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「どちらが先に口火を切ったのか、もうわからない。」vol.5

ゲスト:戸塚泰雄(nu)、ucnv
トーク・ゲスト:滝口悠生
2017/10/14 @三鷹scool

「口火シリーズ・大谷による各回の記録とレヴュー vol.5」

 2014年前後から、「吉田アミ、か、大谷能生」名義で、グーグルドライブをプラットフォームにして小説を書いており、それを元にして2015年に舞台作品『デジタル・ディスレクシア』を発表したのですが、アイディアを盛り込みすぎて、400字詰め250枚以上の長編になってしまい、なかなか発表の機会が得られないままになっていました。2017年に入ってあらためて見直してみて、テーマをしぼって短編にリライトすれば、もっとシンプルに読むことが出来るものになるかも……ということで、「口火」シリーズと並行して書き直し、このあたりでようやっとまとまってきたので、第五回は「活字」というか、「デザイン」というか、書いたものが「本」として物質になるまでの時間を扱いたい、ということで、旧知のデザイナー戸塚泰雄氏に声をかけて、ゲストとして参加していただきました。テーマは「言葉は活字になるとき、何が消えて生まれるのだろう?」。オリジナル書下ろしの短編小説が、文字からテキスト・データになり、また、そこからレイアウトされて一冊の本になるまでの「時間」。実際に何冊もの本をデザインしている戸塚君にお願いして、書きあがった文字データをいろいろなかたちで組んでもらい、プリントしてもらい、また映像に録画し、手書きのものも含め、それらをステージに配置して、そのなかでもう一度、声の状態にその文字たちを戻してみる。そのようなパフォーマンスをこの回ではおこないました。

 〈文字はもともとデジタルな存在で、そこにはかならず体系が前提されています。一挙に与えられている差異の体系のなかに、あらためて声を位置づけることが、言葉を書くとうことでしょう。というわけで、「即興演奏」と「文字を書く」という行為は、きわめてことなった原理から成り立っているものなのですが、今回は、文字が書かれる行為のなかにある「時間」の痕跡を、さまざまなかたちでステージに乗せ、そのなかで(その上で? その下で?)、書かれ終わった言葉から、それが書かれる以前の「声」の曖昧さへと遡行するように、演奏をおこなってみようと思っています。〉
 
 と、大谷は当日パンフによる前口上で書いています。ただ、実際には、手書きの文字とフォント化された文字、本になった文字が「声」に与える影響の差異はなかなか微妙であって、ライブ上でその影響を「声」のパフォーマンスとして提示することは難しかった。もうちょっと練習というか、書かれ終わった言葉の各段階に止まりながら読むことの実践をおこなっておくべきだったな、とライブ後に反省しました。

 演奏中、わたしたちが書いていたさまざまな文字を、「朗読DUO」時代から何度も共演をお願いしているデジタル・アーティストucnvがグリッチさせてscoolの壁にリアルタイムで投射し、二人で読む声に崩れてゆく文字が重なり、その崩壊の加減は(グリッチについてはwebなどでその内容を確認してみてください)声、言葉、文字、フォント、デザインされたページ……というそれぞれの段階をいったりきたりしながら、言葉が変化してゆくさまを充分に見せてくれたと思います。

 また、ライブの一週間ほど前に、試みとして、グーグルドライブ上にあらたにドキュメントを作り、ページを公開、アクセスした人は誰でもそのページが読め、編集も出来る、という「ウェブ上での公開制作ライブ」をおこなってみました。夜中の23:00~24;:00までの一時間、どのくらいの人が見てくれるかな〜と思っていたのですが、ツイッター上での限定的な告知にも関わらず、おそらく15〜20名ほどの人が閲覧し、そのうちの三人ほどが、その場で書いている文字をちょっと書き換えたりしてくれた模様です。それらの模様も映像に撮影して、当日のライブで使用しました。

 ライブ後、滝口悠生くんに再び来ていただき、今回の演奏と「口火」シリーズ全体についてのディスカッションをおこないました。「口火」の作業を「文学」の仕事ときちんと評価していただけてありがたく思っています。

 この回が昨年2017年の10月。なんだかんだ隔月ペースで続けてきた「口火」シリーズ、ここで年を越しまして、次回はいよいよvol.6です。またのちほど抱負をnoteにUPし、また、2015年の舞台作品『デジタル・ディスレクシア』についても解説を書いてみるつもりです。

『口火 Vol.5』記録写真 : Hideto Maezawa

『口火 Vol.5』写真アーカイブhttps://www.flickr.com/photos/amiyoshio/albums/72157690918700516

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