混沌のスター軍団・レアルマドリー解剖(vs4141)
指示を待つ優等生達
初回は混沌のレアルマドリードをお送りします。
モドリッチやセルヒオラモスを擁するレアルマドリードは何と言ってもそのブランド力、そして所属選手たちのスター性が売り、、でした。
勿論滅茶苦茶上手くてスゴイ選手達が集まるチームなのは今も間違いないですが、特にWGポジションにおいては走れる中堅・若手がしのぎを削ります!とはいえ他のポジションもジダンのチームはゴリゴリのフィジカルサッカー。兎にも角に選手達が走りまくる。ベテランのエースストライカー・ベンゼマも例外ではありません。今やこのチームは全員攻撃全員守備・お互いがお互いに合わせる共感力とチームスピリットが命の優等生軍団です。
さて、今回の題材は大みそかのエルチェ戦。ドローという結果を見てお分かりの通り、この試合のレアルマドリードは上手く行っていませんでした。エルチェが上手く行かなくさせた、という言い方もできますが、実際かなり不甲斐ない戦いでした。
というのも、レアルマドリードが格下相手に敗北する時は大体同じパターンで負けています。チャンピオンリーグGS敗退危機と騒がれたシャフタール戦の敗北も同様、4141は完全にレアルマドリード対策として確立された感があります。
そんなレアルマドリードが上手くいかないときの原因を、サイドの攻略に必要な構造と共に解き明かします!
対レアルマドリード必勝タクティクス:1トップで守れ!
442でゾーンディフェンスをしても、クロースが降りて3バック化。サイドにボッコンボッコン蹴り分けられて簡単には奪えない。しかしながら前に3枚当てて奪いに行くのはリスクが高い、、というような格下のチームにとって、レアルマドリードには1トップで守るのが一番の方策になっています。それは単純に、レアルマドリードが4141を崩せないからです。いくら好きに回させても怖くなく、しっかり対応すれば守れる、あわよくばカウンターで一点取って勝てるという話です。
このような時のレアルマドリードは、攻守を分断されて前線と最後列に5人ずつが並ぶという奇怪なる現象が発生してしまいます。ボールサイドのIH(クロース・モドリッチ)が降りざるを得なくなって5バックになるこの現象は、特にヴィニシウス・アザールが起用されない試合で起こりやすくなります。
前提として4141は中盤5枚、後列5枚にして柔軟にスペースを消せる守備陣形で、尚且つ中央が堅いですね。これはレアルマドリード自身も行う守備ですが、4141から必要に応じて442、451、433、もしくは541に素早く変化してがっちり守られるとチャンスの糸口を掴むのが難しいです。比較的フリーの後列とサイドレーン・ハーフレーンを上手く攻略しなければ得点を奪えません。レアルマドリードはそこを突けない場合が多いです。
原因①サイドの行き詰まり
エルチェ戦を例にとってみましょう。
基本的にレアルマドリードのWGは張ります。アセンシオやアザールは中でのプレーも得意としますが、基準点は張った所からのスタート。そして状況に応じてサイドバックが内外を走ってサポートしますが、実際には内側に入るパターンが多いですね。左に限って言いますと、この試合はマルセロが内側を走っていきました、しかし彼はそんなにスピードがある方でもないですし、背負って受けるのが得意でもありません。
マルセロの動きによって相手をずらすことはできたので囲い込まれることは防げたものの、ラモスにボールが戻って仕切り直しです。これでは半永久的に相手のブロックの外ですね。
次に右サイド。この試合ではバスケスですが、ロドリゴの時も多いですね。基本的にやってることは変わらず、カルバハルの前に縦に並びに来ます。こちらに置かれる二人のウインガーは右利きで、詰められた時のボール保持能力もあまり高くないです。そもそもパスコースが切られやすい上に、速いボール循環によってパスが入ったとしても前に向けず、簡単に戻すか奪われるというパターンが多い。どっちにしても、内側を上がっていったカルバハルに出すことはできません。
つまり、ウイングに距離を詰めてパスコースを封じれば守るのは易いと思われているということで、現にそのように封じ込められます。
原因②ベンゼマの孤立
先ほども言ったようにウイングの選手たちの基準点は張った位置にあるので、ベンゼマは基本的に孤立しています。そしてバイタルエリアには2CBだけでなく相手のアンカーも居るので、スペースもパスコースもありません。アンカー脇にも選手が居ないのでが使われる危険が無いため、守る側はずっとベンゼマを監視し続けられます。
