永住の地〔二次創作相棒〕
その日が来た。
背広とコートを取って、あの小さい部屋を出る。
亀山君。
神戸君。
カイト君。
冠城君。
最近だけでもこんなにも相棒がいた。
行くのかと、聞いてくれる人はいない。
角田課長は既に定年退職している。
大木君は病に倒れ、小松君は他部署へ移った。
廊下へ出る。
捜査一課の伊丹君、芹沢君、鑑識の益子氏が立っている。
見送りに、来てくれたのか?
俺もいますよ。
冠城君が寄ってきた。
最後のお供を。
頼んではいませんがね?
そう言いながらもちょっとだけ、頬が緩んだ気がした。
玄関ホール。
中園参事官。
内村さんはさすがに来ませんね。
あ、社さん。
飾り柱の影とは粋ですね。
そばに神戸さん。
大河内さんも。
青木のやろーは、ああいた、吹き抜けから見下ろしてやがる。
ああ入り口から泣きながら入ってくるのは陣川さんで。
回転扉の外に、かっこつけて立ってるのが八木さん。
ヒロコママ。
店いいのか?
こんなふうに、見送られるものなんですかねえ。
しみじみと、杉下さんが述懐する。
あんなところに妙春尼もいますよ。
瀬戸内さんは……車の中か。
あなたの敵はここには来ないで、贅沢なオフィスで祝杯でも上げてるんでしょうね。
杉下さんはいつものように澄まして歩みを進めてく。
僕の敵は、大物ばかりとは、限りませんよ?
囁いて、表へ出る。
入れ替わりに、中へ入りかけた少年が、どんと杉下さんに当たった。
軽く。
杉下さんが崩れ落ちてゆく。
同心円的に広がる血溜まり。
彼を取り巻く全員が駆け寄る。
杉下さん!!
俺は少年を顧みる。
君はなぜ!!
サルウィンの、
乾いた大地を歩く男がふっと振り返った。
が。
再び歩き始めた。
家には妻が一人待つ。
ああ、三浦さん。
わざわざこちらに。
米沢さんは現場にいたんですか?
いやそれが私、よんどころない事情で警察学校抜けれませんで…。
でも現場にいたら、益子と一緒に実況検分でしたでしょう。
虫が知らせたというか…
いやあ、行かなくて正解でした。
退職しただけでなく、身罷ってしまわれるとはなあ。
あの人は、絶対死なないと…勝手に思ってました。
私もです。
いや。
まだ実感が…
犯人は非行歴のない、ごくふつうの少年だったようですね。
ええ。
有名な刑事さんが退職になると聞いたので、殺して有名になろうって思っただけって…
杉下さんも浮かばれませんよ。
もやの中を歩く。
ここはどこだろう。
ほの明るいだけで、あたりにはなに一つ確たるものがない。
とりあえず歩数だけでも数える。
12、13、14、15、16…
歩数数えるなんて、いかにもおまえらしいね。
懐かしい声と人影。
思わず呼びかけてしまう。
官房長。
私は今は無役ですよ。
もう長いこと無役。
こっちにはいろんな人がいるよ。
閣下もいるし、浅倉君もね。
人影が差し、浅倉禄郎が現れる。
お久しぶりです。
だんだんわかってくる。
官房長も閣下も浅倉君もいる。
ということは、
つまりここは