メール〔うわの空さんにインスパイアされました〕
お母さんですが、これは何?
お母さんショックです。
怒らないから事情話して。
待ってるから。
気味悪かったわ。
だってお母さん、死んで十六年になるのに。
父が電話の向こうで黙った。
そして、口を切った。
実は…
長く電車に乗った。
志満子おばさんのところへ。
まさに十六年ぶりの再会になる。
母は死んでなかった。
離婚だったのだ。
父は私や兄を哀れんで、死んだと言っていたのだ。
おかしいとは思ってた。
仏壇も位牌も遺影もない。
在りし日の写真もない。
でも父の言うことを鵜呑みにしていた。
私はそういう女だった。
よくきたね。
ゆっくり話しておいで。
十六年分年をとった志満子おばさんが案内してくれたのは、母の墓だった。
あんたらと別れてすぐ逝ったんだ。
もう会えないって泣き暮らしてた。
よほど悲しかったんだね…
混乱している。
死んだと思っていた母は生きていたけど、それも父が知らなかっただけで、実のところは死んでいた。
ではあのメールは何なのだ。
志満子おばさんが、気の毒そうに言う。
詐欺メールの一種らしいよ。
棚田ミカリからとか、サボキの葭仲からメールきて、返信すると情報抜かれるってあれ。
最近は、お母さんだよってパターンできたって聞いたけど、まさにそれだったんだね。
違う。
きっとこれ、本物だ。
お母さん、知ってるんだ。
あたしがヒデを殺したこと。
だっていつも仕事だ仕事だって、
結局あの女と会ってたのよ?
許せるわけないじゃない。
チリン、と小さな音。
メール着信音だ。
見ると、またお母さんだ。
同じ文面かと思ったら違った。
お母さんです。
みんなわかってます。
今なら間に合う。
私に全部話してちょうだい。
メールアドレスが書かれてる。
私は返信を打ち始める。
だってヒデが私を騙したから…
※ あくまでも、絶対に、フィクションです
それでも地球は回っている