仕方ないのでベンゼマはバイタルを脱出、ハーフスペースに移住しました。しかしここでベンゼマにボールが入っても、中央には人が居ないのでゴールの危険はむしろ減ったと言えます。敵から見れば、中央から人を追い出して、尚且つサイドバックの攻撃参加を阻止した訳です。
ベンゼマがハーフスペースを取り始めたということは、SBもWGも内側を取らなくなり、当然ボールは前に進みません。ボールが回らないのでIHが降りてきます。攻撃時5バックの完成です。見事な自壊ですね。今期のレアルマドリードは見事にこれに引っかかって自滅していきます。
指揮官無き軍隊
では何故このようなことが起きるのか。それは間違いなく、お互いがお互いの顔色を窺っているからでしょう。ロナウドが居た頃は、一人がロナウドに合わせて、皆がそれに続いていけば最終的にゴールが取れました。何故ならロナウドはゴールを決めることを常に考えているから、ゴールを取る目的でまとまったチームになるんですね。訓練された良き選手たちが居るので、それで勝てます。しかしロナウドが居ない現在、お互いがお互いの様子を見ているので主導権を握る人がおらず、まんまと相手のペースに乗ってしまうのです。
そこで腕を見せるのがジダンだろう、、という話になりそうですが、ジダンはそうは考えていないようです。ピッチ上でリーダーシップを発揮しようとした戦術家達がレアルマドリードのロッカールームから消えていくのは歴史が証明していますし、その分ジダンはやりすぎなくらいロッカールームのマネジメントに腐心しているようです。ジダンという監督は現状がベストでないことに気付いても、勝っている間は絶対にスタメンを変えないのです。
ヴィニシウスの躍動
そして犠牲にされているのが、新進気鋭の若手達。特にヴィニシウスとバルベルデ、そしてウーデゴールですね。ある意味ではヴァランもそうと言えるかも知れません。
実際の所ヴィニシウスは、チーム内でアセンシオに次いでベンゼマを助ける動きをしているウインガーです。ヴィニシウスが特に良いのは、相手ハーフスペースの裏を取りに行くランニングですね。アセンシオもできますが、スピードや利き足を考えたら下記の青色矢印になります。黄色の矢印のように相手WGを釣りつつCBの脇を取れるヴィニシウスに軍配が上がりますね。因みにアザールはほとんどやらない印象。
この動きによってマーカーを強制的にディフェンスラインに押し込み、CBを引っ張り出すことができます。ベンゼマのプレースペースを広げ、かつクロース等中盤の選手がバイタルエリアに侵入してゴールを狙えます。
しかしベンゼマはヴィニシウスがあまり気に入らないご様子。無駄なロストという面ではよっぽどバスケスの方が多いと思いますし、中でコンビネーションできない点は右のバスケスロドリゴでも同様です。左がアザールの場合は張りたがるのでベンゼマはより孤立しますのでヴィニシウスがベストの働きをしているように見えますが、現実は複雑怪奇です。
右サイド:若手選手の犠牲
今シーズン、昨シーズンの輝きをひそめているのがバルベルデです。彼は元々、必要に応じて右WGの役割もできるIHとしてブレイクした選手ですが、イスコの相対的な立ち位置の低下によって右WGにバスケスの起用が増え、相関的に立場を落としてきました。
昨年のCLGSでのPSG戦、大外カルバハルに預けてから内側を走って裏を抜けて生んだゴールは記憶に残っている方も多いでしょうが、その時はイスコを採用して純粋な右WGがいない形でした。彼の特徴もまた、ヴィニシウスと同じよう馬力を発揮したインナーラップです。
しかし前述の通り、バスケスがWG出場した際、そのようなプレーは絶望的に活かせません。大外で受けた際にずっとSBにピッタリつかれた状態で受けようとするので、内側に再展開なんて出来るはずもありません。
ではなぜそうなるのか。大外のプレーヤーに求められるのは中盤と同じ高さで前を向いてボールを受けることだからです。しかしこの仕事をこなすのには、大外選手目線での満たさなければならない必須条件があります。
一つ目がプレースペースの確保です。大外で張る選手がずっと付かれ続けているのではそこから展開できず、ボールがDFラインを行ったり来たりするだけになってしまいます。SB が低い位置からタッチライン際を上がることで攻撃参加する場合、元々のマーカーは居ないのでフリーで攻撃参加できます。その場合、相手WGがマーカーになれないように内側に陣取って楔を待つ選手の存在が欠かせないのは言うまでもないでしょう。
