70mmで観る『眠れる森の美女』
『眠れる森の美女』がデジタルリマスターされてからとうに干支一周しており、時の流れに戦慄するなど。
Disney+でも見られるこのリマスターに関して知らない若い世代も増えたと思うので、超ざっくりとした豆知識をここに記そうと思う。
ディズニー・クラシックスBlu-ray化の記念すべき1本目は『白雪姫』でも『ファンタジア』でもなく『眠れる森』だった。
もちろん名作ではあるが、なぜこのチョイスなのか。それには明確な理由がある。『眠れる森』はD映画の長い歴史のなかで唯一、70mmフィルムで製作されたアニメなのだ。
70mmフィルムってなんぞや、という人はまず、D+で同年代作品『101わんちゃん』や『ピーター・パン』と『眠れる森』を比較してみてほしい。1発でわかる"違い"がある。「画面のアスペクト比」である。70mmで製作された『眠れる森』はとにかく横に長く、その比率は2.20:1。
通常、映画は35mmフィルムで撮影されることが多かったのを考えれば話は簡単ですね、単純に倍でかいフィルムで作られるのだから、画質はもちろんのこと映り込む情報量が桁違いなんである(ひとつ前の作品『わんわん物語』もめちゃ近いアスペクト比だがこっちは70mmではなくシネマスコープ)。
『眠れる森』が製作された1950年代、世はテレビジョンの台頭が始まっていた。アメリカでは既にカラー放送がスタート(カラーテレビの普及はもうちょい後だが)、映画会社はテレビを脅威と捉え、その対抗として超巨大スクリーンを売りに勝負した。
『オクラホマ!』や『八十日間世界一周』、超有名タイトル『2001年宇宙の旅』(『眠れる森』より少し後ろの公開だが)など、この頃の大作映画は70mm映画で製作されるのがひとつのトレンドだった。『眠れる森』もその時代の流れにのった作品と言える。
しかし日本において『眠りの森』は、そもそも70mmでの上映自体がされなかった。フィルムの左右をカットした状態で上映したんである。その後のソフト化においても同様で、70mmの完全版として見る機会自体が長らく存在しなかった(本国で発売されたソフトもそうだった、らしい)。
時は流れ2000年代、デジタルリマスターの技術が発達し、往年の名作を修復して再販売する潮流が生まれた(SWとかね)。
ディズニーは公開当時のオリジナルネガや録音のマスターテープも残していたので(これもマジで偉いしすごい)、『眠れる森』の完全復活といえるリマスターが可能となったんである。
本来の70mmフィルムの状態での『眠れる森』を日本で見られる機械は、その2008年発売のBlu-rayがガチで史上初のことだった。「幼少期に見たもののおよそ倍のアスペクト比で見られる!?」と、その衝撃はディズニーファンのみならず映画オタクたちの間にも届くほどだったのだ。
いま私たちがD+で本来の姿の『眠れる森』を観られているのは、先人たちの技術の賜物なんだなあ〜〜。大変ありがたいことである。
以上、オタク語りはこれで終わり。
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