムエットと比べると、手首につけた香りのほうがより甘さ控えめ、パウダリーな白い花になって好きな感じ。
ノーズショップ
再度ノーズショップにも行き、香りをかぎ比べてみました。
自分で試せるタイプのお店は、自分の「好き」と「どう見られたいか」を知るのに役立ちました。
自分の好きな範囲に収めつつ、より社会に馴染めそうな好感度の高い香りを身に着けるならこれだと思う香りも見つけました。
これまでの私なら、シトラス系の爽やかな香りを選んでいたかもしれない。
自分の好きな香りを纏いつつも好感度を上げたい、社会性を出したいなら花束のような軽めなフローラル系がいい。
爽やか・清楚なイメージのものを選びがちだったのは、服でも同じだったように思います。
でも自問自答を深めた今、自分がなりたいイメージを思い浮かべると、チュベローズが近いのでは、と思いました。
本当になりたいのは、先日買ったセクシーな赤いハイヒールのような「強くて自立していて、心から女性であることを楽しんでいる人」のイメージなのではないか。
糖衣を被るのはやめて、これぞ自分と思えるような香水を見つけたいと気持ちを新たにしました。
伊勢丹の香水コーナー
伊勢丹では、ローズとチュベローズの香水をリクエストし、いくつかムエットをいただきました。
同じローズの香り・チュベローズの香りであっても、種類によって結構香りが違うのだと知り、香水って奥深いと思った。
主観的にシャンプーぽさ、香料ぽさを感じる香水は低めの評価となりました。
その日よかったのは3種類。
デリール・ド・ローズ
桜の木っぽい香り。残り香はローズらしいローズ。
チュベローズ イン シルク
やっぱチュベローズは落ち着く香り。
E1990 ユースドリームス
チュベローズよりマリーゴールド?濃くも爽やか。
マリーゴールドの香水ということで脳内にあいみょんが流れる。
1990は私の生まれ年でもあるので、ちょっとつながりを感じます。
こうして色々嗅ぎ比べた結果、チュベローズが好き! と結論付けました。
チュベローズの香水って、時間が経つとチュベローズでしかない感じになるものが多いので、どの香水も割と似た香りにも思えます。
とはいえ同じチュベローズ系であっても、自分につけた時とムエットの香りを比較すると、どちらが好きなのか結構違いが出るのです。
香水って奥深いなあ……!(2回目)
そして決定
100まではいかないかもしれないけど、50種類以上嗅いだはず。
欲しい香水は心に決まりました。
ディプティックのドソン。
チュベローズだけど甘すぎない香りが良い。
何より手首に吹きかけてもらったとき、一緒にもらったムエットよりも好きな香りになったことが決め手でした。
買うことはほぼ決めましたが、あとはいつ買うか。
タイミングを決めきれないままに時間は過ぎていきました。
幻冬舎大学のあきやさん講演会に参加した日に、その日は訪れました。
ランチに食べた桜ゼリーが欲しい香水の香りに近いと思い、もう一度香りを試してみようとディプティックの売り場へ。
しかし、吹きかけてもらったら桜ゼリーの香りではありませんでした。
自分の嗅覚、思った以上にあてにならない。
本当にこの香りがいいのかもう一度考える必要があると思い、香りの変化をみると伝えてそのまま退店しました。
時は流れ講演会後の夕方。
ガールズとお茶をしたとき、自分の肌の香りを引き出す香水を試してみたいという話になりました。
ロールオンタイプの香水を手首につけてみたところ、他の3人と自分の香りはなんか違う。
もしこの香りの香水があったとしても買わないだろうと思いつつも、確かに自分の肌はこういう香りだなと納得しました。
この肌があるからこそ、ドソンはムエットよりも好きな香りに変化するのだろう。
今日買おう。
踏ん切りがつきました。
購入自体はあっさりと終わりました。
ものすごくテンションが上がるでも達成感があるでもなく、
でもじわじわと嬉しい気持ちになったお買い物でした。
ドソンにはこんな物語がついています。
ここからは、私がドソンを身にまとったときに感じるイメージの世界です。
香りだけで物語の世界をありありと表現できる香水、すごい。
香水は深く、ちょっと怖い
これぞ私と思える香水を手に入れて。
まだ入口に立ったばかりですが、香水ってめちゃめちゃ深いなと感じています。
嗅覚は五感の中でも、記憶と深く結びついた感覚といわれます。
ドソンは個人的に好きな香りなのだけど、割と甘くて濃い香りで好き嫌いが分かれそうなこともあり、人と会うときはあまりつけられずにいます。
でもそれ以上に人前でつけづらいと思う理由は、香りでもって自分の内面を晒しているような気分になることです。
もっと社会性がある無難な(と自分が思う)香りだったら、人に会うときでも躊躇なくつけられたかもしれない。
けど自分の心に素直に選んだ結果、素直になりすぎて、香らせるのがちょっと怖く感じることがあります。
人に会うときは足首あたりにそっとつけて、ほんのり香るか香らないか、程度にしておくのがちょうどいい。
服装で外見と内面をリンクさせるのとはまた違う、より深いところと結びついていくような感覚が香水にはある気がします。
香水って恐ろしい、だけど魅力的。
選び方を変えれば、自分の内面を徹底的に隠して、全く違う印象に見せることもできるのかもしれない。
次は今回と違ったアプローチで、また別の香水を試してみるのも面白そう。
とはいえドソンが好きな香りであることは揺るがないので、このくらいならいいと思える範囲で香らせて、大事に使っていくつもりです。