二つ目がボール保持力です。サイドというのは追い込まれやすい位置なので、相手に簡単に詰めさせない技術やスピード、突破力を備えていて、ルックアップ出来ることが必要になります。ウイングが張ったまま降りて受ける場合は特に顕著に求められますね。
ヴィニシウスやロドリゴの左、もしくはアセンシオの右等で利き足の逆サイでウイングが張っている時はボール保持時に相手との間に体を入れて内側を向けますので、大外にいてもボールが回ります。その間にSBは内側をするするっとあがあっていけますので。ヴィニシウスは単純に裏抜け一本も怖いですね。
アセンシオは純粋に足元の技術と突破力、裏への走力で利き足サイド大外でもやれちゃう選手ですが、相手を背負ってるときに無理に大外では受けようとしないイメージですね。そして受ける時は相手とタッチラインの間に巧みに隙間を作る駆け引きを見せます。アセンシオとバスケスではウインガーとしての基礎技術に差がありすぎて比べるのも野暮でしょう。
サイド攻撃の大原則
この問題から見えてくるサイド攻撃の大原則、それは大外1枚、中3枚(後列込み)です。なぜ大外に1枚か。2枚目以上は消えるからです。
うまく行く場合の話を先にした方が分かりやすいでしょう。大外の選手から狙う展開は大きく分けて3つあります
1つは中へのクロス。これは最も速くゴールに迫る攻撃です。リーガのチームはこの時点での高速クロスを優先順位高く行ってきます。速いクロスに点で合わせる攻撃で得点をもぎ取ってくるという攻撃を下位のチームでもトレーニングを積んでものにして来るのですから、怖いリーグです。
2つ目はハーフレーン最奥、深い位置にボールを送り込む攻撃です。逆サイドだとこのゾーンはヴィニシウスが得意ですね。走り込む、もしくは大外のマークを引きちぎって侵入してくるシーンが目立ち、迫力満点です。ここを取りに行くのが得意な右ウイングはレアルマドリードにはおりません。モドリッチやバルベルデといったIHが得意としているプレーですね。アセンシオもできますがあまりやりたくは無さそうです。右足ドリブルがかなり不得意ですから。(クロス、シュートは蹴れます。)
3つ目はライン間です。いわゆるバイタルエリア。ここで受ける選手はベンゼマ・ヴィニシウスの中の動きやバルベルデのインナーラップによって乱れた陣形に対してチャンスメイクをするセンスが求められます。
相手のスライドが速くてどれも十分なチャンスが認められない場合、逆サイドになるだけ早く展開するためにヴァランかカゼミロを経由して逆サイドへの展開を狙いたいです。ハーフレーンを裏抜けする人、そこに入っていく人の2人が適切に動けば戻すコースが空きます。
次は上手くいかない大外2人のパターン。まず、ロブのボールを裏で受けれるようなかなりスピードのある選手でないとヴァランからバスケスのパスが通らないので、カルバハル経由になります。カルバハルにパスが渡った時には正対しているWGが詰めれるので、分かり切ったタイミングでバスケスにパスが来ます。右に置かれたヴィニシウスなら体で相手をブロックしつつメンディーの裏向けを待ち、持ち前の技術で前も向けてしまったりしますが、バスケスにはそれは無理です。3つの選択肢が全て狙えません。
その上でモドリッチやカルバハルがバスケスをサポートすることもできません。①モドリッチが裏に抜けても単純にパスが出ないから効果が無い②スペースが空かない・バスケスに余裕が無いのでカルバハルも上がれない という現象が起きます。
これによって、カルバハルがインナーラップしてヴァランへのコースを開けることが出来ない、もしくはあまり時間と余裕、パスコースが無い状況でヴァランにボールが戻ってくることになります。
このようにして右IHはモドリッチでないとプレーすることすらままならない地獄と化しました。モドリッチを入れれば何とかなるとジダンが思っていることこそが事態を根深いものにしているのかもしれませんね。
ですがモドリッチ以上に、バルベルデがかき乱した後のバイタルエリア右半分を使うのを得意とする選手がいます。それはウーデゴールです。昨シーズンはバルベルデの役割でポルトゥが内側を裏抜けしてスペースを作り、その空間からミドルシュートやらスルーパスやらでウーデゴールは輝きを放ちました。今のにっちもさっちも行かない右サイドのこの状況を打破するのなら最も効果的な方法だと思います。ジダンが今後バルベルデとウーデゴールを同時起用するかは注目です。アセンシオもこのエリアなら、弾丸シュートやドリブル、コンビネーションでの崩しや高精度クロスなど、攻撃面で高い期待を持てますのでバルベルデとの同時期用を是非見たいですね。
