涼し鬼

風の神さァさぼり魔だ

と歌いつつジロタが行ったのを、神さァ聞いてやんしただ
たしかにひと夏七度より、田や畑吹いちゃあおらんけど、こどもにさぼりと言われたないやね
果たして神さァ怒った怒った
怒って怒って風出した
びゅうびゅうびゅうびゅうびゅうびゅうびゅう
子らは涼くて喜んどるが、ひゃくしょは困る
実りに障る
おでこ合わして寄り合って、決めたはお定まり、ひとみごくう(人身御供)よ

小町娘差し出して謝んべえ
いまいちばんならななほじゃろ
実りの名じゃし飛び抜けとる・・・

あわれななほはくるくる巻かれ、神さの谷に落とされた
七つの岩を七回落とし、ななほは七度潰れ餅
風は四日と半刻経って、ぽよぽよよんと止んだけど、小町娘は戻りゃせぬ


ジロタよ神さァからかうときは、聞かれんようにそっとせい
聞かれんようにそっとじゃぞ




#30年前の四百字小説
#テーマは・涼しい・でした

それでも地球は回っている