(記録)入学11ヶ月目、12ヶ月目と1年の振り返り。

 昨月末にウクライナ戦争が始まってしまい、少しばかり筆が遠のいておりました。さて、今年の成績が出揃いましたー。最終的に25教科履修で1教科だけレポート不可且つ本年度中の再提出ができない科目が出てしまいましたが、無事24教科38単位の取得見込みとなりました。卒業要件が124単位(内専攻30単位)なのに対して38単位(内13単位)なので、卒業演習を除いた単位は3年次で完了させるという目標に沿った進捗です。頑張った、私。1科目落とさなかったら40単位に乗ったのでその点はちょっとやっちゃった感はありますが……。

 さて、では今年度の成績と振り返りをざっとしていきたいと思います。

1:哲学系
 2教科取りました。一つはざっと哲学史を2日で学ぶという強行日程でしたが、無事88点。駆け足で哲学史を学ぶというのは、100分de名著よりも濃密…… もう一つは哲学の文献複数から2つピックアップして意見を交えてレポートというもので、こちらはルソーの『社会契約論』と見田宗介の『現代社会の理論』をピックアップして、公正な社会契約と資本主義の近い将来の可能性をレポートしました。レポート88点、単位習得試験80点ということで平均84点で着地。

2:ことばと表現
 こちらは論述していく基礎を学ぶ科目で、一番最初に取った科目ですね。レポートはいわゆるなろう系小説で一躍有名になった言葉「なーろっぱ」についてと、高円寺の町が持つ文化的重層性でまとめました。単位習得試験はレポートをまとめる際の留意点を述べよというテーマで、こちらはショウペンハウエルを引用して無難にまとめ、平均87点。レポートの精度をもう少し上げられれば90点いけたなぁという感じです。惜しい。

3:論述基礎
 こちらは論述していくための基本的なお作法を学ぶ科目ですね。「問う」ということを中心にレポートし、『プロフェッショナル仕事の流儀 庵野秀明スペシャル』『ダヴィンチ・コード』から謎本ブームまで、なんでこんなに幅広く取り上げたのか謎ですが、設問がいくつかあり設問ごとにいろいろと引用を変えていきました。単位習得試験では「剽窃」がテーマで無難にまとめて着地85点。こちらもレポートの精度をもう少し上げられれば90点目指せたかなぁという感じです。

4:情報
 こちらは情報学の基礎を押さえる科目で、レポートでは主に東日本大震災の福島原発を巡る風評の展開をメディアと情報学の観点でまとめました。単位習得試験ではウェブがテーマとなりましたので、SNSと政治の、主にエコーチェンバーやフェイクニュースの問題、プラットフォーマーの検閲の問題点を指摘しまとめて着地84点。まずまずかなと思います。

5:心理学
 こちらは心理学の基礎を押さえる科目で、レポートは課題テキストの要点をまとめる、単位習得試験もそれに沿った内容でしたので、大きく苦戦はしなかったものの、もう少し独自の着眼点を出せると良かったかなという点が反省点かもしれません。内発的動機づけの効用については無難にまとめられたと思います。着地86点。

6:社会学
 こちらはテキストは桜について。意外とソメイヨシノの歴史は浅いということは非常に勉強になりました。桜を想起する例として取り上げたのは名作ゲーム『サクラ大戦』から初音ミク『千本桜』など。レポートはそれ以外にテーマとして夫婦同性・別姓の議論を戦国期から明治民法の制定過程をまとめました。関口すみ子さんの『御一新とジェンダー 荻生徂徠から教育勅語まで』を引いています。単位習得試験では改めて桜に立ち戻ることになりましたが、外国人定住者の増加により桜に対する印象の持たれ方もまた変わるのではないかという点をまとめてみましたが、若干散漫な内容となってしまいました。着地77点。残念。

