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#36 月曜朝の反省会
土曜日の夜、祐介は久々に大学時代の友人たちと集まった。コロナ禍を経て、全員が顔を揃えるのは3年ぶりだった。あの頃と変わらない悪ノリと笑い声が深夜まで居酒屋を包み、ビールから始まり、日本酒、さらには友人が薦めたハイボールまで、杯が止まることはなかった。
「次で最後にするか。」
そう言いながらも、結局祐介は終電を逃し、タクシーで帰宅したのが午前2時過ぎ。ソファに倒れ込むように寝落ちした。目覚めたのは翌朝—いや、もう月曜日だった。
アラームが鳴る音で目が覚めた祐介は、頭が割れそうに痛むのを感じた。喉はカラカラで、口の中は砂漠のようだ。時計を見ると、8時30分。通勤ラッシュを避けるため、普段は7時半には家を出る。完全に寝坊だった。
「くそっ…」
慌てて顔を洗い、スーツに袖を通す。鏡に映った自分の顔は、目の下にくっきりとクマができ、肌はいつもより青白い。胃がムカムカする中、なんとかネクタイを結び、コートを羽織ると、家を飛び出した。
地下鉄に乗り込むと、満員電車の中で立っているだけでも辛かった。車内に漂う朝の香水の匂いや、誰かが持ち込んだコーヒーの香りが、祐介の胃をさらにかき回す。
「もう飲み過ぎるのはやめよう。」
そんな決意を何度も繰り返しながら、電車の揺れに耐えた。
会社に着くと、すでに始業時間を少し過ぎていた。受付でタイムカードを打刻し、すぐにデスクに向かうと、同僚の佐藤が小声で声をかけてきた。
「お前、顔真っ青だけど大丈夫か?」
「いや、ちょっと体調悪くてさ…」
嘘ではないが、本当の理由を説明する気にはなれなかった。祐介はPCを立ち上げ、溜まったメールを確認するふりをしながら、隙を見てデスクの引き出しから胃薬を取り出した。水で流し込むと、少しだけ楽になった気がした。
午前中はなんとか乗り切ったものの、昼休みが近づくにつれ、疲労感がピークに達していた。ようやく昼休みになり、佐藤が声をかけてきた。
「飯行くか?」
「悪い、今日はパスするわ。ちょっと休みたい。」
一人デスクに残り、頭を抱えるように突っ伏すと、ほんの少しだけ眠ることができた。その短い休憩のおかげで、午後の仕事は何とか持ち直した。
夕方、定時が近づく頃、部長に呼ばれた。
「祐介、大丈夫か?今日ちょっと冴えないな。」
「あ、すみません。昨日ちょっと寝不足でして…」
部長は呆れたような顔をしながらも、それ以上は何も言わなかった。帰り道、駅のコンビニでポカリスエットとおにぎりを買い、自宅に戻ると、すぐにシャワーを浴びた。
湯船に浸かりながら、祐介はぼんやりと思い返した。昨日の夜、楽しかった友人との再会。深夜まで語り合ったあの時間は、確かにかけがえのないものだった。
「でも…次はもう少し控えめにしないとな。」
そう心に誓いながら、布団に入ると、祐介は瞬く間に眠りに落ちた。