ヴァランの犠牲
今シーズンの最たる犠牲者、ラファエル・ヴァラン。もちろんその原因も右サイドの不調です。そして恐らく、その居心地の悪さを最も肌で感じているのも彼です。
最も彼が酷評された試合はシャフタール第2戦。この試合はシャフタールの4141に攻守が完全に分断され、1-5-5という新たなシステムを発明してしまった試合でもありました。この試合特に序盤は攻撃が全く機能しないというわけでもなく、アセンシオとウーデゴールが絡んで上手くゴール前に侵入したり、モドリッチとウーデゴール、ベンゼマが絡んでチャンスになったり等ウーデゴールの起用は活きていました。たた、中盤が消滅し、前線にボールが渡らないようになってしまっただけです。(右サイドの攻撃は終始死んでいましたが。)
この試合ヴァランは左サイドにバレバレの無理なフィードを繰り返しましたが、それは楔を当てるところに相手がいないからです。バスケス−カルバハルやロドリゴ−カルバハルだとカルバハルが内側を取りに行ってこの問題はある程度改善を見せたりしますが、この試合はロドリゴ-バスケスでしたので両者ともに大外で詰まり続け、そこを自分が使うべきでないと分かっているウーデゴールは内側に留まり、モドリッチが仕方なくたまーに入っていって使ってチャンスを作っていましたが、大外に二人いる状況では上手く行かないです。
上の図で説明した通り、バルベルデがハーフレーンを裏抜けしたところにIHのモドリッチが顔を出し、そこを相手WGが消しに来たらCBのヴァランがフリーで受けられる構図のはずが、バスケスに流してもマークがずれないままバスケスからボールが帰ってくるのでヴァランはキーパーに戻すか逆に蹴るしかないわけです。
しかしそんなバレバレの、しかも相手が全くスライドを必要としていない状態でのキックが通るはずもなく、ヴァランも「これ蹴っていいのか?」と半信半疑で蹴っている様子でしたので当然カットされていました。
アポトーシスの解決法=左利き2ndトップ
シャフタール戦ではウーデゴールがいたことによってベンゼマが中央から出ずに済みました。アンカーの両脇を二人で突けるからです。そしてエルチェ戦・シャフタール戦に共通していた右サイドの大外縦並び問題を解決するために右WGから右利きの選手を排除、大外をカルバハルorバスケスのSB1枚に任せ、バルベルデ+セカンドトップ(ウーデゴールorアセンシオ)で攻略させるのが最善策でしょう。
実際インテル戦はバスケスの前にアセンシオ・バルベルデを並べて上手く行っており、もう少し手心を加えれば決勝ラウンドの強豪たちと渡り合えるようになると思います。それだけの選手達を揃えていますから。相手に合わせて得点力重視ならアセンシオ、遅攻を重視するならウーデゴール。右サイドにいつまでもバスケスを使い、アセンシオを左で、ウーデゴール・ヴィニシウス・バルベルデをベンチで遊ばせておく余裕なんて無かったのでは、、と思います。昨シーズンのレアエルマドリードはCL16強というのがヨーロッパでの立ち位置なのですから。
18節のレアルマドリード:vsオサスナ
18節終了時、主力選手が全員戻っているにも拘らず既にバルサに勝ち点を抜かれる予感が見え始めてきました。アザールが中々戻らない状況で壊死している右サイドを放置したツケが回ってきました。
シーズンも佳境に入ってくる時期で、もうどのチームも形がある程度出来上がっていないといけない時期です。序盤つまずいたバルサも既にチームが仕上がった感があります。勝ち点でもレアルマドリードを今に追い越すでしょう。
この試合、選手の配置はかなり良さそうに見えましたが、チームとしては機能していませんでした。配置が適切なので個人個人ではある程度機能はしていましたが。中でアセンシオ・アザール・ベンゼマが絡んで面白いシーンもありましたが数も質も低かったですね。シーズン序盤ならこれからって感じでこれでも良かったでしょうが、もう年が明けてますからこれでは厳しいですね。
