悪縁~ちょっとしたはずみのものがたり~続〔R18有料作〕



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 その日から人知れず、俺は春さんの『飼い主』になった。
 恋人でも愛人でもない、『飼い主』。
 春さんのOFFの日は、ほとんど全部俺のものとなり、俺の下で、あるいは上で春さんは、繰り返し繰り返し、僕の性技に喘ぎ続ける立場となっていた。
 今も春さんは俺の腕の中で、唇を貪られながら、僕にそれを揉みしだかれている。
 セックスに目覚めたばかりの女の子みたい。
 溺れながら拒んでる。
「そんなんしたらあかん、あかんて…」
「そんなんて、俺何してます?」
「俺の…を…」
「俺の、何?」
「俺…の…、ああっ、」
「可愛いなあ春さん。俺もうすっかりグダグダっすよ」
 とびきり淫らなキスを浴びせかける。
「アホ…俺は…男やぞ」
「俺もっす。でも惹かれちゃったら、後はおんなじっすよ」
 俺はかれの後ろに指を這わせ、可愛い蕾を探り当てる。
「んッ」
 ビクンと春さんが身を固くする。
 そこが締まって指先一つ入らない。
「力、抜いて」
 春さんは懸命に首を否と振るが、こういうときの俺は容赦がない。
 無理に、こじて、ついに指一本這い込ませることに成功する。
「ああっ」
「いい声だ。そそる」
「やめっ、ああっ」
「たまンねえ」
 指は既に三本入っている。
 かき回すように動かすと、春さんはもがき、俺はますますかれに魅了されてゆく。 
「わかります? 俺通常の倍量勃起してますよ。かなりな美女、前にしたって、そうそうはならないサイズっす。はちきれそうっすよ!」
 横臥に置いて押し当てる。
「よせ、無理、ああっ、」
 全然無理じゃなく、俺はかれのなかに収まってしまった。
「淫らな躰だなあ。俺のこと、完全に呑み込んでますよ」
「ううっ」
「動きますよ」
「ああっ」
 松葉崩しみたいな形で俺に貫かれている春さんは、それをビンビンに怒張させ、激痛と快感のせめぎ合いに耐えている。
「俺の名前、呼んでください」
「名前…」
「わかってるでしょ。呼んでください」
「ゆう‥」
「ちゃんと」
「夕夜…」
 ああっ。
 俺の背筋がゾクゾクッとする。
「ご褒美です」
 俺は春さんの肩口を噛む。
 血があふれるほど強く。
「あかんっ、それあか、あ、あああああっ」
 不意に春さんが硬直し、ビクンビクン! と痙攣した。
 やっぱり肩か。
 図星だ。
 俺たちは完全に一つとなって、獣じみて媾合する。
 ともに昇りつめようとしたまさにその時、春さんの携帯の着信音が鳴り渡った。
 ディスプレイに出た名はあの女のもので、留守電に切り替わると声も出た。
「あたしー。暇かなーと思ってかけたけど、いないのぉ?」
 めいっぱい暢気な声音に、何だかめちゃめちゃイラッとする。
 春さんは黙っている。
「出ますか?」
 やっぱり黙っている。
「出ていいっすよ」
と手渡すと、春さんは受け取ろうとしなかった。
「ええわこのままで。捨てるわこんな女」
「決断早いっすねえ。ご褒美っす」
 まだ血の固まってない同じ肩を噛む。
「そんなん、褒美、ちゃうやろ」
 抗議する声が既にうわずっている。
「またァ。春さん噛まれるの好きじゃないですか」
 あくまで肩を噛み、犬歯を使って本当に傷をつけた。
「あああああっ」
 再びの長い吐息。春さんのエレクトが俺のベッドを濡らす。
「俺もイきたくなってきた。春さん、なか、ああっ!」
 想定より早く波がきて、俺はなかに放ってしまった。
「すみませ…」
『ん』と言う前に言葉が途切れたのは、春さんのなかから膨大な量の白濁が流れ出てきたからだった。
「すげえ出ちゃいました…」
「おまえケダモノかよ。何回すりゃあ気がすむんだよ」
 俺を押しのけてシャワーへ行こうとする春さんの、ベタベタの股間見てるだけで俺はまた前が張ってくるのを感じる。
 バスローブを拾おうと、軽く振り向きかけた春さんが、俺の目つきに気付いた…
「パス! 今度こそパス!」
 逃げる春さんを追ってバスルームへ行き、もう一回だけとねだって抱く。
 そして気づく。
 春さん、あした生だ…

 翌日。
 テレビの中の春さんは、片方の肩に過剰に飾りのついた服を着ていた。
 目の下の隈は、ドーランでどうにか隠してる。
 笑い出しそうになるのをこらえているうちに、俺はまた前に血が集まってくるのを感じる。
 今夜も絶対会わなくちゃ。
 絶対だ。

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