激しい雨風。
小さい台風って聞いたのに、そこここで災害。
避難所があちこち建ちまくってる。
こういうとき、木目町住人であることが申し訳なくなる。
海も山も極端に近くなく、地震も滅多にない。
プレート境界も真下でない。
守られてる?
そう。
守られてるのだ。
でもって激しい風雨。
窓がガタガタいっている。
隙間ないはずの最新サッシ窓。
結露も防ぐ構造。
でもいま窓の外には黒塚がいて、長い髪を風に嬲らせていた。
開けて。
開けて。
入れて。
何で。
何でこんな時間。
何でうち。
何で、何で黒塚・・・
気づくと窓を開けていた。
そしてもっと気づくと、僕のいる場所は、僕の家ではなくなっていた。
風雨はない。
どころか、風景もない異様な空間。
グラディエーションのグレーがただただうねり、のたくっている空間。
僕と黒塚だけがいる。
黒塚の髪はのたうっている。
私、あなたに恨みない。
でも私、こうしなきゃ。
髪が伸び、僕の手足に絡んでくる。
黒塚は泣いている。
でも僕は絡め取られ、首に巻き付いたその豊かな黒髪に締め上げられ、息が
弥栄!!
空間を引き破るように現れたのは母だった。
空間を引きちぎってきた母だから、黒塚の髪くらい何でもないはずだが、引っ張ったくらいでは外せず、かえって母が僕みたいに巻き取られそうになっている。
南無三!
母は牙~のように発達した犬歯~をつかい、黒塚の髪を噛み切っていく。
いやあああ!
あたしの髪!!
叫んで黒塚が後ずさる。
髪は逃げるように黒塚のところまで引いた。
お・・・覚えてなさい!
半ば男のような声で言い、黒塚は消えた。
黒塚が消えると同時にグレーの空間も消え、気づいた場所は自分の部屋だった。
いきなり母にはたかれた。
黒塚に窓開けてどうすんの!
痛い。
マジでおふくろ怒ってる。
怒るわよ!
おばあちゃまが夢見してくれなかったら私も気づけなかった。
反省なさい!
やっぱめっちゃ怒ってる。