この試合、オサスナは4141守備を採用。4141と442に素早く可変してくる相手には連動性が無い攻撃では倒せません。それでも勝てるのは、①ロングカウンターを決めた時②高い位置からショートカウンターを決めた時③セットプレーもしくは相手のミスで決めた時ですね。今期のレアルマドリードの得点はほぼ全てこれのうちどれかです。勝ち点を安定して稼ぎたいチームのサッカーではないですね。
とはいえこの試合、もしカルバハルがサスペンション(累積警告による出場停止)で無ければと思わせる試合でもありました。アザールはベンゼマに近い位置でプレーし、アセンシオも同様にSB内側に駆け引きしながら裏にも抜け、ネーションズリーグでクロアチアをボコボコにした頃を思い出させる動きでした。あの時の右サイドコンビが見られれば非常に面白くなると感じさせました。
しかし、バスケスの立ち位置がかなり低く尚且つアセンシオの動きにも全く連動しません。バスケスにボールが渡っても相手WGに直ぐ詰められてブロックも崩れず、そこからの展開は無いですね。相手WGを最終ラインに押し込んでIHをサイドまでスライドさせないと相手を崩せません。
そうすると、それを座して見ているモドリッチではありません。3つの選択肢を取ることで特に敵の左ウイングに対して駆け引きを仕掛け、ボールを簡単に奪われることを防ぎます。
そもそもの問題はというと、バスケスの位置が低いために相手左左WGがアセンシオへのコースを切ってからパスの出たバスケスに詰められる点。そこに対しての対処は①ヴァラン=バスケス間に落ちる②ハーフスペース(左WG手前)に陣取って相手をピン止めする③ライン間を取りに行くです。
②と③は結果的にアセンシオへのパスコース・アセンシオのプレースペースを奪って殺してしまうことになるのでいろいろした挙句に結局①に落ち着くのがいつものおパターンですが。相手が4141でSBの位置が低い時にやるのは無意味です。
相手が442の場合、ヴァランが持った時にモドリッチが降りることで相手ボランチについてくるか来ないかの決断をさせることができ、来なければフリーで運ぶなりどこかに付けるなりで早く展開できます。相手が来たらベンゼマ・アセンシオで残ったボランチの脇を狙うチャンスです。ヴァランが持ち運んでも良いですね。
しかし4141の場合、ベンゼマ・アセンシオの使いたいスペースは相手アンカーとIHによって封鎖されているのでモドリッチやヴァランのプレーを制限しに行く必要も無ければ、カゼミロに中盤からアタックしつつFWがラモスを切ることでクルトワに戻させることが出来ます。これでは単に押し戻されただけになり、選択肢がなくなることを恐れたヴァランがやはり逆サイドに蹴ることになっていました。
そこで、この試合何故右サイドだけにこの問題が起こったのかが肝要です。4141相手が4141の場合に須らくこの問題が起きるわけではなく、SBの位置取りが低いのとセットになっている問題だということです。
守るオサスナ側は、メンディーに自由にクロスを上げさせたくない・だからといってSBにSBで対応してアザールに裏を使われたくないという気持ちですから、SBにボールを渡らせたくない訳です。だからWGがSBを切りつつクロースに寄せる・もしくはアザールを抑えつつIHが出て行って押し返そうとしますが、その際どうしてもアザールが空いてしまい、中や外を経由して使われるのが怖い。なので中盤のスライドが必要になる。
WGがSBについていくパターン
それから大外はSBがぴったり付いてアンカーがサポートするパターン
いずれにしても、中盤ラインの選手はしっかり連動してスライドしないと楔のパスを差し込まれることになります。なぜなら、相手を5バックにして守備側の2列目最も外側の選手がクロースの侵入を防ぐために対応しているからです。
この状態でクロースやラモスから高い位置のカルバハルに一気に振られた場合、相手の最左翼の選手とモドリッチでは絶対的にモドリッチの方がスライドが速いです。
モドリッチの判断の速さもありますが。そもそもモドリッチの方が外側にいるので。カルバハルは余裕をもって自由に3つの選択肢を選べますね。時間がかかり過ぎて相手がスライドしてしまったらもう一度逆に振り直せばいいわけです。
そのように左右に振りまくるサッカーをし、クロスの精度・空中戦の強さも相まって勝ちまくっていたのがロナウド時代のマドリーでした。昨今のリーガでは空中戦の強さを軸にハーフスペース裏・空いた中央などを上手くつくスピーディーなサッカーをしているのがセビージャですね。魅力的なチームです。レアルマドリードもぜひそうなってヨーロッパを勝ち上がってほしいですね。