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映画「ロボットドリームズ」を観たはなし
年末ごろカズオイシグロ著「クララとおひさま」を読んでいて同じく友だちロボットを扱った「ロボットドリームズ」を観てみる事にしました。
友だち作るの下手なひと
クララは親に買い与えられて家にやって来るが、本作では孤独をつのらせた主人公Dogが通販で購入している。物語が進むとなぜ彼に友だちがいないか徐々に浮かび上がってくる。基本的に受け身で、自分から挨拶する事もない。対してロボの方は機能として備わっているのか、道ゆく誰にでも挨拶したまに怪しげな人にも声をかけてしまうのだが常に幸せムード。
中盤でロボ以外の友人が出来かけるのだが、結局去っていく。理由は簡単で相手から与えてもらうばかりだから。色んなところに連れていって貰い教えてもらい楽しませてもらうが、彼から与えることはほぼない。大人しいとか内向的なことが悪い訳ではなく、せめて挨拶して人と共有する時間の半分とか少しだけでも"自分が"楽しもうとか"一緒に"充実した時間にしようというわずかな主体性があるといい様に思う。
リアルな人生では時期や状況により1人の中でダックや老人の様になったり時にドッグやロボの様であったりと様々な役割を担うのが現実的で自然だろうし、逆に1つの役割りばかりしているとドッグのように未熟なままバランスを欠いていくのだろうと思う。
ロボのモデル
ロボはやや古めかしく最新のAIのイメージからはかけ離れた見た目で、一見するとオズの魔法使いのブリキ男を彷彿とさせる。というかオマージュなのではと勝手に解釈している。
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ブリキ男
子どもの頃好きでくり返し見たが、登場人物たちのメイクで作り込まれた風貌がなんだかおそろしかった。オズのブリキ男は「自分の中は空っぽだからとにかくハート(心)が欲しいんだ」
としきりに訴えていたし、錆びた身体にオイルをさす描写も共通する。西洋のもつ友だちロボットのイメージはこのTin manなのかもしれない。
(ミュージカルWiz のTin manはNe-Yo氏)
未熟かつ孤独なひとは無自覚に相手をつらい状況に置いてしまう事がある。映画ではロボットだから心は壊れず体も直す事が出来ている。不本意な状況に誰かを長いあいだ閉じこめるというのは相手が人間ならとても酷である。映画のような事にはならないにしても今のところはじっさいの人間を相手にこうした失敗を繰り返す以外、人間関係を学ぶ術はないのでとくに若者に観てみてほしい。
この映画をみて、若かりし頃にはよくある事だと一蹴するのは簡単だけど、大人こそ真摯な気持ちで見るといいと思う。後半に登場する人物はDogとは対になる成熟した存在として描かれるが、もし自分が同じ状況になったらDogのような対応をせず相手をモノ扱いもせずに居られるのか、逆に後半に現れた老人のようにナイスな振る舞いができるかということを自身に問いかけてみると良いかもしれません。
老人はロボを救うけど助け方もあくまで自分の楽しみや喜びのための言動が結果的に相手を救うことに繋がった点もすばらしかったです👍🏻