7:宗教学
 こちらは課題テキストがヨーロッパ社会のムスリムの問題だったので、非常に歯ごたえがありました。レポートはムスリムの実践への理解が無いまま無理やり西洋の自由を押し付けても駄目なのでは?ということをまとめましたが、論述構造が複雑になってしまい、レポートをまとめる点で課題が残りました。単位習得試験でもあらためてイスラームと民主主義の関係をまとめましたが、恐らくまだ消化不良のところがあるのだと思います。全体にまだ散漫となってしまいました。着地81点。もう少し上を狙いたかった科目ではあります。

8:詩学
 こちらは詩学の入門編ということで、指定テキストの中から多和田葉子さんの『エクソフォニー』を取り上げてみました。このエッセイ集とてもおもしろいのでオススメです。ただそれをまとめるだけでは芸がないので、同じく多和田葉子さんの『穴あきエフの初恋祭り』に加えて、語源探検として水谷智洋さんの『改訂版 羅和辞典』と諸橋轍次さんの『中国古典名言事典』も取り上げてみました。単位習得試験では改めて取り上げたテキストをもとにして私見を論じよというテーマでしたので、改めてまとめなおすことになりましたが、それだけだと芸が無いので一応アリストテレースの『詩学』も参照してみました。着地90点。頑張った。

9:芸術教養基礎
 この科目は芸術ってそもそもなんだっけ?(雑)ということをおさらいする科目ですね。おさらいと言っても私は芸術史も芸術論も何も知見がないので、ほぼ初見さんどうぞ状態でしたが…… レポートで何を書いたかもすっかり覚えていないのが問題ですね…… ともあれこのスクーリングが他の芸術系の科目に活きています(たぶん)着地86点。

10:美学概論
 こちらはレポートで危うく不可くらいそうになったなかなか刺激的な科目でした。物語と美学の関係についてレポートしたのですが、いきなりやるには背伸びし過ぎましたね。ガッツリ論旨がよく分からんところが多いとの指摘を頂いてしまいました。単位習得試験はカントの「美の無関心性」についてということで、こちらは私がカントむっちゃわかり易いと思っていた部分だったので試験で大きくリカバリーして着地75点。レポートを手堅くまとめていれば80点は余裕越えだったはずなので、大いに反省。

11:都市概論
 こちらは主に建築とかランドスケープやる人向けの基礎科目なのですが、「せっかくだし」という気軽な理由で取ってみました(なんだそれ)。レポートは杉並区の都市計画についてその不備点を中心にまとめました。なんとびっくりレポートだけなら90点。我ながら驚き。『杉並区まちづくり基本方針(杉並区都市計画マスタープラン)』は本当に中身が適当過ぎるので、杉並区民の方は一読オススメ。単位習得試験はもう少し広く、日本の都市全体についてがテーマでしたが、こちらは京都、札幌、熊本などを挙げてまとめてみましたが、やはり専門外どころが門外漢の極みが挑むにはなかなかハードルが高く、試験はギリギリ80点。ということで平均85点。とはいえ、頑張った方だと思います、はい。

12:芸術史(近現代)1
 こちらは近現代の芸術史をざっと駆け足で学びましょうという科目で、文字通り駆け足でざっと学んでいく感じになりました。こちらはレポート試験のみで、レポートはパブリック・アートのあり方をまとめてみました。ただまとめるのは芸がないので(芸がない表現の多用厳禁)、文化庁HPの「文化芸術推進基本計画」で文化行政を押さえてみたり、森美術館で悪い意味で問題になった会田誠展のステートメントなどを踏まえて、公共とアートのあり方、そこで生じる問題についてまとめてみました。着地90点。ほら、芸術教養基礎がここで活きているんですよ(たぶん)

12:芸術史(近現代)2
 こちらはアジアやアフリカ、ファッションや写真、女性芸術家といった、西洋芸術史からもれがちな分野を駆け足で学びましょうという科目ですね。レポートとしてはどれか一つテーマを取り上げて論じよということで、テーマは「写真」を選び、写真の美術史における歴史をおさらいしつつ、蜷川実花を取り上げて、そこから写真芸術の今後の発展の可能性についてまとめてみました。着地90点。ほら、やっぱり活きてる(くどい)。

