二次創作なので無断移動持ち出し等絶対厳禁⑥
美童⑤〔二次創作・愛の温度〕
いったん軌道に乗った店が失速することはあまりない。
けれどgood soupはやらかした。
食物アレルギーのある顧客にアレルゲンを提供してしまったのだ。
ごくごく初歩的なミスだったが、初歩だろうと何だろうと、お客様はもう少しで命を落とされるところだった。
ジョンソンは美貌のシェフとして、テレビや雑誌で取り上げられ始めたところだったから、事故も大きく取り上げられてしまい、店はいきなり閑古鳥が鳴くようになってしまった。
現金で返済ができなくなったら再びベッドをともにするのだろうか?
などと漠然と考えてはいたが、さすがにジョンソンは恥を知っていた。
懸命に金策している気配など、隠していても伝わってくる。
だが俺がちょっと目を離した隙に、彼はもっとうっかりしたことをしでかしてくれたのだった。
エルリック・Tは素晴らしい経営コンサルタントだ。
シェフとしての腕も一流。
彼が手助けした店は必ずV字回復する。
するが。
その代償は常に…
エルリックさんに勧められて飲んだカクテルは癖のある味だった。
強かったのかひどい眩暈がする。
ソファで身を起こしていることすらままならなくなった僕を、エルリックさんは半ば抱き起こすようにしている。
調子が良くないなら、ベッド貸すよ?
ジョンウさんほどじゃないけど、実業家然とした美丈夫。
イケメンだけど、どこか酷薄な感じもする…
エルリックさんは僕の顎に人差し指をかけている。
その形だと自動的におや指が跳ね上がる。
そのおや指で、彼は僕の唇を撫でた。
柔らかい唇だ。
そそる。
唇を、奪われた…
店のことは心配いらない。
僕がついて回復しなかった店はないからね。
だから…
だから…何ですか…
頭が回らない。
僕…店…good…soup…
のしかかられそうになってるところへ、誰かが…飛び込んできた…
ウォン…ジュン…?
一日半寝てた。
体が目覚めを全く受け付けなかったのだ。
やっと目が覚めたら、そこは自宅で、うちのスー・シェフのウォンジュンが、心配そうに僕を覗き込んでた。
ウォンジュン…
馬鹿やろう!
いきなり怒鳴られた。
あんなやつに身を任せて守ったgood soupなんかgood soupじゃねえ!
ウォンジュン…
誰が…おまえに…居場所を…
ジョンウさんに決まってるだろ!
ごめんな。
俺ああいうやつとかのこと疎くて!
知ってたら絶対行かせなかった!!
泣いて抱き寄せてくれるウォンジュンに、僕は言えなかった。
この身がもうとうに汚れてるのだと。
ジョンウさんが心配できる立場である限り、僕は自由になれないのだ。
僕はそのことに気づいてしまった…