観劇日記 - next to normal

※この記事は作品のネタバレを含みます。


たまたまご縁あって観劇してきました!

あらすじはこちら↓

母、息子、娘、父親。普通に見える4人家族の朝の風景。
ダイアナの不自然な言動に、夫のダンは優しく愛情をもって接する。息子のゲイブとダイアナの会話は、ダンやナタリーの耳には届いていないように見える。ダイアナは長年、双極性障害を患っていた。娘のナタリーは親に反抗的で、クラスメートのヘンリーには家庭の悩みを打ち明けていた。
益々症状が悪化するダイアナのために、夫のダンは主治医を替えることにする。新任のドクター・マッデンはダイアナの病に寄り添い治療を進めていくが・・・。

公式サイト「ストーリー」


以下、感想をつらつらと書いていくだけなのですが、
本当に、大きなパワーを感じる作品でした!!

それぞれがなんとか家族の形を繋ぎ止めようともがくけれでも、うまくいかない。そんな、どうしようもない閉塞感。

ダイアナと、そしてダンも実は抱えている、乗り越えられない深い深い悲しみ。

家族のはずなのに、まるでひとりぼっちのナタリー。

登場人物それぞれが繊細でパワフルで、そのエネルギーを一気に浴びたような感じ。頭にガツンと衝撃が走って、帰り道ずっと今観てきたものについて思いを巡らせていた。

絶賛子育て中なのでダイアナの苦しみが痛いほどわかる。自分も同じ状況ならこうなってしまうだろうなと容易に想像ができてずっと苦しかった。
特に「息子さんの部屋を整理して〜」と精神科医に勧められて息子の持ち物を整理するときに、おくるみ(多分)やスタイを抱きしめて泣く姿を見て大号泣。

ゲイブを頭の中でずっと育てて、ゲイブが立つところも話すところも全て見届けてついに彼は18歳になってしまった。それを聞いただけでもダイアナがどれだけの苦しみを背負ってきたのか感じられる。ナタリーがいたからこそ、ナタリーのできることが増えるたびにゲイブもこうだったのかなって、ダイアナのなかのゲイブは育っていってしまったのかな。

後々のシーンでダンが夜通し赤ちゃんが泣くのを抱きしめていたみたいなことが判明するけど、きっとこれは腸閉塞で泣いてたんだよね。赤ちゃんが泣くことの普通と普通じゃないの判別って第一子だとより難しいし、不安で病院に連れて行っても先生に大丈夫と言われたらそれに従うしかない。
最後の方はダンにもついにゲイブの姿が見えた(crazyの側に寄った)わけだけど、それはゲイブを失った苦しみをダン自身が乗り越えられていなくて、愛する妻もどこかに行ってしまった喪失感でついにcrazyになっちゃったのかなと。苦しい。


あと、私がこの作品で面白いなだと思ったのが「男性陣の愛情が深いなぁ」ということ。ダンしかり、ヘンリーしかり、愛する人がcrazyな状態にあっても愛し続ける、支え続けるよという強いメッセージがとても優しくて強いなと思った。
ダンの振る舞いや言葉はベストとは言えないようにも見えるけど、愛する人が目の前で壊れて踊り続けるような日々の中で「どうすれば元のきみに戻ってくれるのか?どうしたら幸せになれるのか?」を考えたらああなるのは必然のような気がした。

あと、記憶をなくしたダイアナが「何か忘れている」って息子のことを思い出そうとするのも、すごく苦しかったなぁ。そりゃあ、忘れても忘れられないよねって。でもそうやってダイアナとダンが「あのこと」(ゲイブの死)に囚われているのを見れば見るほど、ナタリーの孤独が浮き彫りになってしんどかった。
きっとダイアナもダンもナタリーのことを愛してないはずはないし、重ねてきた思い出もたくさんあるはず。だけど、ナタリーから見たら両親はずっとお互いのことしか見ていないし、母親は見たこともない存在しないお兄ちゃんに永遠に囚われているしで、苦しい。

そんなナタリーが発した「next to normal(=“普通”の隣)でいい」という言葉にダイアナはある種救われて、光の中に向かっていけるわけだけれど。
このnext to normalという言葉も、英語表現ならではという感じがした!日本語にはうまく訳せないよなぁ。普通とちょっと違ってもいい、でもないし、「普通の隣」としてしまうと日本語単体ではニュアンスが伝わりづらいと思う。このnext to normalというタイトルが劇中で回収されるところ、すごくゾクゾクしたので伏線大好きなひとにもぜひ観てほしい。

最後のダイアナの選択、物語の結末だけれど、御伽噺のようなハッピーエンドではないところがよかった。
地に足をついて前に進む。苦しみや悲しみ、乗り越えなければいけない壁があっても、日々を暮らして歩んでいく。そこにはとてもリアルで、でもどこか物語的な光を孕んだ結末があったように思った。

きっと10年後に観たらまた感想が変わってるんだろうな!
私が人生を歩んでいくたびに、同じ作品でも視点や感想が変わる。だから舞台は面白い!

next to normal、とても良い作品でした。
またご縁がありますように!


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