13:神話学入門
 こちらは神話のモチーフは様々な作品の中に見いだせるよねということを学ぶ2日間のスクーリング。取り上げられる作品がほぼ現代作品(しかも概ねサブカル)というなかなか楽しい講義でした。レポート試験で『攻殻機動隊』を取り上げようかと思っていたところ、2日目の講義でばっちり出てきてしまい、試験は急遽取り上げる作品を変更し榊涼介さんの『ガンパレード・マーチ』をテーマに洪水神話のモチーフをまとめて無事着地82点。ちょっと論旨散漫になりそうな感じもありもう少し低い点も覚悟はしていたのですが、まずまずです。

14:世界の古典
 こちらはテーマがソポクレースとギリシャ悲劇、時代が飛んでカミュの『ペスト』と『異邦人』でした。初日はギリシャ古典の歴史から「悲劇」とは何かという基礎を押さえつつ、2日目にカミュを取り上げて解釈してみようといった講義でした。この科目はレポート試験失敗したなぁという典型で、スクーリング講義は2日目の最後に手書きでレポートまとめるんですよね。普段手書きしないので、時間内にまとめ切れずかなりやらかした感があったのですが、なんとか70点は頂きました。ありがたい……

15:短歌と俳句
 こちらは完全に実践形式で、短歌や俳句の歴史的な話は触りだけで、2日間の講義はどちらかといえば歌会ワークショップ。散策してその場で見たものをテーマに詠んでみましょうというものでした。語彙貧困な私は『感覚表現辞典』『助詞・助動詞の辞典』『てにをは辞典』と三冊の辞典を持ち込む重武装で望みましたが、いやはや皆様感性が豊かで恐れ入りました。試験はその場で十句詠んで提出という、これまた瞬発力が問われるものでした。皆様感性豊かなのでやや焦りましたがなんとか83点。まあ良しとしましょう。

16:文化批評概論
 こちらは様々な批評形式の基本を学びましょうという科目で、これもレポートで失敗して単位習得試験で挽回した科目ですね。指定テキスト以外では、北村紗衣さん『批評の教室 チョウのように読み、ハチのように書く』を参照しました。レポートでは宮澤伊織さんの『裏世界ピクニック』と幾原邦彦さんの『少女革命ウテナ』、『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』を取り上げたのですが、「その選定でその批評は駄目でしょ」と見事にズバズバ指摘を頂きまして、いやはやありがたいものの評点は散々でした。単位習得試験では気分を切り替えて、スタジオぬえの『超時空要塞マクロス』の第28話以降の延長パートをマルクス主義批評してみるという結構思い切ったまとめ方をしたのですが、これが結果オーライで85点まで挽回して平均着地75点。レポートをもっと適切なものにまとめていれば80点以上は狙えたはずなので、完全にレポートのチョンボですね……

17:文芸入門
 こちらは読むことと書くことの基本をおさらいしましょうということで、小説・文学を読むとはどういうことなのかといった姿勢の問題から、説明や解釈、ジャンルに至るまで基本をおさらいする講義でした。しかーし、私はここまで明治文学とか純文学とか可能な限り避けるということをしてきてしまったので、勉強になった反面苦戦もしました。レポート試験では川端康成の『弱き器』をテーマに選びましたが、あの作品は本来は四部作から三部作に改変されて且つそのうちの第一作なのに三作とも別の作品として発表されているというなかなか取り扱うのが難しい作品で(というのを講義の前に論文を調べて知りました)、苦戦しました、はい。着地78点。80点は欲しかったなぁ。

18:文芸Ⅰー1
 こちらは近代日本文学の講義で、二葉亭四迷から芥川龍之介まで8名の作家の作品を一つずつピックアップして読解していこうという講義でした。大御所の作品読んできてない私が悪いのですが、改めて読むとなかなかおもしろいですね。ピックアップされた作品それぞれに論文をいくつか引っ張ってきて事前勉強していたおかげで結構身になったかなと思います。レポート試験では太宰治の『女生徒』をテーマにまとめてみました。あの作品、翻案元の有島淑の日記があるんですよね。講義後に青森県近代文学館様で再販されていたのを見つけて早速取り寄せてみました。この日記本当に面白いですし資料価値高いです。あの時代に結婚だけが女の幸せじゃないよねということだったりを日記でしっかり残してくれているので、歴史で学ぶ女性解放運動や婦人参政権運動だけではなく、あの当時の女性の葛藤や先進性を学べました(ここは講義とは関係ない部分もありますが)。着地は80点。

