「酒場のぷりンス」Vol.5ぷりa.k.a.星葡萄
割烹着のおかみがつくる定番の
おばんざい
駅から徒歩10分ほどと決して立地条件が良いわけではないが、先輩や友人や恋人、大切な人を紹介したいときに通う居酒屋がある。昔はその通り沿いに小さな市場があって、魚、肉、野菜など、なんでもそろっていた。種類も豊富で近くの飲食店が仕入れで使うような市場。そのお店は市場からまっすぐすすんだ道沿いの住宅街にある。開店してから50年以上は経っているはずで、店内の作りも昭和の雰囲気が漂うが、意外にも天井が高く、モダンな印象。奥には10名ほどの座敷もあり、壁には魚拓やお店をイメージした油絵、天狗のお面なんかもさりげなく飾ってある。店の真ん中に鎮座するコの字のカウンターの上には、手作りのおばんざいがずらりと並び、寿司のネタが入るような冷蔵ケースの中には刺身や焼き物で出す魚や銀杏の串が。
おばんざいのメニューは、日によって変わる。カウンターに立つ女将の頭上には四角い蛍光灯の照明がふりそそぎ、割烹着を着た粋で笑顔がかわいらしい女将さんを引き立てる。「DJブースみたい」一緒にきた友人はそんな風にも例えていた。灯油ストーブの上にはしゅんしゅんといいながらゆるやかに沸騰し続けるやかん。BGMは流れておらず、テレビの音量も小さめで静か。とにかく居心地が好い。
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