私本義経 たずさ
女の名は、たずさといった。
大柄で、目は青で、見慣れぬ装束をまとっていたが、よく見ると、それは数枚の装束を膝上で断ち切ってしまい、動きやすくしたものにほかならなかった。
何者だ。
問うと、女は大きなかごを示した。
茸採り。
たまには生きた茸も採る。
生きた茸。
段脆の、股間のものの堅さが蘇り、吐き気を催す。
あんたが初めて喰われた日も見てた。
災難だったね。
かっとなった。
手近な枝を拾って払う。
だが枝はかの女に当たらなかった。
女が空に飛んだからである。
からからと笑い上方の枝におる女の白い脚が夜陰にほの白く浮かんでおる。
しばしそこで笑っていた女は、ふっと枝を離れた。
蝙蝠のように舞って降り来た。
間抜けのように見上げていた私の上に。
押し倒されて地面張り付けのような形。
顔の真ん前に顔があった。
唇。
紅い唇。
美形じゃな。
女寄りじゃ。
口吸いされ
跨がられた。
後ろを奪われるのは苦痛のみだが、男になるためのそれは、ただもうほの温かいのみだ。
穴の感触を充分味わう前に、私は放っていた。
それからは夜毎逢瀬した。
大柄なたずさはふくよかで、豊満で、奔放で、年若い私はただもう翻弄され続けた。
大人なりたての私はしばらく女体の神秘に夢中になったが、半月もすると慣れてきて、それ以外のことにも気が行くようになった。
たずさはなぜ目が青い。
肌も抜けるように白い。
白すぎる。
ふくよかな態なのに身が軽い。
軽業芸人か?
紅い唇でたずさは笑う。
出自は知らぬ。
身の軽さは生まれつきと、ててのゆえかもしれぬ。
ててご?
陰陽師じゃ。
鬼一法眼(きいちほうげん)という。
それでも地球は回っている