19:文芸Ⅰー4
 こちらは小説の構造を学ぼうということで、語り手や視点の問題など、小説構造の基本を学ぶ講義でした。指定テキストのデイヴィッド・ロッジの『小説の技法』は大変勉強になったのですが、レポート試験で何を書いたか覚えていない……(PCがクラッシュして元原稿が手元にないのが悪い)。ともあれ、着地80点なのでそこまで酷いことは書いていないはず……。

20:文芸Ⅲー3
 こちらは日本現代文学作家6名の作品を1つずつ取り上げて読解していこうという講義で、ワークショップがなかなか刺激的でした。皆着目する点が違うので、「おーそういう読み方があるんだ」と勉強しきり。逆に言うと、読み込もうと思うと本当にどこまでもとんでもなく深読みする人がいるという恐ろしい現実を知ってしまいました……。レポート試験は綿矢りささんの『声のない誰か』を取り上げて仕上げ、無事84点。

21:文芸論Ⅱー3
 こちらは社会批評の基礎を学ぶ科目で、詩学に引き続き多和田葉子さんの『エクソフォニー』を取り上げて「母語」という言葉の持つ社会的意味合いとその言葉そのものへの批評をまとめレポートにしました。全科目中唯一「郵送提出」で、うっかり郵送であることを失念していて期日ギリギリでの提出でした。危ない危ない。単位習得試験では再び北村紗枝さんの『批評の教室 ーチョウのように読み、ハチのように書く』を参照しつつ、ワイドショーとSNSをテーマに批評的態度がいかに求められるのかをまとめました。SNSは情報で取り上げた内容をアレンジした感じですね。着地82点。

22:文芸演習Ⅰー1
 こちらはエッセイを書いてみる科目でした。エッセイ苦手なんだよおと愚痴りながらもなんとかまとめてみたものの、やはり文章の硬さだったりが拭えず評点イマイチ。エッセイが苦手というより、私自身の私生活に自分で興味がなさすぎて、自分の生活をテーマにされると弱さ覿面というやつかもしれません。書き慣れと関心持つって大事ですね……。単位習得試験では自身の文章に対する反省点を振り返り課題の洗い出しをして多少挽回。着地74点。

■一年目の総括
 さて、入学して一年が終わろうとしています。文学部でもなければ芸術学部でもなく、そもそも一回目の大学の時にはろくすっぽ授業にも出ないし単位を落としまくっていたことを考えると、上記の通りでだいたい平均すれば80点強は取れているので、かなり頑張ったのでは?と自画自賛。
 今年はできるだけ幅広に興味の赴くまま受講科目を決めていった感じではあるのですが、見て分かる通り、その気になれば結構幅広いいろいろな分野の少なくとも入門には手が出せます。私は文芸なので、物を読んだり書いたり分析したりという科目を中心にはしていますが、もちろん芸術大学なので造形やデッサンから建築や伝統芸術まで芸術系も揃っています。
 ちなみに京都芸術大学通信教育課、謳い文句は年間学費17万円から学べますということではあるのですが、指定テキストや参考文献の購入、各種論文をプリントで読みたいとなるとプリントにも相応に費用がかかるので、肌感覚としては1.5倍から2倍くらいは心構えしておくと良い気がします。あと一定スクーリングもありますので、東京・京都以外だとスクーリングの時は旅費などはかかりますね。とはいえ、「楽しい」です(ここが重要)。

 まだ4月入学申し込み行けると思いますので(たぶん)、皆様もこの機会に興味があったら入学いかがでしょうか?同学の士は常に募集中です!

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