悪縁~ちょっとしたはずみのものがたり~続の続。春サイド〔R18有料作〕
Fランドって不思議だ。
早いジェットコースターが多いせいか、若い客が多いのに、ちょっと雨が降ると、客はてきめんに減少する。
室内もののアトラクションもけっこうあるので、帰らずに、雨宿りしてる客もいるにはいるのだが、大概の客が雨には弱い。
だから俺たちが、雨天Fランドデートを計画したのは、いわば当然の成り行きだった。
一応ミュージシャンどうしだから、声もかけられる。
サインもねだられる。
が、街中ほどではなく、俺たちはけっこう自由にジェットコースターやお化け屋敷を楽しむことができた。
人気の大病院迷路で、俺は夕夜の意外な一面を目にした。
入口からすでに渋ってはいたのだが、十メートル程度行ったところで、やつはついに完全に動かなくなってしまったのだ。
やばいっす。
足が一歩も前へ出ないっす。
春さん。
俺のことはもう置いてっちゃってください。
「何言うねん! 大事なおまえを置いていけるか!」
しゃがみ込んでしまった夕夜に、ちょっとアクションヒーロー風に言うと、
「春さあんっ」
泣きの入った声で縋りついてきた夕夜が可愛くて、俺はやつのおとがいを持ち上げ、かぶりつくようなキスをしてみた。
果たして夕夜は目を丸くした。
「いいんスか。こんなとこで」
「いいも悪いも、こんなとこにずっとおるわけにはいかんやん」
「でもここで、春さんにずっと構ってもらってるのもいいかも」
「あほ抜かせ。行くで」
俺が歩き出すと、タ夜は子犬のようにはね起き、必死で俺についてきた。
脱出には、結局四十一分かかった。
その後も、夕夜には、次々笑かしてもらった。
コーヒーカップを回しすぎて、自滅してしまったり、鉄骨△長の最上部で叫んだり、みたいな、人目を牽く行為には辟易したが、そのこどもじみた楽しみかたには大いに笑かされた。
楽しんでもいいのだと、改めて教わってる気分だ。
俺は意外とストイックやったんな…
閉園時間が近づく中、夕夜は不意に観覧車に乗りたいと言い出した。
「ここの観覧車って、普通のと透明のがあるんスよ」
「どっち乗りたいん、聞くの野暮やろな。夕夜ったら絶対こっちや」
「よくおわかりで」
タ夜に手を引かれるままに、透明観覧車に乗り込んだ俺はその中で、とんでもない扱いを受ける羽目になるとまだ、気づいていなかった。
個室内は、向かい合わせの四人掛け席ではなく、アベックが入口方向を向いて並んで座る、ラブシート形式だった。
透明観覧車の名の通り、天井から床板まで、隅から隅まで透明で、もし晴れた昼間だったら遠く静岡あたりまで見渡せただろう。
雨の今日は強化アクリルが曇って、あまり遠くまでは見渡せない。
だからだろう。
地上を充分離れた途端、夕夜はいきなり、俺を膝に抱き取った。
入口方向に体を開く形で、二重に重なった俺たちは、外からはいったいどう見えるのだろう。
正直俺は怯えたが、夕夜は構わず俺を攻め始めた。
服を剥がせるのももどかしい感じで、俺の肩口にかぶりつく。
俺の一番の弱点である片側の肩。
頭の芯がぼーっとなる。
「あかんて…」
本気で拒もうと振り向いた俺の唇を、かれは自分の唇で塞ぐ。
舌先で俺の唇を割り、その舌が俺の口腔内に這い込むと、すでに肩を噛まれてある俺のテンションは最大級となり、こちらからもキスを仕掛けてしまったが、夕夜の手が俺の、ピッチリした革のパンツの前立にかかると、さすがに俺は慌てた。
「あかん、それだけはあか…」
拒む言葉をタ夜のキスが吸い取る。
観覧車はもうすぐ天辺だ。
タ夜は俺に、正面のアクリルに手をつかせ、立たせると、細パンと下着を一気に下ろし、俺にぐいっと挿入した。
「ああっ」
俺の吐息が入口のアクリルを曇らせる。
「めっちゃいい…春さん…あんたやっぱサイコーだ」
「あほ。見られる、人に見られる…」
「見せましょうよ。俺宣言しますよ。春さん俺のだって。嫌ですか? 嫌ですか?」
「あああああっ」
答えられなかったが、断ることも出来なかった。
俺たちは共にイき、慌てて着衣を直し、飛び散った自濁を可能な限り(おいっ)片づけて、何事もなかったように観覧車を降りた。
係員が舌打ちしたように感じたけど、夕夜と俺はあくまで平静を装って立ち去り、係員の視野から出た途端、悪ガキみたく、わって走って逃げた。
その晩は、Fランドホテルに泊まって続きをやった。
やってもやっても何だか止まらなかった。
俺はだんだん気づいてる。
どんどん夕夜を好きになってる。
多分、夕夜も、俺を…
でも、だからってどうなるのか。
俺たちに先はない。
多分今しか、ない…
それでも地球は回っている