レインズ・デイズ・アフター⑧依頼


 金曜の夜、裕太が帰らないことが多くなった。
 夜遊びではない。
 朝方、高級外車に送られて戻ってくる。
 こういう土曜は、一緒にコーヒー飲めない。
 裕太、出てこないから。
 そういう土曜はほっといてあげて、日曜朝に食堂で待つ。
 それでさえ出てこないことあるけど、僕は相棒だ。
 黙って待つ。
 レインになって数年。
 新しいグループも出てきて、僕らは僕らなりに立場も出来てきた。
 少年Tたちみたいに、エルダーたちの目を盗んで、軽口を叩いてくれる連中も出てきたし、実際のとこ、ソニックやKYOTOは、結構甘えさせてくれさえしてる。
 ただ、基本的には依然として、俺たちは孤立してる。
 みんなエルダーが怖いのだ。
 そしてエルダーはみな感じてる。
 逆立ちしても裕太には勝てない。
 だから裕太は憎まれるのだ。



 そんなある日、俺はマムンに呼ばれた。
 有名ホテルの最上階で、ある大物と会うんだけど、ユー、立ち会ってくれない?

 立ち会う?
 ただ居ればいいのだろうか?

 うん。
 居てくれればいいの。
 よかったー!
 すっぽかしはダメよー??

 妙にうきうきとマムンの声。
 まあ、お世話になってるんだしね。
 俺は軽い気持ちで裕太にラインした。

 きょうピンの仕事あり。
 明日コーヒーする?

 レスはすぐきた。

 明後日がいい

 続けてもう一行来た。

 楽しみにしてる

 続けてもう一行は珍しい。
 疲れてるなと思った。
 胸が痛かった。

それでも地球は回っている